「仏教の大意」(鈴木大拙、昭和21年、4月23,24日に両陛下に御進講した内容)から要点・・その1
第一講、大智、
・・・我らの生活で気の付かぬことがあります。それは我らの世界は一つではなくて二つの世界だという事であります。さうしてこの二つがそのままに一つだという事です。一つは感性と知性の世界(現代人があくせくする対象となっている世界)。今一つは霊性の世界です。・・宗教的立場からみますとこの霊性的世界ほど実在性を持ったものはないのです。それは感性的世界に比すべくもないのです。・・人生の日々は矛盾で充ちているものです。・・・一旦それに気つ゛きだすとその解決に悩むようになります。悩みながらあちらこちらと彷徨いつつ何とかしてそれから離脱しようとします。このはてのない努力が進められるにつれて今まで送ってきた生活なるものが如何に不真実で無意味であったかといふことが次第に分かってきます。此の段階まで来ると吾等は何かしら示次元を異にしたところに別の境界があるのではなかろうかと云ふ感じがするやうになります。さうして此の境界は今吾等が住んでいる世界よりも真実性に富んでゐて別途の価値を持っているもののやうに感ずるのです。さうして此の境界はいままで之より大事なものはないと一所懸命に取っておいたものを、悉く放棄することによってのみ発見せられるものだといふ風になってくるのです。即ちここで霊性的世界の髣髴が現れるのやうになるのです。このやうにして,霊性的世界を実際に把握するとき、・・実が非實になり、真が非真になる、橋は流れて水は流れず、花は紅ならず、柳は緑ならず、といふことになります。吾らはここで今まで非真実の夢幻性だと思ひ捨てたものが、畢竟するにまた必ずしもそうでなかったといふことになるのです。夢幻はその後ろに真実なるものを持っていたといふことに気つ゛くのです。
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