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福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

請觀世音菩薩消伏毒害陀羅尼呪經呪經

2021-05-23 | 諸経
請觀世音菩薩消伏毒害陀羅尼呪經
 
1・この経は疫病退治のお経であることで有名です.
実際疫病対策として観音様の像立と請觀音経の写経が宣旨で命じられたこともあります。長元3年(1030)五月二十三日は、全国に 前年から蔓延した疫疾対策として観音像と請観音経の図写供養が求められています。
長元三年五月二十三日、太政官符「太政官符五畿七道諸国司 応に丈六観世音菩薩一体・請観音経百巻を図写供養の事。
右去春以来疾疫滋蔓し病死尽大。祈祷を致すも空しく旬月を経る。‥それ観世音菩薩といっぱ衆生の依怙なり、能く無畏を施し患病厄者は必ず苦源を抜く。急難に遭ふものはたちまちに解脱を得る。就中十一面観世音菩薩は頂上の佛面に除疫病の願あり。請観音経は毘舎離國救苦の教あり。・・官符到着以後吉日を択定し、国分寺に於いて当寺浄行僧十口を請じ開講供養し即ち一七日間件の経を転読すべし・・造東大寺長官正四位右大弁兼内蔵頭中宮亮源朝臣 従五位下左大史惟宗朝臣    長元三年五月二十三日」(『類聚符宣抄』より)

2・また、善光寺縁起のもととなっていることでも有名です。「扶桑略記」(11世紀)の「善光寺縁起」では以下のように書かれています。「件の仏像は尤も是れ釈尊在世の時、毘舎離国月蓋長者、釈尊の教えに随って正に西方を向き、遥かに礼拝を致し、一心に弥陀如来・観音・勢至を持念す。その時、三尊は一搩手半に促身し月蓋門閫に現住す。長者、面に一佛二菩薩を見、忽ちに金銅を以て鋳写し奉る所の佛菩薩これなり。月蓋長者遷化の後、仏像空を騰び百済国に飛到す。已に一千年を経てその後、本朝に浮来せり。今の善光寺三尊是その仏像なり。」と。

3・請觀世音菩薩消伏毒害陀羅尼呪經の概要は以下のようになっています。
佛陀が毘舎離の重閣講堂におられたとき、毘舎離 の人民は大疫病に悩んでいた。月蓋長者が佛陀のみもとに行き「人民の病氣を救いたまえ」と願うと、 佛は月蓋長者に、「阿彌陀 ・観音 ・勢至の三聖を請ぜよ」と仰せられる。佛陀 がこの語を説きたもうや三聖が降臨し大光明を放つ。毘舎離 の人々は楊枝と浮水を観音に供養すると、観音は「三寳 と観音の名を一心に称えよ」と教た、衆生は「生きるために他の命を殺めなければならない苦悩・貪瞋痴から免れて病魔からお救い下さい」と祈ると、観世音は 十方諸佛救護衆生神呪 を説き、この呪を調持するものは毒害疾病を清伏すると説き、毘舎離の人民の病は回復した。そのとき佛は重ねて観音を請じて『破悪業障消伏毒害陀羅尼』を説かしめた。そこには「一心に観音の名を称え陀羅尼を誦すると、諸難をまぬがれて現身には観音をおがみ、後世には佛前に生れ苦難を別れる」とある。
また人が牢獄で苦難を受けていても、三たび観音の名を称えて『大吉群六字章句救苦神呪』を誦すると苦悩は除かれ、荒野も安全で、産婦も安産し、盗難もまぬがれる、とする。最後に『灌頂吉群陀羅尼』を説き、佛は舎利弗に陀羅尼の由來とこれを受持する功徳をのべて終る。)

請觀世音菩薩消伏毒害陀羅尼呪經 東晋天竺居士竺難提(晋には言く法喜)譯
 
如是我聞。一時、佛、毘舍離菴羅樹園大林精舍重閣講堂に千二百五十の比丘といましき。皆阿羅漢にして諸漏已に盡きたり。後有を受けず、錬眞金の如し。身心澄靜にして六通無礙なり。其名を大智舍利弗・摩訶目揵連・摩訶迦葉・摩訶迦旃延・須菩提・阿樓馱・劫賓那・橋梵波提・畢陵伽婆蹉(ひつりょうがばしゃ)・薄拘羅・難陀・阿難陀・羅睺羅という。如是等の衆に知識せられるところであり、常に天龍八部の敬するところなり。復た菩薩摩訶薩二萬人と倶なりき。大智本行皆悉く成就せり。諸根を調伏し、六度を滿足せり。佛威儀を具し、心は大なること海の如し。其名を曰く、文殊師利童子・寶月童子・月光童子・寶積童子・曰藏童子・跋陀婆羅菩薩(ばったばらぼさつ・水により悟る)と。其の同類十六人と倶なりき。彌勒菩薩、如是等の菩薩摩訶薩二萬人とあり。爾時、世尊は四衆・天龍八部・人等に恭敬圍遶せらる。
時に毘舍離國の一切人民は大惡病に遭ふ。一は眼赤如血。二は兩耳出膿。三は鼻中流血。四は舌噤無聲。五は所食の物化して麁澁となる。六は識閉塞して猶し醉人のごとし。五夜叉あり、名て訖拏迦羅。面の黒きこと墨のごとし。而も五眼あり。狗牙上出して人の精氣を吸ふ。時に毘舍離大城の中に一長者あり、名を曰く月蓋。其の同類五百の長者と倶に佛所に詣で、佛所に到り已って頭面作禮し却きて一面に住し、世尊に白して言さく「此國の人民、大惡病に遭ふ。良醫耆婆は其の道術を盡すも救ふ能はざるところなり。唯だ願くは天尊、慈愍して一切を病苦から救濟し、無患を得せしめたまへ」と。爾時、世尊、長者に告げて言く「此を去ること遠からずして正に西方に主、佛世尊有り、無量壽と名く。彼に菩薩あり、觀世音及び大勢至なり。恒に大悲を以て一切を憐愍し苦厄を救濟す。汝今應當に五體投地して彼に向ひて作禮し、燒香散華し繋念し數息して心をして散ぜざらしめ、十念を經る頃に、衆生の爲の故に當に彼の佛及び二菩薩を請ぜよ」と。
是の語を説きし時、佛光中において、西方に無量壽佛并に二菩薩を見るを得る。如來神力により、佛及び菩薩倶に此の國に到り、毘舍離城門閫に往き、佛・二菩薩、諸大衆に大光明を放ち、毘舍離を照し皆な金色となせり。
爾時、毘舍離の人は即ち楊枝・淨水を具して、觀世音菩薩に授與す。大悲觀世音は一切衆生を憐愍救護する故に而も呪を説き曰く「普く一切衆生をして、是の言を作さしめよ、曰く、汝等今應當に一心に稱せよ。『南無佛・南無法・南無僧・南無觀世音菩薩摩訶薩・大悲大名稱救苦厄者』」と。此のごとく三寶を三稱し、觀世音菩薩名を三稱し、衆名香を燒し、五體投地し、西方に向ひて一心一意に氣息を定めて、苦厄を免れんがために觀世音を請し、十指掌を合して偈を説て言く、
「 願くは我苦厄を救へ 大悲もて一切を覆ひ
普く淨光明を放ち 癡暗の冥を滅除し
殺害の苦・煩惱及び衆病を免れん為に
必ず我が所に來至し、我に大安樂を施したまへ
我今、救厄者の名を聞き稽首して禮す。
我今、自ら世間の慈悲父に歸依す
唯だ願くは必定して來り、我が三毒の苦を免じ
我に今世の樂を施し 及び大涅槃を與へたまへ」と。
(そして観世音は)佛に白して言さく、「世尊。如是の神呪は必定して吉祥なり。乃ち是れ、過去現在未來の十方諸佛、大慈大悲陀羅尼印なり。此の呪を聞く者は衆苦永く盡き、常に安樂を得て八難を遠離す。念佛して定んで現前に見佛するを得ん。我今當に十方諸佛救護衆生神呪を説かん。
「たにやた うふに まふに とうばに たむばに たむばに ばんざあり ばんざあり しゆびてい ばんばんたらら ばーすいにたにやた いりみり ていしゆり かばり かばり くしやていとばんくしい せんだり まとうぎ らくしやらくしや さるばあさとばあさるばあばーやび すヴあーはー」(多耶咃(たにやた・即ち)嗚呼膩(うふに好喉鬼)摸呼膩(まふに癡鬼)閻婆膩(とうばに怕人鬼)耽婆膩(たむばに叛人鬼)安茶詈(ばんざあり不白鬼)般茶詈(ばんざあり白鬼)首埤帝(しゆびてい青鬼)般般茶茶囉囉(ばんばんたらら鬼母前鬼母)婆私膩多姪咃(ばーすいにたにやた如是)伊梨寐梨(いりみり去鬼)提梨首梨(ていしゆり叛人鬼)加波梨(かばり戴髑髏鬼)佉鞮端耆(くしやていとばんくしい食兒鬼)旃陀梨(せんだり就人鬼)摩蹬耆(まとうぎ師子頭鬼魔王鬼)勒叉勒叉(らくしやらくしや守護一切衆生)薩婆薩埵薩婆婆耶埤(さるばあさとばあさるばあばーやび・一切可鬼)沙訶(すヴあーはー)多茶咃伽帝伽帝膩伽帝(たにやた がていがていにがてい已去也)修留毘修留毘(しゆりびしゆりび去莫來莫來也)勒叉勒叉(らくしやらくしや守護)薩婆婆耶埤沙訶(さるヴあばーやびすヴあーはー))
(すなわち、好喉鬼・癡鬼・怕人鬼・叛人鬼・不白鬼・白鬼・青鬼・鬼母前鬼母・去鬼・叛人鬼・戴髑髏鬼・食兒鬼・就人鬼・師子頭鬼魔王鬼、一切衆生を守護せよ。去れ、既に去り来ること無し、一切衆生を守護せよ。来るな。)



佛に白して言さく「世尊、如此の神呪は乃是十方三世無量諸佛の宣する所の説なり。此呪を誦持する者は常に諸佛諸大菩薩のために護持せらる所となり怖畏刀杖毒害及び與の疾病を免離し無患を得しむ」と。是の語を説く時、毘舍離の人は平復すること本ごとし。爾時、世尊、衆生を憐愍し一切を覆護し重ねて觀世音菩薩が「消伏毒害陀羅尼呪」を説くことを請ふ。爾時、觀世音菩薩は大悲熏心し佛神力を承けて、「破惡業障消伏毒害陀羅尼呪」を説く
「南無佛陀 南無達摩 南無僧伽 南無
觀世音 菩提薩埵摩訶薩埵 大慈大悲 唯だ願くは我を愍み苦悩を救護したまへ。 亦た一切怖畏の衆生を救ひ、大護を得せしめまたへ。
たにやただふに まふに とうばに たむばにあばしい まふに ばんざあり ばんざあり しゆびてい ばんざあらばさに しゆるしゆる ばんざあり どうるどうる ばんざあり しゅしゅるる ぶあんざあり どうどうぶぶ ばんざあらばさにすいんくしい てい いんくしい さるばあばやがと さるばだるまさたが あばや びぢや すぶあーはー 
(多姪咃陀呼膩(たにやただふに・すなわち大鬼)摸呼膩(まふに水鬼)閻婆膩躭婆膩阿婆凞(とうばに たむばにあばしい人嗔鬼)摸呼膩(まふに光鬼)安茶梨(ばんざあり花鬼)般茶梨(ばんざあり白鬼)輸鞞帝(しゆびてい極白鬼)般茶囉婆私膩休休樓樓(ばんざあらばさに しゆるしゆる三頭鬼)安茶梨兜兜樓樓(ばんざあり どうるどうる三頭兒鬼)般茶梨(ばんざあり母黒兒白鬼)周周樓樓(しゅしゅるる好偸人小兒山中住鬼)膩槃茶梨(ぶあんざあり出白鬼)豆豆富富(どうどうぶぶ豆豆は欲便去鬼、富富は不更來鬼)般茶囉婆私膩矧墀(ばんざあらばさにすいんくしい殯資反名億鬼)跈墀(てい乃軫反名不億鬼)膩跈墀(いんくしい最憶鬼)薩婆阿婆耶羯多薩婆涅婆婆陀伽(さるばあばやがと さるばだるまさたが 莫著疑人)阿婆耶(あばや莫作鬼)卑離陀(びぢや餓鬼)曾娑訶(すぶあーはー莫來㥯去))。
(すなわち、大鬼・水鬼・人嗔鬼・光鬼・花鬼・極白鬼・三頭鬼・母黒兒白鬼・好偸人小兒山中住鬼・出白鬼、去れ、再度来るな、これらの鬼よ、一切衆生に取りつき惑わすなかれ、鬼となすなかれ、餓鬼よ、去ってまた来ること莫れ。)





一切怖畏・一切毒害・一切惡鬼虎狼師子は此呪を聞く時、口は即ち閉塞し害を為すこと能はず。梵行を破し十悪を作す人も此呪を聞く時、糞穢を蕩除し還って清淨を得る。設へ業障濁惡不善あれども觀世音菩薩を稱へ、此の呪を誦持せば、即ち業障を破し現前に仏を見ん」。
佛阿難に告げたまはく「若し四部の弟子(比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷)ありて、觀世音菩薩名を受持し消伏毒害陀羅尼を誦念し、此呪を行ずる者は身は常に無患、心亦無病なり。設使へ大火四面從り來り己身を焚燒すれども、此呪を誦持するが故に龍王降雨し即得解脱す。たとへ身節節疼痛すれども一心に觀世音菩薩名號を稱へ、此呪を三誦せば即得除愈す。設へ復た飢饉・王難・惡獸盜賊・道路に迷ひ・牢獄に繋閉され杻械枷鎖五繋縛被され、大海に入り黒風に水色之山迴波し、夜叉羅刹の難、毒藥刀劍、當に刑戮さるに臨むなど過去の業縁が衆惡を現造し、是の因縁を以て一切苦・極大怖畏を受けれども、應當に一心に觀世音菩薩名號を稱し并びに此呪を誦すること一遍至七遍せば
毒害を消伏し、惡業惡行不善惡聚は火が薪を焚くがごとく永く盡き餘すことなし。是の因縁を以て此觀世音菩薩所説の神呪を名て施一切衆生甘露妙藥となす。病畏無き、横死畏なき、被繋縛畏なき、貪欲嗔恚愚癡三毒等畏なきことを得る。是故に此の娑婆世界の皆な觀世音菩薩を號して施無畏者となす。此の陀羅尼灌頂章句の無上梵行は畢定して吉祥大功徳海なり。衆生にして聞く者は大安樂を獲る。應當に闇誦すべし。若し
之を誦せんと欲せば應當に持齋せよ。不飮酒・不噉肉にして灰を以て塗身し澡浴清淨なれ。興渠(あぎ、ウイキョウの仲間)五辛を食せず。能く熏ずる物は悉く之を食せず。婦女穢汚には皆な悉く往かず。常に十方佛及七佛世尊を念じ一心に觀世音菩薩を稱し此呪を誦持せば、現身に觀音菩薩を見ることを得て一切善願皆得成就し、後に佛前に生まれ長く苦と別る。佛、阿難に告げたまはく「王舍大城に一女人あり。惡鬼は名を旃陀利という。彼の鬼は晝夜丈夫形となりて來りて此女を嬈る(まとわりつく)。鬼の精を身に著け五百鬼子を生む。汝是の事を憶ふや不や。我、爾時において此の女人を教えて觀世音菩薩を稱せしめ善心相續して善境界に入らしむ。阿難、當に知るべし、此菩薩の威神の力のごときは惡鬼を消伏し、我身の無比の色像を見るを得せしむ。我、爾時に於いて一一の毛孔に寶蓮華を現す。無數の化佛は異口同音に大悲施無畏者と稱讃し、女をして受持讀誦通利せしむ。此の呪の功徳は三障を永盡し三界の獄火を免れ衆苦を受けず、四百四病は一時に不起ならしむ。設へ衆生ありて陣に入り鬪戰し當に被害に臨んでも、此の呪を誦念し大悲觀世音菩薩名を稱せば、鷹隼の飛ぶがごとく即得解脱す。若し衆生ありて大苦惱を受け、囹圄に閉在され杻械枷鎖され及び諸刑罰一日乃至十日一月乃至五月せんに、應當に心を清めて念を一處に係け、觀世音菩薩を稱へ歸依三寶し我名を三稱し大吉祥六字章句救苦神呪を誦すべし
而して呪を説いて曰く
たにやたばんだり ヴあんざあり けーゆり つあんだり しやんだり どうえーばた やしやばた
ぶらにくり なんだり ばくしやり あろみ ばーくり まーくり どうびり そわか
多姪咃 安陀詈 般茶詈 枳由詈(たにやたばんだり ヴあんざあり けーゆり著瓔珞)鬼檀陀詈(つあんだり捉鐵捧鬼)羶陀詈(しやんだり捉釿鬼)底耶婆陀(どうえーばた人光鬼)耶婆陀(やしやばた聞鬼)頗羅膩祇(ぶらにくり長出齒鬼)難多詈(なんだり大身鬼)婆伽詈(ばくしやり大面鬼)阿盧禰(あろみ閉目鬼)薄鳩詈(ばーくり著鍾鬼此鬼兩耳著大鍾)摸鳩隷(まーくり披頭鬼)兜毘隷( どうびり住石窟鬼)曾娑呵(そわか)」(すなわち、白鬼不白鬼著瓔珞鬼捉鐵捧鬼捉釿鬼人光鬼聞鬼長出齒鬼大身鬼大面鬼閉目鬼著鍾鬼披頭鬼住石窟鬼よ。)

    

爾時世尊、是の神呪を説き已り阿難に告げて言はく「若し善男子善女人四部の弟子、觀世音菩薩名號を聞くを得并びに六字章句を受持讀誦し、若し曠野を行きて道徑を迷失すとも此の呪を誦する故に、觀世音菩薩は大悲熏心して化して人像となり其の道路を示し安隱を得しむ。若し當に飢渇せば化して泉井を作り果蓏飮食して飽滿を得しむ。設へ復た人ありて大禍に遇ひ國土妻子財産を亡失し怨憎と會ふとも、觀世音菩薩の名號を稱し此の呪を誦念し數息に念をかけ意を分散することなく七七日を經ば、時に大悲者は化して天像及び大力鬼神王像となり本土に接還して安隱を得せしむ。若し復た人ありて海に入りて寶を採り、空山曠野に虎・狼・師子・毒虫・蝮蝎・夜叉・羅刹・拘槃茶及諸惡鬼噉精氣者に逢値すとも、觀世音菩薩の名號を三稱し及び此の呪を誦せば即得解脱す。若し婦人生産難者ありて當に命終に臨むとき、觀世音菩薩の名號を三稱し并びに此の呪を誦持せば即得解脱す。大惡賊の其財物を盜まんとするに遇へば、觀世音菩薩の名號を三稱し此の呪を誦持せば、賊は即ち慈心を道に復して去る。
阿難よ當に知るべし。此の如きの菩薩及是の神呪は畢定吉祥なり。常に能く一切毒害を消伏して眞實不虚なり。普く三界一切衆生に施して怖畏なからしむ。大擁護を作し今世に受樂し後世の生處に見佛聞法し速得解脱せしむ。此の呪の威神は巍巍無量なり。
能く衆生をして地獄苦・餓鬼苦・畜生苦・阿修羅苦及八難苦を免れしむこと、水が火を滅して永盡無餘ならしむるがごとし。阿難よ當に知れ、若し觀世音菩薩名并びに此の呪を受持するものは、大善利を獲、毒害を消伏し、今世後世の不吉祥事は永盡無餘にして、
持戒・精進・念定・總持は皆な悉く具足す。
阿難よ當に知れ、若し此六字章句救苦醫王無上神呪を聞くもの有りて、觀世音菩薩大悲名字を稱せば罪垢消除し即ち現身に八十億諸佛皆來りて授手するを見るを得る。大悲施無畏者功徳神力并びに六字章句を説きて、佛を見るを以ての故に陀羅尼を施すことを忘ることなきを得ん。
爾時、世尊は而も偈を説きて言はく
「 大悲大名稱の 吉祥安樂の人、
恒に吉祥句を説き極苦者を救濟す
衆生若し名を聞かば 離苦し得解脱す
亦た地獄に遊戲し大悲代受苦す
或は畜生中に處して畜生形を化作し
教ふるに大智慧を以てし 無上心を發せしむ
或は阿修羅に處りて 軟言して心を調伏し
憍慢の習を除かしめ 疾く無爲の岸に至らしむ
現身に餓鬼と作らば手に香色乳を出し
飢渇逼切の者に施して飽滿せしむ
大慈大悲心により 五道に遊戲し
恒に善集慧を以って 普く一切衆に教ゆ
無上勝方便は 生死の苦を離れしめ
常に安樂の處を得しめ 大涅槃岸に至らしむ」と。
爾時、世尊は是の語を説き已りて阿難に告げて言はく「是の六字章句は畢定、吉祥にして眞實不虚なり。若し聞く者あらば大善利を獲、無量功徳を得ん」と。是の語を説き已りて、王舍大城に一比丘あり。名を優波斯那(うばしな・十大弟子のひとり阿説示アッサジのこと)といふ。精進勇猛にして勤行難行苦行すること頭然を救うがごとし。寒林中に無央數大衆に圍繞されており、自ら説くに、「往昔、諸惡行を作し殺生すること無量なり。觀世音菩薩の六字章句を聞き正念に思惟し、觀心し心脈に一處を想はしめば、 觀世音菩薩を見、即得解脱し阿羅漢を成ず。云何んが當に觀世音菩薩及十方佛を見るを得んや。若し見るを得んと欲せば、端身正心にして心をして不動ならしめ心氣相續し、左手を以て右手上に置き舌をあげて腭に向い、息をして調勻ならしめ、氣をして不麁不細ならしめ安祥にして、徐數して一より十に至り息念を成就せよ。意を分散することなく氣を麁ならしめず。亦た外向せず不澁不滑ならしむこと嬰兒の飮乳のごとく之を吸氣せよ。不青不白にして調和し中を得て、心端の四十脈より下一中脈を取り、氣をして中に従はしめ、安隱に十四脈中に至るを得て、大脈より生じて舌下に至り、復た舌脈より出でて舌端に至り、不青不白不黄不黒なること、琉璃器の正に長さ八寸の如くにして、鼻端に至り、心根に還入して心をして明淨ならしめよ」と。
佛、諸比丘に告げたまはく「此大精進勇猛寶憧六字章句は毒害を消伏し大悲功徳あり、觀世音菩薩、此の數息を以て、心定力の故に水流をはしらせる如く、疾疾として觀世音菩薩及び十方佛を見るを得ん」と。
佛、諸比丘に告げたまはく「汝等善聽せよ。甘露無上法味を服せんと欲せば、諸比丘已に出家するを得たるが如く、當に自ら身を攝(おさめ)て威儀を壞さず、端坐正受して外に意を向けることなく、苦空無常敗壞不久磨滅を観じ、五門禪を修せよ。當に自ら頭より足に至る一一の節間を觀身せよ。皆念を係けて停住不散ならしめ、衆節を諦觀すること芭蕉樹の内外倶に空なるがごとし。當に知るべし色受想行識も亦復た如是なり」と。
佛、是の語を説く時、尊者舍利弗は寒林中に在りて樹下に還坐す。佛意を已に解して端坐正受し三昧に入りて身は眞金色なり。無數人の見る者をして歡喜せしめ菩提心を発せしむ。時に優波斯那(うばしな・十大弟子の一人阿説示(アッサジ)のこと)は即ち座より起ち尊者舍利弗の所に至り、頭面著地接足作禮し、尊者に白して言さく「向者、如來、讃歎數息す。是の因縁を以て大善利を獲る。云何が數息なるや、唯願くは尊者、我が爲に解説せよ。眼の眼識と色と相ひ應ずるは云何んが攝住するや。耳の耳識の聲と相ひ應ずるは云何んが攝住するや。鼻の鼻識と香と相ひ應ずるは云何んが攝住するや。舌の舌識と味と相ひ應ずるは云何んが攝住するや。
意の意識と攀縁と相ひ應ずるは云何んが攝住するや。諸顛倒想の顛倒と相ひ應ずるは云何んが攝住するや。色聲香味觸の細滑と相ひ應ずるは云何んが攝住するや。而して此の識賊は猴走の如し。六根を遊戲して諸法に遍縁するは云何んが攝住するや」。
時に舍利弗、優波斯那に告ぐ「汝今當に觀ずべし、地大の地は堅性無く、水大の水は性不住、風大の風は性無礙なりと。顛倒により火大に火性ありとするは實ならず。假因縁により生ず。色受想行識の一一の性相は水火風等と同じ。皆悉く如實之際に入る」。
時に優波斯那、是の語を聞き已りて、身は水火の四大定を得たるがごとし。五陰は空にして無所有なりと通達す。諸結賊を殺し豁然として意解す。阿羅漢を得て身中より出火し即ち自ら身を砕きて般涅槃に入る。時に舍利弗は其舍利を収め上に起塔を已りぬ。佛のために作禮して白佛言「世尊、佛は禪定第一の甘露、無上法味なり、と説きたまふ。若し服する者あらば身は琉璃の如くにして毛孔に佛を見、無明・行乃至老死を観じ、一一の性相は皆な悉く不實にして空谷の響の如く、芭蕉樹の無堅實なるが如く、熱時焔の如く、野馬行の如く、乾闥婆城の如く、水上の泡の如く、幻の如く、化の如く、露の如く、電の如しと観ず。一一の諦觀・十二因縁を観ずれば縁覺道を成じ、或は寂定琉璃三味に入り、見佛無數にして無上心を発し童眞行を修し不退轉に住す」。
佛、舍利弗に告げたまはく「優波斯那の如きは我是の大悲章句數息定法を説くを聞き、無數億洞然之惡を破し、阿羅漢と成り戒定智解脱知見を具し、身に水火を出し碎身滅度し、無數人をして大善心を発せしむ。舍利弗よ、當に知るべし、若し善男子善女人、觀世音菩薩大悲名號及び消伏毒害六字章句を聞くを得て、數息し念を淨行之法に係ければ、無數劫所造の惡業を除し、惡業障を破し、現身に無量無邊諸佛を得見し、妙法の隨意無礙を説くを聞き、三種清淨三菩提心を発す。若し宿世の罪業因縁及び現に所造の極重惡行あらば、夢中に得見せる觀世音菩薩、大猛風の重雲を吹くがごとく皆悉く四散し、重罪惡業を離れることを得諸佛前に生ぜしむ」。
佛是の語を説き已りて舍利弗に告げたまはく「我今此の觀世音菩薩名號消伏毒害無上章句を受持せんがために偈を説きて讃歎す。
「 我、提頭頼吒(だいずらた持国天のこと)等に勅して經を受持するものを慈心擁護せしむ
大悲名號を聞く人をして 譬へば天子の法臣を護るがごとし
我、海龍伊羅鉢(伊羅鉢竜王)に勅して 經を受持するものを慈心擁護すること
眼目を護るが如く己子を愛するが如く 晝夜六時に遠離せざらしむ。
我、閻婆羅刹子(閻婆とは無間地獄の十六小地獄の一つ「閻婆叵度処(えんばはどしょ)」に住むという、象のように巨大な火を吹く怪鳥)及び無數毒龍及龍女に勅して經を受持するものを慈心擁護すること
愛頂腦を愛する如く不敢觸ならしむべし。

我、毘留勒迦王(増長天)に勅して 持經者を慈心擁護すること母の子を愛して心無厭、晝夜擁護して行住倶にするが如くならしめん。
我、難陀・跋難陀・娑伽羅王・優波陀(以上いずれも八大竜王)に勅して 
持經者を慈心擁護し恭敬供養接足禮すること
譬へば諸天の帝釋を奉ずるが如く 亦た孝子の父母を敬するがごとし。
猶ほ貧人の財寶を護るが如く盲に須眼及正導するがごとし
我、一切諸鬼神・小龍・毒蛇・毒害獸に勅して
一切惡人・惡口の者の此呪に違逆し不善を起さば
現身に白癩膿血が流れ 後に地獄に墮し長夜に苦しむも
是の故に應當に慈心をもって灌頂句を受持讀誦せば
地獄は清淨にして蓮華の如く 餓鬼は破碎して八難無く
後生に佛前にて三昧に入り 畢定して當に不退轉を得
普く一切に大安樂を施し諸衆生に教て十地を修せしめん
我過去無數佛より、是の消伏毒害呪を聞き
三障を消除して諸惡なし 五眼を具足して菩提を成ず
永く三界を父母となり其に安樂を施して止息を得しむ
若し我名號を聞く者、 亦た大悲觀世音を聞き
此呪を誦持せば諸惡を離れ地獄及畜生に墮せず
蓮華より化生して父母となる 心は淨く柔軟無塵垢にして
必ず無上大慧明を聞き 心定して地の如く動くべからず
一切佛出世して 明照すること日月の如し
身に大智光を出して 紫金山を燒くがごとし
三十二相八十好を流出すること
譬ば須彌山の如し 大海に映顯して
衆生、名を聞く者は三惡道を永離して
無爲處常樂大涅槃に住するを得る
一切佛世に興り衆生を安樂にするが故に
異口して各各の身は金剛座に端坐し
口に五色光を出し 蓮華葉形舌は
大悲者を讃歎し師子法を調御す
護世觀世音は 畢定して毒害を消し
三毒根を淨め佛道を成じて無疑なり」。
爾時世尊此の偈を説き已って、觀世音菩薩名を受持し此の經を擁護する者の為の故に、灌頂吉祥陀羅尼を説く、而して呪を説きて曰く
たにやた うたんびり どうびり たむび ばらたむび なたしゆなた ていばた まぬや さまや
たんでい にらていし ぶらくび うり なんくり そわか

「多姪咃(たにやた) 烏耽毘詈(うたんびり住山外鬼) 兜毘詈(どうびり住山
窟鬼) 耽(たむび爛目鬼) 波羅耽(ばらたむび・食殘果鬼住一切果樹下食殘)捺吒修捺吒(なたしゆなた・好偸鬼)枳跋吒(ていばた殺魚鬼)牟那耶(まぬや出家鬼)三摩耶(さまや三昧鬼)
檀提(たんでい捉杖鬼)膩羅枳尸(にらていし好髮女鬼)婆羅鳩卑(ぶらくび住破肌鬼)烏詈(うり瓔鬼)欀瞿詈(なんくり名尾鬼)薩婆訶(そわか)」
(すなわち、住山外鬼住山窟鬼爛目鬼食殘果鬼好偸鬼殺魚鬼出家鬼三昧鬼捉杖鬼好髮女鬼住破肌鬼瓔鬼尾鬼そわか)


佛、舍利弗に告げたまはく「此の如きの灌頂陀羅尼章句は畢定吉祥なり。 若し聞を得て受持讀誦するものあらば、惡業障を破して終に横死せず」。
舍利弗白佛言「世尊よ、此の神呪大吉祥句の如きは、普く一切に施し怖畏するところなからしめよ。世尊よ、往昔、何の佛所より此の句を聞くことを得るや。唯だ願くは世尊、分別解説し、未來世をして普く聞知するを得て、大安樂を獲、横死を免離し、刀杖毒藥水火盜賊の能く害する能わざるところならしめん」。
佛舍利弗につげたはく「我、過去無量佛所より、
此の句を聞くを得て受持讀誦し、即ち八千萬劫生死の罪を超越するを得。又過去八十萬劫を念ずるに、佛世尊あり、名て一切世間勝となす。十號具足す。彼の佛世尊我が為に如上の章句を演説す。我即ち數息して心をして不散ならしむれば、㸌然音解して結使を消伏し、無生法忍を得て首楞嚴三昧に住す。若し善男子
善女人、此經を聞くを得て、受持讀誦書寫解説せば、即ち無量無數阿僧祇劫生死之罪を超越するを得、毒害を消伏して禍に對はざらむ」。
佛、是の語を説きたまふ時、五百の長者子は無生法忍を得、無數の人天は阿耨多羅三藐三菩提心を發す。舍利弗・阿難等は仏に白して言さく、「世尊よ、此の觀佛三昧海、請觀世音菩薩消伏毒害陀羅尼呪は、所
至到處に一切吉祥なり。梵天王衆の愛敬する所の如し」。
佛、阿難に告げたまはく「如是如是、汝の所説の如し。若善男子善女人、此の經の首題名字を聞くを得ば、常に佛及諸菩薩を見るを得、善根を具足し、淨佛國に生ず」。此の品を説く時、八十億の天子天
女及龍鬼神は皆悉く歡喜し菩提心を発す。舍利弗・阿
難等は佛所説を聞き、禮佛して退けり。
請觀世音菩薩消伏毒害陀羅尼呪經
 
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