受菩提心戒儀一卷開府儀同三司特進試鴻臚卿肅國公食邑三千戸賜紫贈司空諡大鑒正號大廣智大興善寺三藏沙門不空奉詔譯
(「受菩提心戒儀」について・・密教大辞典には「空海・円仁・恵雲・円珍・宗叡請来。作者未決。廣澤方には普賢阿闍梨(龍智)作といふ。これ光明壽院道法御室自筆本の奥に普賢阿闍梨集といへるに依る。真言行者三昧耶受戒の戒儀を説く。無畏禅要と共に三昧耶戒の本軌として密宗に尊重するところなり。東密安祥寺流には本書を以て三昧耶戒の本拠となし、醍醐諸流には無畏禅要を旨とし、廣澤諸流には両本を典拠とす。現流大蔵経所蔵の本は金剛界受戒法にして、礼佛真言・運心供養・懺悔・三帰依・受菩提心戒・最上乗教受發菩提心戒懺悔文の数項に分かれる。弘法大師御請来本は最後の懺悔文を欠くと云ふ。弘法大師の三學録律部に金剛頂受三昧耶戒儀一巻あり、しかもこの名称の戒儀現存せず、恐らくは本書と同本異名なるべし。」)
「弟子某甲等、 稽首歸命して、遍虚空法界の十方諸如來・瑜伽總持教・諸大菩薩衆を禮し、 及び菩提心を禮し、能く福智聚を滿して無上覺を得しめん。 是の故に稽首して禮す。
禮佛眞言に曰く
唵薩嚩怛他多跛娜滿那喃迦嚧彌(おんさらばたたぎゃた はんなまんなのうきやろみ)
次に應に運心供養すべし
弟子某甲等 十方一切刹に、所有る諸供養、 花鬘・燈・塗香・飮食・幢・旛蓋を誠心に我奉獻す。諸佛大菩薩 及び諸賢聖等に 我今至心に禮す。
普供養虚空藏眞言に曰く
唵誐誐嚢三婆嚩嚩曰囉斛(おんぎゃぎゃのうさんばんばたらく)
次に應に懺悔すべし
弟子某甲等 今、一切佛・諸大菩薩衆に對し、 過去世の 無始流轉中より 乃至今日に至るまで、眞如性に愚迷し、 虚妄分別・貪瞋癡の不善・三業の諸煩惱及以び隨煩惱とを起こし 、他勝罪及餘罪愆等を違犯し 佛法僧を毀謗し 三寶物を侵奪し 廣く無間罪を作ること
無量無邊劫にして 數を憶知すべからず。自作し他を教えて作さしめ 見聞及び隨喜す。
復た勝義諦・眞實微妙理に依り、聖慧眼もて觀察するに 前後中の三際に彼れ皆な無所得なり。 自心に分別を造り 虚妄不實なるが故に 以って慧方便と為すは 平等にして虚空の如し 我悉く皆な懺悔す。誓って敢て覆藏せず、 今ま懺して已後は永く斷じて復た作さず 乃至正覺を成ずまで終に更に違犯せず 。唯だ願くは十方の佛・一切菩薩衆、我を哀愍加護し我が罪障を滅したまへ。 是の故に至心に禮す。
懺悔滅罪眞言に曰く
唵薩嚩跛波捺賀曩嚩曰囉娑嚩賀(おんさらばばんばかのうばざらやそわか)
次に當に三歸依を受くべし。
弟子某甲等 今日より以往、諸如來・五智三身佛に歸依す。 金剛乘・自性眞如法に歸依す。
不退轉の大悲菩薩僧に歸依す。三寶に歸依し竟って 終に更に自利邪見道に歸依せず。
我今至心に禮す、
三歸依眞言に曰く
唵歩欠(おんぼっけん)
次に應に菩提心戒を受くべし
弟子某甲等 一切佛菩薩に今日より以往乃至正覺を成ずまで誓って菩提心を發す。
有情無邊誓願度 福智無邊誓願集 佛法無邊誓願學 如來無邊誓願事 無上菩提誓願成
今ま所發の覺心は 諸性相蘊界及び處(十二処)等・能取所取の執を遠離す。
諸法は悉く無我なり 平等にして虚空の如し
自心は本不生なり、 空性圓寂なる故に、諸佛菩薩の大菩提心を發するが如く
我れ今ま如是に發す。 是の故に至心に禮す。
次に受菩提心戒の眞言を誦して曰く
唵冐地喞多母怚波那野彌(おんぼうじしったぼだはだやみ)
最上乘教受發菩提心戒懺悔文
弟子某甲等。十方一切諸佛諸大菩薩大菩提心に歸命し大導師となる。能く我等をして諸惡趣を離れ、能く人天に示して大涅槃に入らしむ。是故に我今至心に頂禮す。
弟子某甲等。十方世界の所有る一切最勝上妙、香花旛蓋種種供養を一切諸佛菩薩に奉獻し、至心頂禮す。
弟子某甲等、過去無始より已來、乃至今日まで、貪瞋癡等種種煩惱及忿恨等諸隨煩惱、身心を惱亂し、廣く一切身業の不善たる殺盜邪婬、口業の不善たる妄言綺語惡口兩舌、意業の不善たる貪瞋邪見、種種煩惱を作し、無始相續して其心を纒染し、身口意をして罪無量を造る。或は殺父母・殺阿羅漢・出佛身血・破和合僧・毀謗三寶・打縛衆生・破齋破戒飮酒食肉及食五辛、如是等の罪は無量無邊なり。憶知すべからず。今日誠心に發露懺悔す。一に懺已後は、永く斷じて相續し更に敢て造らじ。唯だ願くは十方一切諸佛諸大菩薩、加持護念し、能く我等をして罪障銷滅せしめよ。
弟子某甲等、今身より乃至當坐菩提道場まで其の中間において、如來無上の三身に歸依す。方廣大乘法藏に歸依す。一切不退菩薩僧に歸依す。歸依佛竟・歸依法竟・歸依僧竟。今より已後、更に二乘外道に歸依せず。唯だ願くは十方一切諸佛、我等至心頂禮すを證知せよ。
弟子某甲等、今身より始まり乃至當に菩提道場に坐すまで、其中間において、無上菩提心を誓發す。
衆生無邊誓願度 福智無邊誓願集 法門無邊誓願學 如來無邊誓願事 無上菩提誓願成
今發心する所は復た當に我法二相を遠離し、本覺を顯明し、眞如平等鏡智現前し、善巧智を得、普賢之心を具足圓滿す。唯だ願くは十方一切諸佛諸大菩薩、我等の至心頂禮を證知せよ。
南無東方阿閦佛 南無南方寶生佛 南無西方阿彌陀佛 南無北方不空成就佛 南無清淨法身毘盧遮那佛
受菩提心戒儀一卷終
(「受菩提心戒儀」について・・密教大辞典には「空海・円仁・恵雲・円珍・宗叡請来。作者未決。廣澤方には普賢阿闍梨(龍智)作といふ。これ光明壽院道法御室自筆本の奥に普賢阿闍梨集といへるに依る。真言行者三昧耶受戒の戒儀を説く。無畏禅要と共に三昧耶戒の本軌として密宗に尊重するところなり。東密安祥寺流には本書を以て三昧耶戒の本拠となし、醍醐諸流には無畏禅要を旨とし、廣澤諸流には両本を典拠とす。現流大蔵経所蔵の本は金剛界受戒法にして、礼佛真言・運心供養・懺悔・三帰依・受菩提心戒・最上乗教受發菩提心戒懺悔文の数項に分かれる。弘法大師御請来本は最後の懺悔文を欠くと云ふ。弘法大師の三學録律部に金剛頂受三昧耶戒儀一巻あり、しかもこの名称の戒儀現存せず、恐らくは本書と同本異名なるべし。」)
「弟子某甲等、 稽首歸命して、遍虚空法界の十方諸如來・瑜伽總持教・諸大菩薩衆を禮し、 及び菩提心を禮し、能く福智聚を滿して無上覺を得しめん。 是の故に稽首して禮す。
禮佛眞言に曰く
唵薩嚩怛他多跛娜滿那喃迦嚧彌(おんさらばたたぎゃた はんなまんなのうきやろみ)
次に應に運心供養すべし
弟子某甲等 十方一切刹に、所有る諸供養、 花鬘・燈・塗香・飮食・幢・旛蓋を誠心に我奉獻す。諸佛大菩薩 及び諸賢聖等に 我今至心に禮す。
普供養虚空藏眞言に曰く
唵誐誐嚢三婆嚩嚩曰囉斛(おんぎゃぎゃのうさんばんばたらく)
次に應に懺悔すべし
弟子某甲等 今、一切佛・諸大菩薩衆に對し、 過去世の 無始流轉中より 乃至今日に至るまで、眞如性に愚迷し、 虚妄分別・貪瞋癡の不善・三業の諸煩惱及以び隨煩惱とを起こし 、他勝罪及餘罪愆等を違犯し 佛法僧を毀謗し 三寶物を侵奪し 廣く無間罪を作ること
無量無邊劫にして 數を憶知すべからず。自作し他を教えて作さしめ 見聞及び隨喜す。
復た勝義諦・眞實微妙理に依り、聖慧眼もて觀察するに 前後中の三際に彼れ皆な無所得なり。 自心に分別を造り 虚妄不實なるが故に 以って慧方便と為すは 平等にして虚空の如し 我悉く皆な懺悔す。誓って敢て覆藏せず、 今ま懺して已後は永く斷じて復た作さず 乃至正覺を成ずまで終に更に違犯せず 。唯だ願くは十方の佛・一切菩薩衆、我を哀愍加護し我が罪障を滅したまへ。 是の故に至心に禮す。
懺悔滅罪眞言に曰く
唵薩嚩跛波捺賀曩嚩曰囉娑嚩賀(おんさらばばんばかのうばざらやそわか)
次に當に三歸依を受くべし。
弟子某甲等 今日より以往、諸如來・五智三身佛に歸依す。 金剛乘・自性眞如法に歸依す。
不退轉の大悲菩薩僧に歸依す。三寶に歸依し竟って 終に更に自利邪見道に歸依せず。
我今至心に禮す、
三歸依眞言に曰く
唵歩欠(おんぼっけん)
次に應に菩提心戒を受くべし
弟子某甲等 一切佛菩薩に今日より以往乃至正覺を成ずまで誓って菩提心を發す。
有情無邊誓願度 福智無邊誓願集 佛法無邊誓願學 如來無邊誓願事 無上菩提誓願成
今ま所發の覺心は 諸性相蘊界及び處(十二処)等・能取所取の執を遠離す。
諸法は悉く無我なり 平等にして虚空の如し
自心は本不生なり、 空性圓寂なる故に、諸佛菩薩の大菩提心を發するが如く
我れ今ま如是に發す。 是の故に至心に禮す。
次に受菩提心戒の眞言を誦して曰く
唵冐地喞多母怚波那野彌(おんぼうじしったぼだはだやみ)
最上乘教受發菩提心戒懺悔文
弟子某甲等。十方一切諸佛諸大菩薩大菩提心に歸命し大導師となる。能く我等をして諸惡趣を離れ、能く人天に示して大涅槃に入らしむ。是故に我今至心に頂禮す。
弟子某甲等。十方世界の所有る一切最勝上妙、香花旛蓋種種供養を一切諸佛菩薩に奉獻し、至心頂禮す。
弟子某甲等、過去無始より已來、乃至今日まで、貪瞋癡等種種煩惱及忿恨等諸隨煩惱、身心を惱亂し、廣く一切身業の不善たる殺盜邪婬、口業の不善たる妄言綺語惡口兩舌、意業の不善たる貪瞋邪見、種種煩惱を作し、無始相續して其心を纒染し、身口意をして罪無量を造る。或は殺父母・殺阿羅漢・出佛身血・破和合僧・毀謗三寶・打縛衆生・破齋破戒飮酒食肉及食五辛、如是等の罪は無量無邊なり。憶知すべからず。今日誠心に發露懺悔す。一に懺已後は、永く斷じて相續し更に敢て造らじ。唯だ願くは十方一切諸佛諸大菩薩、加持護念し、能く我等をして罪障銷滅せしめよ。
弟子某甲等、今身より乃至當坐菩提道場まで其の中間において、如來無上の三身に歸依す。方廣大乘法藏に歸依す。一切不退菩薩僧に歸依す。歸依佛竟・歸依法竟・歸依僧竟。今より已後、更に二乘外道に歸依せず。唯だ願くは十方一切諸佛、我等至心頂禮すを證知せよ。
弟子某甲等、今身より始まり乃至當に菩提道場に坐すまで、其中間において、無上菩提心を誓發す。
衆生無邊誓願度 福智無邊誓願集 法門無邊誓願學 如來無邊誓願事 無上菩提誓願成
今發心する所は復た當に我法二相を遠離し、本覺を顯明し、眞如平等鏡智現前し、善巧智を得、普賢之心を具足圓滿す。唯だ願くは十方一切諸佛諸大菩薩、我等の至心頂禮を證知せよ。
南無東方阿閦佛 南無南方寶生佛 南無西方阿彌陀佛 南無北方不空成就佛 南無清淨法身毘盧遮那佛
受菩提心戒儀一卷終