秘密安心往生要集・・7/42
(五、中品安心の事)
次に中品の安心を明かさば、極楽浄土往生の事は曇鸞・道綽・善導・法然の教え。天下に流布しぬれば予が唇吻を労するに及ばず。兜率の内院に往生するの安心を示さん。古人両方兜率勝劣の難易の争を作すこと少なからず。但し自宗の心は必ずしも勝劣なし。玄奘三蔵の曰く「天竺の道俗は多分兜率の内院を願ふ。同じく此世界の欲天の中に在る浄土なれば其の行成じ易し」と。兜率に外院あれば西方にも下品あり。胎生の者あり。懈慢國に生ずる者あり、実には行者の宿習の厚薄と信不勤情とに依るなり。高祖大師も内院に住し玉へば、真言宗たる者は皆兜率往生を願ふべし。是を即ち密厳浄土と名く。中品にして即ち上品に至る。大唐にては弥天の道安法師(東晋の僧.初期中国仏教の基礎を確立)、南嶽大師(六世紀北魏の僧。北斉の慧文について法華三昧を体得。のちに天台宗の祖智覬に法華・般若心経を講じる。晩年は南岳に赴。末法思想をはじめて唱え、阿弥陀と弥勒を信仰したとされる。)、天台大師(六世紀。天台宗の開祖。天台大師,智者大師ともいう。陳末隋初唯一の学匠といわれ,天台教学の大成者)南山大師(道宣。南山律宗の開祖)、玄奘三蔵、慈恩(唐、法相宗祖・基。師の玄奘とともに唯識学を確立)、章安(章安灌頂、七世紀、中国天台第四祖)等の五十四人。日本にては明恵上人、夢窓国師等の三十余人、皆兜率往生の人也。同じく不退の位に至る。如何ぞ西方を勝れたりとし、兜率を劣なりと云んや。金剛界西方無量寿の四親近、金剛法(観音)、金剛利(文殊)、金剛因(弥勒)、金剛語(龍樹)の四菩薩は即ち阿弥陀如来の四智也。故に内院に生ずるは極楽に往生すると義同じなり。古人兜率の内院は極楽浄土の東門なりと云へること亦宣ならずや。
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