福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

内田さんから紀行文「高野山から信貴山へ」がとどきました。その1

2010-10-21 | 開催報告/巡礼記録
          高野山から信貴山へ               
 十月一日、東京駅から新幹線で新大阪へ、地下鉄御堂筋線でなんばへ。なんばから南海高野線に乗る。しばらくすると車窓から、黄金色の稲穂の波、収穫する人々、収穫を終えた田、色づき始めた柿やみかん、風に揺れる薄や萩、秋桜や彼岸花が咲き、電車の脇を流れる小川、雑木林、遠くに見える山々・・懐かしい里山の風景が目に入ってくる。一時間半ほどで極楽橋へ、そこからケーブルに乗り継いで高野山駅に着く。海抜千メートルあり、風がひんやり感じる。東京を発って五時間ほどだ。先に着いて待っていてくれる人もいる。

 高野山は八一九年、弘法大師空海が開山した。総本山金剛峯寺を含む一帯はユネスコ世界文化遺産に指定されており、一二〇〇年の歴史を持つ。昨年五月に来た時は、まばゆいばかりの新緑だったが、十月一日は、今年の猛暑もさすがに和らぎ、木々が秋支度をし、濃緑の中に少し紅を加えて迎えてくれた。

境内を歩き、早い夕食を終え、弘法大師御廟の前の燈籠堂で行われる夜七時からの「奥之院萬燈会」に向かう。杉木立の道に灯りがともされ、燈籠堂の中には無数の灯火がある。「萬燈会」はともされた灯りにこめられた願いが叶うように、僧侶達によって供養される夜の行事である。堂の左右で護摩が焚かれ、明かりがゆらめく。きらびやかな袈裟の僧侶、そして黒い袈裟を着た高野山専修学院の何十人もの若い男子生徒達が声明を唱えながら堂内を歩き続ける。高く、低く、祈りをこめた力強い声明の声が体の芯に響いてくる。思わず合掌する。現代の混沌とした社会の中で、世界の平和を、日本の行く道を、個人の幸せを祈らずにはいられない。

 宿坊に泊まり、二日朝六時から勤行。朝八時から、金剛峯寺本堂で行われる「結縁灌頂」に向かう。一緒に行った人達の一人が夜三時から本堂前で並んでいてくれる。私はまだ夢の中にいる時間だ。本当に感謝でいっぱいだ。「結縁灌頂」は仏様と縁を結ぶために、智慧の水を頭の頂から注いでいただく儀式である。わが家は曹洞宗だが、どんな宗派でも受け入れてくれるという。春の胎蔵界結縁灌頂では客観世界の仏様と、秋の金剛界結縁灌頂では主観世界の仏様と縁を結ぶことになるといわれている。
 本堂にはいり、受者は両目を覆われ、指先に花を授けられ、曼荼羅へと導かれ、その花を曼荼羅に投じて諸仏と縁を結ぶ。周囲は暗く両目が覆われているのに不安はなく、暖かい空気に包まれているような心地よさがある。キリスト教でも、洗礼の時、頭上に聖水を注ぐ。異なる宗教が同じ儀式を持っているのは不思議な気がする。

 やがて外へ出る。暗闇から出ると日の光が目にまぶしい。堂内に入った時より木々は緑を増し、日の光が輝いて見える。基角の句に『灌頂の闇より出でて桜かな』があるが、闇から出て見た桜は、普段見るものより何倍も美しかっただろうと実感できる。
 奥之院を回り、昼食後、再びケーブルで高野山を下り、南海高野線で新今宮へ、大和寺快速で王寺へ(続)
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