十一月八日 晴――曇、行乞六里、伊尾木橋畔、日の出屋で。
五時前に眼が覚めた、満天の星のひかりである、家人の起きるまで読んだり書いたりする。
ゆっくりして七時すぎてから立つ、ところどころ行乞、羽根附近の海岸風景もわるくない。
奈半利貯木場、巨材が積み重ねてある、見事なものだ、奈半利町行乞、町に活気がないだけそれだけ功徳も少なかった、土佐日記那波の泊の史蹟である。(935(承平5)年頃紀貫之作成の土佐日記に「けふはこのなはのとまりにとまりぬ」〈今日はこの那波の泊に泊りぬ)とあります。)
奈半利川を渡ると田野町、浜口雄幸先生の邸宅があると標札が出ている、それから安田町、神の峯遥拝、恥じないではいられない、大山岬、狭いけれどよい風光である、澄太君を考えたのは自然であろう。(神峯寺という四国でも一二の有難いお寺を参らなかったのは山頭火もおしいことをしました。)
四時頃、都合よく伊尾木で宿につけた、同宿は同行一人、おばさんはよい人柄である、風呂も沸かしてもらえた、今日こそはアルコールなし、宿に米一升渡して、不足十二銭払ったら、剰すところ銭九銭米二合だけなり。
今日の功徳は米六合と銭六銭だった、よく食べよく寝た、終夜水声。
同行さんから、餅やら蜜柑やらお菜やら頂戴した、感謝々々。
(十一月八日)
木の実おちてゐる拾ふべし
あとになりさきになりおへんろさんのたれかれ
(遍路は不思議と同じ人を追い抜いたり追い抜かれたりします。なかなか離れられません。)
(野食)
秋あたたかく蠅も蚊もあつまつて
短日暮れかかる笈のおもさよ
脚のいたさも海は空は日本晴
秋もをはりの蠅となりはひあるく
仲がよくないぢいさんばあさん夜が長く
五時前に眼が覚めた、満天の星のひかりである、家人の起きるまで読んだり書いたりする。
ゆっくりして七時すぎてから立つ、ところどころ行乞、羽根附近の海岸風景もわるくない。
奈半利貯木場、巨材が積み重ねてある、見事なものだ、奈半利町行乞、町に活気がないだけそれだけ功徳も少なかった、土佐日記那波の泊の史蹟である。(935(承平5)年頃紀貫之作成の土佐日記に「けふはこのなはのとまりにとまりぬ」〈今日はこの那波の泊に泊りぬ)とあります。)
奈半利川を渡ると田野町、浜口雄幸先生の邸宅があると標札が出ている、それから安田町、神の峯遥拝、恥じないではいられない、大山岬、狭いけれどよい風光である、澄太君を考えたのは自然であろう。(神峯寺という四国でも一二の有難いお寺を参らなかったのは山頭火もおしいことをしました。)
四時頃、都合よく伊尾木で宿につけた、同宿は同行一人、おばさんはよい人柄である、風呂も沸かしてもらえた、今日こそはアルコールなし、宿に米一升渡して、不足十二銭払ったら、剰すところ銭九銭米二合だけなり。
今日の功徳は米六合と銭六銭だった、よく食べよく寝た、終夜水声。
同行さんから、餅やら蜜柑やらお菜やら頂戴した、感謝々々。
(十一月八日)
木の実おちてゐる拾ふべし
あとになりさきになりおへんろさんのたれかれ
(遍路は不思議と同じ人を追い抜いたり追い抜かれたりします。なかなか離れられません。)
(野食)
秋あたたかく蠅も蚊もあつまつて
短日暮れかかる笈のおもさよ
脚のいたさも海は空は日本晴
秋もをはりの蠅となりはひあるく
仲がよくないぢいさんばあさん夜が長く