福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

真言宗義章・第十五 帰依本尊章

2022-02-06 | 諸経

第十五 帰依本尊章

(覚って福智を得て衆生済度を願うものあらば真言門に入りなさい、そして先ず曼荼羅に投華得佛して本尊を定めてその本尊を拝め)

若し善男子善女人ありて現身に無上菩提を得て広大の福智を具し一切衆生を利益せんと欲はば、須らく真言門に入りて所帰依の本尊を定め其の内証三密の法則を受得し而して後、昼夜に精進修行し、常恒に相続して退転せざるべし。必ず久しからずして本尊の悉地を成就し六神通(神境通・天眼通・天耳通・他心通・宿命通・漏尽通)を得て諸の衆生の為に導師となる事を得べし。この故に大日経には「此の生において悉地に入らんと欲せば其の所応に随って之を思念せよ。まのあたり尊のみもとにおいて明法を受け観察し相応すれば成就と為す」(大毘盧遮那成佛神變加持經卷第六受方便學處品第十八「如是正住三昧耶 當令障蓋漸消盡 以諸福徳増益故 欲於此生入悉地 隨其所應思念之 親於尊所受明法 觀察相應作成就」)と説かれ、摂真実経には「初夜後夜に道場の中に入り當に所帰の本尊に念を繋けて法に従って観行すべし。現身に必ず広大の福智を得て衆生を利益するに等比あることなけん」(諸仏境界摂真実経下に「若有善男子善女人。欲得六神通力。於一念頃。普詣十方無量佛所。來衆中而爲上首。勸請諸佛轉正法輪。爲諸衆生作導師者。初夜後夜入道場中。應當繋念所歸本尊。依法觀行。現身必得廣大福智。利益衆生無有等比。經萬億劫不入惡道。恒遇善友常不退轉。彌勒會中得佛授記。速證阿耨多羅三藐三菩提」)と説き給へり。しかるに其の所依の本尊を定むることは必ず両部曼荼羅に依るべし。其の法、まず受灌頂の壇に入り大日如来の秘密加持を蒙りて曼荼羅に臨んで投華する也。数多の諸尊の中にいずれか其の一尊に落つることは偶然には非ず。是即ち宿縁の感ずる所にして我において有縁の尊也。是を本尊と定め奉りて常念帰命するときは悉地速やかに成じやすし。摂真実経に曰はく「時に阿闍梨、弟子の手を執りて道場の中に於いて諸の華を散ぜしむ。華の落つる所に随って是れ

本尊なり」(諸仏境界摂真実経下に「已時阿闍梨執弟子手。於道場中。令散諸花。隨花落處。即是本尊」)と。略出経に曰はく「掛けるところの鬘を壇中に擲げて彼の因業に随って所著の処において即ちその部の密語を念誦せよ。当に知るべし、速に成就を得ん。(金剛頂瑜伽中略出念誦經卷第四「擲所掛鬘於壇中。隨彼因業。鬘所著處。即令念誦其部密語當知速得成就」)と。凡そ曼荼羅には上は佛菩薩より下は明王天等に至るまで種々無量の諸尊ましませり。是れ皆な大日如来、一切衆生の本縁性欲に応じて現じさせ給へる一門別得の身なり。この故にその内証を尋ぬるに彼の観音のごときは大悲の一門を面として而もここに万徳を具足し、文殊の如きは大智の一徳を面として而もここに衆徳を円満せり。自余の福徳弁才愛敬等の一徳を司り給へる諸尊も亦此の如し。普門一門其の主どる所各々なれども其の円証は一味平等なればみだりに凡情をもって優劣浅深を執し疑惑軽慢の心をおこすべからず。この故に大日経には諸尊の内証一味の義を説きて「而もこの一切智智の道は一味なり。いうところの如来の解脱味なり」(大毘盧遮那成佛神變加持經卷第一入眞言門住心品第一に「而此一切智智道一味。所謂如來解脱味世尊譬如虚空界離一切分別。無分別無無分別。如是一切智智離一切分別。無分別無無分別。世尊譬如大地一切衆生依。如是一切智智。」)といい、菩提心論には「諸尊皆大毘盧遮那佛身と同じなり」(金剛頂瑜伽中發阿耨多羅三藐三菩提心論の最初の方に「憶持不忘若願成瑜伽中諸菩薩身者。亦名發菩提心。何者謂此諸尊。皆同大毘盧遮那佛身」)と曰へり。内証既に平等なるがゆえに設ひ一門の三密を修するものといへども究竟じて其の果徳に契ひぬるときはすなわちこれ普門大日の果徳に契ひぬる位なり。疏主三蔵の釈いいはく「若し諸の行人、慇懃に修習すれば能く三業をして本尊に同ぜしむ。この一門より法界に入ることを得れば是れあまねく一切法界門に入るなり。」(大毘盧遮那成佛經疏卷第一入眞言門住心品第一「若諸行人慇懃修習。能令三業同於本尊。從此一門得入法界。即是普入一切法界門也。」)と。真言行者この如く一門即普門の実義を了知し能く所帰依の本尊に隋順し帰命し奉るべし。

 

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