秘密安心往生要集・・
(四、下品安心の事)。次に下品の安心を明かさば、五戒八戒十善戒二百五十戒等を堅固に護持すれば永く三悪趣を離れて常に人間天上に生じて勝快楽を受け、三世の千仏に逢奉り聞法悟道するなり。若し又持戒の功徳を浄土に回向すれば即ち中品の安心也。若し持戒なりがたき人は正直慈悲の心に住して大乗経典を読誦し真言陀羅尼を念珠すれば永く三悪道を離れて人天に生ず。法華経には「是を持戒行頭陀者と名く。若し但し書写するも當に忉利天に生ず。」(妙法蓮華経 見宝塔品第十一「此の経は持ち難し 若し暫くも持つ者は我即ち歓喜す 諸仏も亦然なり。是の如きの人は 諸仏の歎めたもう所なり 是れ則ち勇猛なり 是れ則ち精進なり。是れを戒を持ち 頭陀を行ずる者と名く。則ち為れ疾く 無上の仏道を得たり。 能く来世に於て 此の経を読み持たんは、是れ真の仏子 淳善の地に住するなり。仏の滅度の後に 能く其の義を解せんは 是れ諸の天人 世間の眼なり 恐畏の世に於て 能く須臾も説かんは一切の天人 皆供養すべし」)と説き、大佛頂経には「持斎せざる者も、是れ持斎するなり。戒を持たざる者も戒を持つと名く。僧の二百五十戒を破ると、比丘尼の八波羅蜜を犯せる者も佛頂大明王を聞き念ずれば還りて声聞戒を具足することを得べし。若し人、怨家の衆を殺害し常に十悪を行じて罪無辺ならんに、纔に灌頂不思議なるを聞かば、恒沙の罪障皆消滅せん。現に阿鼻大地獄鑊湯鑪炭黒縄を受くべき人、若し菩提片善の心を発して、一たび聞かば永く天道に生まれることを得ん」と。菩提心論には「常に人天に在りて勝快楽を受く」(「金剛頂瑜伽中發阿耨多羅三藐三菩提心論」「今志求阿耨多羅三藐三菩提不求餘果。誓心決定故。魔宮震動。十方諸佛皆悉證知。常在人天。受勝快樂」)と説き玉へり。光明真言・地蔵・観音・弥勒・文殊の真言等も例して知ぬべし。是六波羅蜜経の所説なり。中にも六字大明呪(唵麼抳鉢訥銘吽)・准胝仏母(オン・シャレイ・シュレイ・ジュンテイ・ソワカ)の真言は妻子を帯し、酒色五辛を食する人も至心に念誦すれば悉地を成就して浄土に往生すと説き玉へり。此の時は下品の安心より直に中品の悉地を成就するなり。若し又持戒堅固にして菩提心勇猛なる人、真言を持呪観念するは上品の安心の行なり。天竺の清弁論士の阿修羅窟に入って寿命を延べて弥勒の出世を待つと云も下品の悉地成就の人なり。
(四、下品安心の事)。次に下品の安心を明かさば、五戒八戒十善戒二百五十戒等を堅固に護持すれば永く三悪趣を離れて常に人間天上に生じて勝快楽を受け、三世の千仏に逢奉り聞法悟道するなり。若し又持戒の功徳を浄土に回向すれば即ち中品の安心也。若し持戒なりがたき人は正直慈悲の心に住して大乗経典を読誦し真言陀羅尼を念珠すれば永く三悪道を離れて人天に生ず。法華経には「是を持戒行頭陀者と名く。若し但し書写するも當に忉利天に生ず。」(妙法蓮華経 見宝塔品第十一「此の経は持ち難し 若し暫くも持つ者は我即ち歓喜す 諸仏も亦然なり。是の如きの人は 諸仏の歎めたもう所なり 是れ則ち勇猛なり 是れ則ち精進なり。是れを戒を持ち 頭陀を行ずる者と名く。則ち為れ疾く 無上の仏道を得たり。 能く来世に於て 此の経を読み持たんは、是れ真の仏子 淳善の地に住するなり。仏の滅度の後に 能く其の義を解せんは 是れ諸の天人 世間の眼なり 恐畏の世に於て 能く須臾も説かんは一切の天人 皆供養すべし」)と説き、大佛頂経には「持斎せざる者も、是れ持斎するなり。戒を持たざる者も戒を持つと名く。僧の二百五十戒を破ると、比丘尼の八波羅蜜を犯せる者も佛頂大明王を聞き念ずれば還りて声聞戒を具足することを得べし。若し人、怨家の衆を殺害し常に十悪を行じて罪無辺ならんに、纔に灌頂不思議なるを聞かば、恒沙の罪障皆消滅せん。現に阿鼻大地獄鑊湯鑪炭黒縄を受くべき人、若し菩提片善の心を発して、一たび聞かば永く天道に生まれることを得ん」と。菩提心論には「常に人天に在りて勝快楽を受く」(「金剛頂瑜伽中發阿耨多羅三藐三菩提心論」「今志求阿耨多羅三藐三菩提不求餘果。誓心決定故。魔宮震動。十方諸佛皆悉證知。常在人天。受勝快樂」)と説き玉へり。光明真言・地蔵・観音・弥勒・文殊の真言等も例して知ぬべし。是六波羅蜜経の所説なり。中にも六字大明呪(唵麼抳鉢訥銘吽)・准胝仏母(オン・シャレイ・シュレイ・ジュンテイ・ソワカ)の真言は妻子を帯し、酒色五辛を食する人も至心に念誦すれば悉地を成就して浄土に往生すと説き玉へり。此の時は下品の安心より直に中品の悉地を成就するなり。若し又持戒堅固にして菩提心勇猛なる人、真言を持呪観念するは上品の安心の行なり。天竺の清弁論士の阿修羅窟に入って寿命を延べて弥勒の出世を待つと云も下品の悉地成就の人なり。