第一一課 世の中
捨ててみて、はじめて拾える世の中。皮肉な世の中。そのときは、もう自分で拾うのではない、寄ってたかって人が拾わせるのです。そのときは、もうたいして自分には興奮もない世の中ですが、その代り、失墜の心配もない。たいして得も取らせなければ、たいして損もさせない世の中です。
だが、そうと判ってみれば、今度はなかなか面白く眼に映る世の中。
誰かの句に、
身を捨ててまた身を掬ふ貝杓子
他力信仰(他力信仰は浄土宗、浄土真宗の信仰の仕方で、阿弥陀仏のさしのべる手〔本願〕に救われる信仰生活です)のこつをいったものであります。