福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

佛教人生読本(岡本かの子)・・・その58

2014-04-05 | 法話

第五八課 信仰に入る前の準備


 現代人は、折角、今日のような発達した文化の知識があるのですから、この知識を働かして、突き止められるだけは突き止めて、万遺漏のない心用意をしてから、さて「信仰」に入ります。そうしたものはあとで心の揺ぎがありません。それをしないでいきなり「信仰」に入ろうとすると、兎角、遺憾な事や迷いが邪魔をします。
 よく世間の中には、宗教と科学とは両立しないとか、宗教は文化に逆行するとかいう意見を述べる人があります。あるいは、そういう宗教もあるでありましょう。しかし、少くとも仏教においては、出発の最初が科学的、文化知識的の結晶として、当時かなり発達していた印度の諸学派を、理攻めにして攻め降し、かくして仏教の存在隆盛を確かめて来た科学と哲学を基礎とする宗教ですから、いつの時代でも、真の仏教はこの出発精神に背きません。あらゆる新科学知識、新文化精神を、それらが真理であるならば、仏教は進んで歓迎し、それらの発達を促すものであります。またそれらの新科学知識や新文化精神を実際生活の上に当てはめようとするときに当っては、仏教は非凡な鑑識力と人格とによって批判適切ならしむるのであります。仏教に含んでいる道理の新しい方面では(例えば十八空〔空の意義の十八とおりの分析 智度論〕など)、今日の新物理学が却って後から証明して来るようなものもあります。兎に角、文化の知識で押し詰められるまでは押し詰め、それから先、越えなくてはならない真理への境を、「信」で飛越して行って、真理を体験に持ち来し、それを生活力にしようというのが仏教の信仰の仕方です。
 この方法を採らず、または先輩の体験者の証言を利用せず、浅はかに勝手な信仰をすることを迷信と言います。

(『大智度論巻四十六』では空を分類して、内空・外空・内外空・空空・大空・第一義空・有為空・無為空・畢竟空・無始空・散空・性空・自相空・諸法空・不可得空・無法空・有法空・無法有法空の十八空とします。別途大智度論のここの解説を出します。倶舎論は宇宙は常住壊劫をくりかえすといっていて現代の宇宙論はそれに近ずいているのかもしれません。)
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