大乗本生心地観経(報恩品・全品書き下し)3/5
はじめに・・3
3、古来この経の眼目は「報恩品」に説く、父母・衆生・国王・三宝の四恩説と四恩に対する報恩行にあるとされてきました。
・大師の「梵網経を講釈する表白」には「・・風に聞く、情なき橋梓(きょうし・橋板)なほ父子の礼あり。智なき烏獺(うたつ・カラスや獺)もまた報恩の孝を懐く。いかに況や天地の尤霊なる、気を含める最貴、誰か父母の恩を忘れ、師僧の徳を忘れんや。経(心地観経)の中に、仏恩処あることを説くに、それに四種あり、父母・国王・衆生・三宝なり。父母は我を生じ、我を哺する功、厚地に過ぎたり。国王は我を安んじ、我を貴くする徳、高天にも逾こへたり。衆生は三世の達親(すべての親)みなこれ孝妣(こうひ・亡父と亡母)なり。三宝とは仏法僧なり。佛はよく我が生盲を開いて険夷(険阻と平坦)を導き示す。法はよく我に甘露をそそいで熱悩を除去す。僧宝の中に二種あり。菩薩・聖僧、四摂(布施・愛語・利行・同時)をもて我が迷を引き、四量(慈・悲・喜・捨)もて我が酔を醒ます。現前師僧の徳は四恩の中に尤も高く尤深。いかんとなれば父母の恩はただ一生の肉身を養う。国王の恩は一世の凡体を安んず。三宝は法界に遍すといえどもすべて見聞することなし。四恩の所在を知り、三宝の帰すべきをさとって現前の安楽を得、後世の菩提を証すゆえんはみなこれ現前師僧の功なり。この故に臂を断ちて不生の観を仰ぎ、身を投じて寂滅の偈を渇ふ。良まことにゆえあり。・・」とあり、
・また大師の「佛経を講演して四恩の徳を報ずる表
白」には「・・・それこの身は虚空より化生するにも非ず、大地より変現するにも非ず。必ず四恩の徳に資けられてこの五陰の体を保つ。いわゆる四恩とは一つには父母、二つには国王、三つには衆生、四つには三宝なり。
我を生じ我を育するは父母の恩、天よりも高く地よりも厚し。身を粉にし命を損ずともいずれの劫にか報ずることを得む。父母我を生ずといふと雖も、もし国王なくば弱強相戦い、貴賤劫奪して身命保ちがたく、財宝何ぞ守らむ。万生の室宅を安んじ、四海の康哉(やすらか)を与ふ、その官邑を封じ、その爵禄を授く、現世の顕栄を為し、後葉の美声を流す、国王の力ただよく然らしむ。
衆生我に於いて何の恩徳かある。吾はこれこのかた四生六道の中に父たり子たり。いずれの生をか受けざえらむ。いずれの趣にか生ぜざる。もし恵眼をもってこれを観ずれば一切衆生はもなこれ我が親也。この故に経(心地観経)にいわく「一切の男子はこれ我が父、一切の女人はこれ我が母、一切の衆生はもなこれ吾が二親師君なり」このゆえに衆生の恩すべからく報酬すべし・・」とあります。
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