平安朝において伝教、弘法の二大宗教家があらわれ、二つの大きな宗旨が支那から伝えられ、天台、真言の二宗が開かれましたが、これらはこのお二人の人格的力によって全く日本のものとなりました。支那の宗旨そのものの輸入ではなくて我が日本の国土に本当に深く根を下ろし日本の土壌の中へ深く根を張ってそうして天を摩するような大樹となったのであります。
弘法大師は大日経を中心として真言宗を開かれ、伝教大師は法華経を中心ととして天台宗を開かれましたからもとよりこれは大乗佛教の尤なるものであります。
・・この法華経の中にはもう人間だけではないあらゆるものが成仏するということを説いてあります。法華経を拝見するというと、釈迦如来の御説法の最中に八歳の龍女と云うものが出てくる。この龍の王様の娘さんの八歳の龍女が法華経の御説法によって成仏すると書いてある。(
法華経提婆達多品に、『・・当時の衆会、皆龍女の忽然の間に変じて男子となって、菩薩の行を具して、即ち南方無垢世界に往いて宝蓮華に坐して等正覚を成じ、三十二相・八十種好あって、普く十方の一切衆生の為に妙法を演説するを見る。爾の時に娑婆世界の菩薩・声聞・天・龍・八部・人とと皆遥かに彼の龍女の成仏して、普く時の会の人・天の為に法を説くを見て、心大に歓喜して悉く遥かに敬礼す。無量の衆生法を聞いて解悟し不退転を得、無量の衆生道の記を受くることを得たり。無垢世界六反に震動す。娑婆世界の三千の衆生不退の地に住し、三千の衆生、菩提心を発して受記を得たり。智積菩薩及び舎利弗、一切の衆会黙然として信受す・・。』とあります)・・これは人間でない蛇でも蜂でも蜻蛉でも皆成仏の可能性を持っている、成仏することが出来る、ということを暗示するものである。一切衆生、一切万象はそのままの姿に於いて如来の智慧徳相を示しているとあります(「爾時如來普觀法界一切衆生。而作是言。奇哉奇哉。此諸衆生。云何具有如來智慧迷惑不見。」原人論)が、浄土教においては一切衆生はそのままの姿に於いて阿弥陀仏の本願力により往生すると教えて下さってある。・・往生ということはこの生死の世界から涅槃の覚りの世界に往いて生まれる。この往いて生まれるという字が往生であります。往いて生まれてそのまま佛となる。それで往生ということはそのまま成仏ということになる。親鸞聖人は後に即得往生という文字を用いられておりますが(親鸞上人の「唯信鈔文意」に『「即得往生」は、信心をうればすなわち往生すという。「すなわち往生す」というは、不退転に住するをいう。「不退転に住す」というは、すなわち正定聚の位に定まるなり、「成等正覚」ともいえり、これを「即得往生」というなり。「即」はすなわちという、「すなわち」というは時をへだてず日をへだてぬをいうなり』 とあります。)
、この大涅槃のさとりの御浄土へ往かないままでここにこのまま佛の大慈悲に抱きとられて大安住の身となることを即得往生といはれたのであります。これが人間の大理想であって我々人間はこれ(即得往生)より大きな理想を持つことは出来ない。そういう大理想を達成し、覚りの佛に成り得るのは人間だけではない、八歳の龍女でも成仏する、これは大変な事件です。この龍女成仏という思想が段々と拡充してきて、いわゆる草木国土悉皆成仏、草木も皆成仏するという大思想に到達しているのであります。・・こういう深い思想と云うものは世界の宗教のどこにもないのであります。(例えば大師は「吽字義」の中で「草木また成ず 何(いか)に況や有情をや 」とおしゃっていますし、親鸞上人も「唯信鈔文意」のなかで、「仏性すなはち如来なり。この如来微塵世界にみちみちてまします。すなはち、一切群生海のこころにみちたまえるなり。草木国土ことごとくみな成仏すととけり」といっておられます)
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