五輪九字明祕密釋一卷( 亦は頓悟往生祕觀 と名つ゛く)興教大師撰 ・・その1
竊ひそかに惟おもんみれば二七の曼荼羅(胎大日の種子の「ア・バ・ラ・カ・キャ」の五字曼荼羅と阿弥陀小呪の「オン・ア・ミリ・タ・ティ・セィ・カ・ラ・ウン」を九字曼荼羅としたもの、合わせて14)は、大日帝王の内證、彌陀世尊の肝心、現生大覺(即身成仏)の普門、順次往生(本来の意味は「この世が終わり順を追ってあの世でさとること」であるがここではすべての往生成仏)の一道なり。
所以者何。纔見纔聞(ざんけんざんもん・・わずかに見聞きする)の類は、見佛聞法を此の生において遂げ、一觀一念の流(たぐひ)は離苦得樂を即身に果たす。況んや復た信根清淨にして慇懃に修行すれば是れ則ち大日如來の覺位、證得を反掌(手のひらを返すように早く)に取り彌陀・善逝(仏の十号の一)の淨土、往生を稱名に期す。稱名の善、猶ほ是の如し。觀實の功徳(実相を観照する功徳)、豈に虚しからん哉。顯教には釋尊の外に彌陀あり。密藏には大日即ち彌陀・極樂教主なり。當に知るべし、十方淨土は皆な是れ一佛の化土、一切如來は悉く是れ大日なり。毘盧・彌陀は同體の異名、極樂(阿弥陀仏の浄土)・密嚴(大日の浄土)は名異にして一處なり。妙觀察智の神力加持をもって大日の體の上に彌陀の相を現ず、凡そ是の如くの觀を得れば上は諸佛菩薩賢聖を尽し、下は世天龍鬼八部(天、龍、夜叉、乾闥婆、阿修羅、迦楼羅、緊那羅、摩睺羅伽)に至るまで大日如來の體に非ざる無し。五輪門(胎大日の「ア・バ・ラ・カ・キャ」の五字)を開いて自性法身(本から仏であった姿)を顕し、九字門(阿弥陀如来の「オン・ア・ミリ・タ・ティ・セィ・カ・ラ・ウン」の九字)を立てて受用報身(修行の報としての仏身)を標す。既に知んぬ、二佛(大日・阿弥陀)平等なり。豈に終に賢聖差別あらん哉。安養(阿弥陀の極楽浄土)・都率(弥勒の兜率天)は同佛の遊處、密嚴・華藏は一心の蓮臺なり。惜しい哉な、古賢、難易を西土に争ふこと。悦しき哉、今愚往生を當處に得ること。重ねて祕釋を述ぶる意、只だ此にあり。往生の難易は有執の然らしむるなり。
方に今、此の眞言を釈するに略して十門と作す。
1、擇法權實同趣門(ちゃくほうごんじつどうしゅもん、仮の教えと真実の教えを択ぶ)
2、正入祕密眞言門(しょうにゅうひみつしんごんもん、秘密真言の門に入る)
3、所獲功徳無比門(しょぎゃくくどくむひもん、真言門に入りて獲得する功徳)
4、所作自成密行門(しょさじじょうみつぎょうもん、真言行者自行により清浄となる)
5、纔修一行成多門(ざんしゅいちぎょうじょうたもん、阿弥陀法の一行で現当の悉地を得る)
6、上品上生現證門(じょうぼんじょうしょうげんしょうもん、上品上生を現證する)
7、覺知魔事對治門(かくちまじたいじもん、魔事を覚知して退治する)
8、即身成佛眞行門(そくしんじょうぶつしんぎょうもん、即身成佛の門)
9、所化機人差別門(しょけきにんしゃべつもん、教化される人の機根)
10、發起問答決疑門(ほっきもんどうけつぎもん、質疑応答)
竊ひそかに惟おもんみれば二七の曼荼羅(胎大日の種子の「ア・バ・ラ・カ・キャ」の五字曼荼羅と阿弥陀小呪の「オン・ア・ミリ・タ・ティ・セィ・カ・ラ・ウン」を九字曼荼羅としたもの、合わせて14)は、大日帝王の内證、彌陀世尊の肝心、現生大覺(即身成仏)の普門、順次往生(本来の意味は「この世が終わり順を追ってあの世でさとること」であるがここではすべての往生成仏)の一道なり。
所以者何。纔見纔聞(ざんけんざんもん・・わずかに見聞きする)の類は、見佛聞法を此の生において遂げ、一觀一念の流(たぐひ)は離苦得樂を即身に果たす。況んや復た信根清淨にして慇懃に修行すれば是れ則ち大日如來の覺位、證得を反掌(手のひらを返すように早く)に取り彌陀・善逝(仏の十号の一)の淨土、往生を稱名に期す。稱名の善、猶ほ是の如し。觀實の功徳(実相を観照する功徳)、豈に虚しからん哉。顯教には釋尊の外に彌陀あり。密藏には大日即ち彌陀・極樂教主なり。當に知るべし、十方淨土は皆な是れ一佛の化土、一切如來は悉く是れ大日なり。毘盧・彌陀は同體の異名、極樂(阿弥陀仏の浄土)・密嚴(大日の浄土)は名異にして一處なり。妙觀察智の神力加持をもって大日の體の上に彌陀の相を現ず、凡そ是の如くの觀を得れば上は諸佛菩薩賢聖を尽し、下は世天龍鬼八部(天、龍、夜叉、乾闥婆、阿修羅、迦楼羅、緊那羅、摩睺羅伽)に至るまで大日如來の體に非ざる無し。五輪門(胎大日の「ア・バ・ラ・カ・キャ」の五字)を開いて自性法身(本から仏であった姿)を顕し、九字門(阿弥陀如来の「オン・ア・ミリ・タ・ティ・セィ・カ・ラ・ウン」の九字)を立てて受用報身(修行の報としての仏身)を標す。既に知んぬ、二佛(大日・阿弥陀)平等なり。豈に終に賢聖差別あらん哉。安養(阿弥陀の極楽浄土)・都率(弥勒の兜率天)は同佛の遊處、密嚴・華藏は一心の蓮臺なり。惜しい哉な、古賢、難易を西土に争ふこと。悦しき哉、今愚往生を當處に得ること。重ねて祕釋を述ぶる意、只だ此にあり。往生の難易は有執の然らしむるなり。
方に今、此の眞言を釈するに略して十門と作す。
1、擇法權實同趣門(ちゃくほうごんじつどうしゅもん、仮の教えと真実の教えを択ぶ)
2、正入祕密眞言門(しょうにゅうひみつしんごんもん、秘密真言の門に入る)
3、所獲功徳無比門(しょぎゃくくどくむひもん、真言門に入りて獲得する功徳)
4、所作自成密行門(しょさじじょうみつぎょうもん、真言行者自行により清浄となる)
5、纔修一行成多門(ざんしゅいちぎょうじょうたもん、阿弥陀法の一行で現当の悉地を得る)
6、上品上生現證門(じょうぼんじょうしょうげんしょうもん、上品上生を現證する)
7、覺知魔事對治門(かくちまじたいじもん、魔事を覚知して退治する)
8、即身成佛眞行門(そくしんじょうぶつしんぎょうもん、即身成佛の門)
9、所化機人差別門(しょけきにんしゃべつもん、教化される人の機根)
10、發起問答決疑門(ほっきもんどうけつぎもん、質疑応答)