真言教誠義・・23
密蔵沙門周海
六には般若波羅蜜
般若は智慧にして愚痴の無明を退治す。智は無明煩悩を断ずる体なり。慧は智の上の善と悪とを簡えらぶ功能なり。これ慧が善と悪とを簡えらぶがゆえによく悪しき煩悩の心を断ずるを智というなり。・・真実の智とは顕教でいえば諸法の実相に冥会する正体智なり。実相とは一心無明の真如の理なり。相は自相なり。真如の自相は真実の自相にして有為の諸法の色心並びに言語の及ばざると性徳の法なれば実相といふなり。顕教の菩薩は三大阿僧祇の自利利他の修行成満の第十地の等覚の位にて,第十一位の妙覚の位(注)に始めて諸法の実相を覚ときの知恵を般若の慧というなり。
(注『華厳経』及び『菩薩瓔珞本業經』では、菩薩の境涯、あるいは修行の階位を、上から妙覚、等覚、十地、十廻向、十行、十住、十信の52の位に分ける。上から
妙覚(みょうかく)
菩薩修行の階位である52位の最高の位で、等覚位の菩薩が、さらに一品(いっぽん)の無明を断じて、この位に入る。なお一切の煩悩を断じ尽くした位で、仏・如来と同一視される。
等覚(とうかく)
菩薩修行の階位である52位の中、上から二番目であり菩薩の極位で、その智徳が略万徳円満の仏、妙覚と等しくなったという意味で等覚という。
十地(じっち、じゅうぢ)
菩薩修行の階位である52位の中、第41~50位まで。上から法雲・善想・不動・遠行・現前・難勝・焔光・発光・離垢・歓喜の10位。仏智を生成し、よく住持して動かず、あらゆる衆生を荷負し教下利益することが、大地が万物を載せ、これを潤益するからに似ているから「地」と名づく。
十廻向(じゅうえこう)
菩薩修行の位階である52位の中、第31~40位まで。上から入法界無量廻向・無縛無著解脱廻向・真如相廻向・等随順一切衆生廻向・随順一切堅固善根廻向・無尽功徳蔵廻向・至一切処廻向・等一切諸仏廻向・不壊一切廻向・救護衆生離衆生相廻向の10位。下の十行の修行を終わって更に今迄に修した自利・利他のあらゆる行を、一切衆生の為に廻施すると共に、この功徳を以って仏果に振り向けて、悟境に到達せんとする位。
十行(じゅうぎょう)
菩薩修行の位階である52位の中、下から数えて第21~30位まで。上から真実・善法・尊重・無著・善現・離癡乱行・無尽・無瞋根・饒益・観喜の10位。菩薩が、下の十住位の終に仏子たる印可を得た後、更に進んで利他の修行を完うせん為に衆生を済度することに努める位。布施・持戒・忍辱・精進・禅定・方便・願・力・智の十波羅密のこと。
十住(じゅうじゅう)
菩薩修行の位階である52位の中、第11~20位まで。上から灌頂・法王子・童真・不退・正信・具足方便・生貴・修行・治地・発心の10位。十信位を経て心が真諦(しんたい)の理に安住する、という意味で「住」と名づく。あるいは菩薩の十地を十住という説もある。
十信(じゅうしん)
菩薩修行の位階である52位の中、第1~10位まで。上から願心・戒心・廻向心・不退心・定心・慧心・精進心・念心・信心の10位。仏の教法を信じて疑心のない位。
密蔵沙門周海
六には般若波羅蜜
般若は智慧にして愚痴の無明を退治す。智は無明煩悩を断ずる体なり。慧は智の上の善と悪とを簡えらぶ功能なり。これ慧が善と悪とを簡えらぶがゆえによく悪しき煩悩の心を断ずるを智というなり。・・真実の智とは顕教でいえば諸法の実相に冥会する正体智なり。実相とは一心無明の真如の理なり。相は自相なり。真如の自相は真実の自相にして有為の諸法の色心並びに言語の及ばざると性徳の法なれば実相といふなり。顕教の菩薩は三大阿僧祇の自利利他の修行成満の第十地の等覚の位にて,第十一位の妙覚の位(注)に始めて諸法の実相を覚ときの知恵を般若の慧というなり。
(注『華厳経』及び『菩薩瓔珞本業經』では、菩薩の境涯、あるいは修行の階位を、上から妙覚、等覚、十地、十廻向、十行、十住、十信の52の位に分ける。上から
妙覚(みょうかく)
菩薩修行の階位である52位の最高の位で、等覚位の菩薩が、さらに一品(いっぽん)の無明を断じて、この位に入る。なお一切の煩悩を断じ尽くした位で、仏・如来と同一視される。
等覚(とうかく)
菩薩修行の階位である52位の中、上から二番目であり菩薩の極位で、その智徳が略万徳円満の仏、妙覚と等しくなったという意味で等覚という。
十地(じっち、じゅうぢ)
菩薩修行の階位である52位の中、第41~50位まで。上から法雲・善想・不動・遠行・現前・難勝・焔光・発光・離垢・歓喜の10位。仏智を生成し、よく住持して動かず、あらゆる衆生を荷負し教下利益することが、大地が万物を載せ、これを潤益するからに似ているから「地」と名づく。
十廻向(じゅうえこう)
菩薩修行の位階である52位の中、第31~40位まで。上から入法界無量廻向・無縛無著解脱廻向・真如相廻向・等随順一切衆生廻向・随順一切堅固善根廻向・無尽功徳蔵廻向・至一切処廻向・等一切諸仏廻向・不壊一切廻向・救護衆生離衆生相廻向の10位。下の十行の修行を終わって更に今迄に修した自利・利他のあらゆる行を、一切衆生の為に廻施すると共に、この功徳を以って仏果に振り向けて、悟境に到達せんとする位。
十行(じゅうぎょう)
菩薩修行の位階である52位の中、下から数えて第21~30位まで。上から真実・善法・尊重・無著・善現・離癡乱行・無尽・無瞋根・饒益・観喜の10位。菩薩が、下の十住位の終に仏子たる印可を得た後、更に進んで利他の修行を完うせん為に衆生を済度することに努める位。布施・持戒・忍辱・精進・禅定・方便・願・力・智の十波羅密のこと。
十住(じゅうじゅう)
菩薩修行の位階である52位の中、第11~20位まで。上から灌頂・法王子・童真・不退・正信・具足方便・生貴・修行・治地・発心の10位。十信位を経て心が真諦(しんたい)の理に安住する、という意味で「住」と名づく。あるいは菩薩の十地を十住という説もある。
十信(じゅうしん)
菩薩修行の位階である52位の中、第1~10位まで。上から願心・戒心・廻向心・不退心・定心・慧心・精進心・念心・信心の10位。仏の教法を信じて疑心のない位。