秘密安心往生要集・・
(三、弘法大師即身成仏の事)。昔高祖大師嵯峨の天皇の勅を蒙って清涼殿に於て諸宗の碩徳を集めて顕密二教の差別浅深成仏の遅速勝劣を論議して十住心の次第を説き、六大無碍、三密加持、唯真言法中即身成仏の義を述べ玉へば諸宗の高僧皆閉口して言なし。時には天皇詔りし玉はく。朕密教の最尊最上なることを深く信ずといへども、未だ即身成仏の現証を見ずと。時に大師即ち南方に向かひて覚勝印を結び六大平等の観に住し玉へば頂上に五佛の宝冠出現して金色の大日如来と成り玉ひ、公卿百官諸宗の高僧も皆沙庭に下りて五体を地に投げて礼拝し悉く大師の弟子となり玉ひけり。是れ真言宗即身成仏の証拠なり。尊ひかなありがたいかな、誰人か信ぜざらん。故に九百年来高野山は生身佛の浄土也と、諸人信仰して参詣するなり。
(孔雀経音義には『帰唐之時。欲興眞言宗之間。諸宗皆併集朝庭。共疑即身成佛義。仍大師結智拳印。向於南方。面門俄開。成金色毘盧舍那。放眉間白豪相光。爰一人諸臣。七宗衆徒。驚下
於地。皆悉禮拜。』とあります。)