福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

往生兜率密記(無量壽院尊海)・・4

2021-03-04 | 諸経

往生兜率密記(無量壽院尊海)・・4

巻上慈氏名体第三

上生経の疏に曰く、弥勒は梵音なり。此れは慈氏といふ。母の志し、悲しみ蠢類に纏ひ、子の性恤(いつくしみ)懐生に及ぶ。宿しの願ひ今の誠、俱に以て號なを標す。又云く、正梵本に依らば梅咀利耶(ばいたりや)と云ふべし。此には翻って慈と為す。乃至劫玻利村波婆利(ごっぱりそんはばり)大婆羅門の家にて初めて生ぜるに、便ち三十二相八十随好有り。身、紫金色にして姿容挺特なり。輔相歓喜して相師を召して之を相せしむ。相師既に見て轉た其の善因を読む。因にて名を立てんと欲してまさに生時の相を問ふ。父これに答へていわく、其の母素より性不調なり、子を懐かしんでより以来、苦厄を慈矜す。相師占って曰く此れ即ち児の志なり。因りて為に號を立てて梅咀利耶と名く。心地観経第三に曰く、弥勒菩薩法王子、初発心より肉を食ず、この因縁を以て慈氏と名く、と云々。賢愚経には弗沙佛の時、慈心を発する相を説き、慈心経には過去無量無辺阿僧祇劫に慈心を修する義を宣ふ。之を以て之を思ふに、慈氏の名はそれ久し。誠に是れ久遠成實の仏身となる故歟。広くは疏の如し。

問て云、顕教の意、兜率天に住さる所の弥勒菩薩はその體、實身か化身か。

答。是化身にして實身にあらず。即ち自受用佛なり。色究竟にあり。疏に曰く自受用身まどかに化して仏身を成し、地前の所現に随ふ。復た此の處に化體を彰すと雖も而も影余佛を顕すは、自ら機別を成す。現る者の身亦殊なりと説く。実の仏身に非ず。其の異体月の如く雲隙を出でて圓朗にして空に徹し影を水中に現ずるが如し。水月の円明器器に任せて万別を成せども、月は本一同なり。豈に影に千差あるを以て月をして亦異あらしめんや。真權の両體義理必然。真理理源なり。權は物跡に随ふ。故に知りぬ上生成仏備に化の質を彰して、類に従って生を済ひ修しやすからしめんと欲す云々。此の意、實身は色究竟天に在りと雖も無辺の化身を十方の兜率天に下して而も佛処を補し、人天を利す。補処を云ふが如きは一切他受変化の身亦復是の如し。三千界唯是一佛の化也。

問。弥勒の色相説法如何。

答。上生経に曰く、蓮華の上に於いて結跏趺坐す。身は閻浮檀金色の如し。長さ十六由旬、三十二相八十種好、皆悉く具足す。頂上の肉髻髪は紺瑠璃色。釈迦毘楞伽摩尼百千萬億の甄叔迦寶(けんじゅくがほう/赤色の宝石)以て天冠を厳る。其の天の宝冠に百万億の色あり。一一の色の中に無量百千の化佛有り。諸の化菩薩以て侍者となる。復他方の諸の大菩薩十八変を作して意に随て自在に天冠の中に任ず。弥勒の眉間に白毫相の光あり。衆光を流出し、百寶の色と作る。三十二相あり。一一の相の中に五百億の寶色あり。一一の好の中に亦五百億の寶色あり。一一の相好みやびやかに八万四千の光明雲を出す。諸の天子と各華座に坐し、昼夜六時に常に不退転地法輪の行を説く。一時を経る中に五百億天子を成就し、阿耨多羅三藐三菩提を退せざらしむ。如是に兜率天に処して昼夜に此の不退転法輪を説て、諸の天子を度す云々。如上は亦これ浅略の説を挙ぐ。若し深奥の義に就かば、慈氏とは大日経疏の第一に曰く、慈氏菩薩とは謂く、佛の四無量心なり。今慈を以て称首となす。此の慈は如来種姓の中より能く一切世間をして佛家を断ぜざらしむ。故に慈氏と曰ふ、と。大師の釈に曰く、弥勒菩薩の三摩地門は所謂大慈三昧なり。一切如来の大慈悲無量なるを悉く弥勒と名く、と。慈氏の儀軌に曰く慈氏大日同体なり。ヒロサナ即慈氏、一生の菩薩は即ち愈誐(ゆが)、自心はすなわち是菩提心。菩提は即ち是慈氏尊。三種無二にして元一体なり。此の意、慈氏菩薩と名くと雖も当体全く是毘盧遮那如来の尊体、亦是行者自己の菩提心也。秘臓記に曰く、心地法文也、菩薩也、凡そ余乗に異なること此の如し、と。又大日経に曰く、一生補生の菩薩、佛地の三昧道に住すと。則ち疏の第六に釈して曰く、余経の明かすところの如きは此れは是一生所繫の菩薩、此れより兜率天宮に上生して佛位を次紹く、故に一生補処と名く也。今此の経宗は乃至更に一転の法性の生有りて、即ち佛処に補す、故に一生補処と名く。此れは是れ究竟の發菩提心なり。一切三昧道の中に於いて、最も牢強の精進と為す。仏道に進入する故に佛地の三昧道と云ふ也。儀軌の上に曰く、大円明の内に更に九の円明、八の金剛界道を観ぜよ。其の中の円明に慈氏菩薩います。白肉色にして頭に五智の如来の冠を戴く。左手に紅蓮華を執り、蓮華上に於いて法界塔印を書き、乃至種々の宝光あり。寶蓮華の上に於いて半跏して坐したまへり。種々の瓔珞天衣白帯鐶釧荘厳せり。此の外、種子三形印形に於いて深重の秘決あり。筆紙に顕し難し。

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 四日は阿閦如来、気比大明神... | トップ | 石巻市役所から手紙が来ました。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

諸経」カテゴリの最新記事