十一月九日 曇――雨、行程三里、和食松原、恵比須屋。
四時半起床、雲ってはいるが降ってはいない、助かった! という感じである、おばあさんが起きるまで日記をつける、散歩する、身心平静、近来にないおちつき、七時前出発、橋を二つ渡るとすぐ安芸町、午前中行乞、かなり長い街筋である、行乞しおえると雨になった、雨中を三里あまり歩いて和食町、教えられた宿――町はずれの、松林の中のゑびすやにおちつく、ほんによい宿であった、きれいでしんせつでしずかで、そしてまじめで、――名勝、和食の松原、名産、和食笠。
(いまは「和食」には遍路宿はなくなっています。ただこの和食海岸には遍路の接待所があります。)
夕方、はだしで五丁も十丁も出かけて、一杯ひっかけて(何といううまさ!)、ずぶぬれになった、御苦労々々々。
晩食後、同宿の行商老人と共に宿の主人から轟神社の神事について聞かされた、どこでもたれでもお国自慢は旅の好話題というべしである。(遍路宿の楽しみは同行の遍路との会話です。誰でも打ち解けて何でも話せます。これに宿の御主人の人柄で遍路宿の食卓も雰囲気がぐっとかわることがあります。雲辺寺下の『青空屋』という遍路宿は食事後に若いご主人が三味線?を弾いてくれました。)
今日は大降りだった、とある路傍のお宮で雨やどりしていると田舎のおかみさん二人もやってきた、その会話がおもしろい、言葉がよく解らないけれど、腰巻の話、おやじの話、息子の話。
今日の功徳はめずらしくも、銭二十八銭、米九合余。
(夕食) (朝食)
菜葉おひたし そうめん汁 米一升渡
そうめん いりこ 内五合は飯
梅ショウガ 梅干 不足金 十三銭也
(十一月九日)
水音明けてくる長い橋をわたる
朝の橋をわたるより乞ひはじめる
朝のひかりただよへばうたふもの(遍路にはどこでも朝の風景が強く印象に残ります。私も雲辺寺の山道に朝日が仕込んできたときの有難さ、屋島から八栗寺の日の出を拝んだ時の感激、三坂峠の朝のなんともいえない暗闇などいまでも思い出します)
高知へ
日に日に近うなる松原つづく
(「事が浜」の松原は名勝です。今も昔も有難いものです。なつかしい。)
四時半起床、雲ってはいるが降ってはいない、助かった! という感じである、おばあさんが起きるまで日記をつける、散歩する、身心平静、近来にないおちつき、七時前出発、橋を二つ渡るとすぐ安芸町、午前中行乞、かなり長い街筋である、行乞しおえると雨になった、雨中を三里あまり歩いて和食町、教えられた宿――町はずれの、松林の中のゑびすやにおちつく、ほんによい宿であった、きれいでしんせつでしずかで、そしてまじめで、――名勝、和食の松原、名産、和食笠。
(いまは「和食」には遍路宿はなくなっています。ただこの和食海岸には遍路の接待所があります。)
夕方、はだしで五丁も十丁も出かけて、一杯ひっかけて(何といううまさ!)、ずぶぬれになった、御苦労々々々。
晩食後、同宿の行商老人と共に宿の主人から轟神社の神事について聞かされた、どこでもたれでもお国自慢は旅の好話題というべしである。(遍路宿の楽しみは同行の遍路との会話です。誰でも打ち解けて何でも話せます。これに宿の御主人の人柄で遍路宿の食卓も雰囲気がぐっとかわることがあります。雲辺寺下の『青空屋』という遍路宿は食事後に若いご主人が三味線?を弾いてくれました。)
今日は大降りだった、とある路傍のお宮で雨やどりしていると田舎のおかみさん二人もやってきた、その会話がおもしろい、言葉がよく解らないけれど、腰巻の話、おやじの話、息子の話。
今日の功徳はめずらしくも、銭二十八銭、米九合余。
(夕食) (朝食)
菜葉おひたし そうめん汁 米一升渡
そうめん いりこ 内五合は飯
梅ショウガ 梅干 不足金 十三銭也
(十一月九日)
水音明けてくる長い橋をわたる
朝の橋をわたるより乞ひはじめる
朝のひかりただよへばうたふもの(遍路にはどこでも朝の風景が強く印象に残ります。私も雲辺寺の山道に朝日が仕込んできたときの有難さ、屋島から八栗寺の日の出を拝んだ時の感激、三坂峠の朝のなんともいえない暗闇などいまでも思い出します)
高知へ
日に日に近うなる松原つづく
(「事が浜」の松原は名勝です。今も昔も有難いものです。なつかしい。)