「十善法語」その56

又一類のものが云。釋迦一代の經に天下国家を治る道はなきと。是も佛法を一向に知ず。近代の談議僧の著せし書などを見て。佛教の様に心得て云ふ言葉じゃ。大乗經にも。國王大臣の為には國家を治る法がある。商賈の為には財利を用る法ある。乃至女人の為に其夫に事（つかふ）る道があるじゃ。勿論佛法は出離生死を主とする故に。世間の法は略説じゃ。出世間無漏道は廣説じゃ。廣略の差はあれども。萬國に推通じ。古今に推通じ。世間出世間に推通じて。道とすべき道は。聖教の中に備てあることじゃ。