福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

地蔵菩薩三国霊験記 2/14巻の5/16

2024-06-25 | 先祖供養

地蔵菩薩三国霊験記 2/14巻の5/16

五、蔵縁房活蘇の事

中古比叡山千手院に僧あり。蔵圓坊と名く。信州善光寺に下向して居住す。此の人天質武勇にして邪見放逸なり。三業の所作悪ならざるはなし。然るに無常遷流の習、俄かに病を受け程なく死去す。三日を経て忽ち生活す。心地常の如く本復して人に向ひて語て曰く、南無地蔵菩薩と數辺称念して、吾既に冥官の門に至る時、青衣の官人一巻の書を捧げて白馬に乗りて来る。眷従三人あり。皆青衣の人也。一人は縄を持ち、一人は鉾を持ち、一人は幡を提ぐ。彼の官人我を召し、大に忿瞋して曰く、汝一生の間全く一毛も作善なし、然るに依って大地獄に堕すべし云々。冥官縄を以て堅く縛へしめ行く事雷の如し。其の間の呵責更に暇無し。時に冥官急ぎ馬より下りて敬礼跪く。此に地蔵菩薩来現し玉ひて即ち一行の文を誦玉ふ。即ち毎日晨朝入諸定の偈也。冥官等各の手を合わせ皆地に跪て信受しける。時に地蔵菩薩琰王の使者に向て曰く、此の法師を吾に許すべし。時に使者等拝謝して白さく、兎角は薩埵の御心に任せ申すべしとあれば地蔵御手を伸べ早く古里に皈るべしとて蔵圓坊を官舎の門外に出し南方を指し早く本國に皈り此の文を誦して永く苦を出ることを願へとて御手を放ち給ふとき蔵圓夢覚めたる心地して活ぬ。尒より以後は前非を悔ひ大願を発して一向無上道をぞ慕ひける。角て塵世に交れば又邪念の起やせんと三宝に皈依する身は早く此の世を辞するこそ本意なるべしと、善光寺は三井寺の末寺なれば彼に遁れて行ひすまして三尊来迎を待ちしが終に願の如く正念に住して滅に入るとなん。未来の程頼もしく覚ふ。

 

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