福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

人となる道、略語(慈雲尊者)

2024-12-02 | 諸経

人となる道、略語(慈雲尊者)
蒼々たる長天、物あり理あり。流行して道となり、うけて命となる。雲ゆき雨ほどこして品物形をしく。羽あるもの空中に翔り、蹄なるもの林藪に走る。その中人の霊たる、天地にまじはりて三才(天・地・人)と称す。拡て是を充す。一木一草も小天地なり。蠉飛蝡動(けんぴぜんどう、這うもの、体をくねらせうごめくもの)も一天地なり。相視て逆らふことなき、恩、禽獣に及び徳、草木に被る。世に処して無病長寿の楽をたのしむ。此れによるなり。

山川区別して國に封彊あり。物類分布して利に厚薄あり。或は龍鬚をよじ、驥尾に託して、大小有土の君となる。あるひは夏、畔に汗を適して風雪に利を逐ふ。或は口を才に糊し身を力に育ふ。大抵勤夫三世よく門戸を起す。 この中通ずべきを通ず。海外もわが用となる。限るべきに限る。右を左にうつさず。四民すでに庶あり。曰くとまし曰く教ゆ。聚歛(じゅうかん、重税のこと)の害を詳にし、畜積の陋に達す。富天地に斉く、生々のところ受用不尽なる、これによるなり。
道は古今たがはず。首かみに位し、足しもに居す。前後別在り、左右ところ定まる。上を敬ふ、阿諛ならず。下を恵む、姑息ならず。隣里睦して朋党にあらず。夫婦和合して愛に溺れず。家にして家とととのひ、國にしてくに治まる。是より上をいはば色聲の外に遊んでよく禮樂の種となる。人倫を超過して則を萬世に垂るる也。
真実語あり。教えを待たずして子弟孝順し、命いまだ下らざるに庶民敦きに帰す。必ずや訟なからしめんか。一言天下の法となる。綺飾は真を傷ふ。粗悪は事を敗る。徳質直に基し。功和合に成す。殊方(異なる者)も慕ひ禽獣も懐く。此の験なり。

房舎その制度を過る、必ず禍を招く。衣服の分、刀剣の飾、車馬の装、みな準じしるべし。智勇世を掩ふ、容貌衆に異なる、名称の広く達する、才能の他に超る、等その慎を忘るべからず。その徳ありてその位にをる、その功有りて其禄をはむ、譲を受けて其の家に主たる、幸に遇うてその財に富む、若し傲る心あれば、これもなきにしかず。今日にして今日足る、更に来日を期せず、此の処にして此の処たる、別に外を求めず、生涯ここに全し、よく三界の主となる。
この人のこの世に在る、業は報を知らず。報は業をしらず。此の知らざるところに道存して滞らず、塞がらず。此の中に楽あり、間断なく欠失なし。謬れば憂ふ。道ここに没す。迷へば瞋る、樂ここに失す。没せず失せず、浩然として天地の間に俯仰す。弥勒大師云く、山是山、水是水。
周の内史過云へり、國まさに興んとするとき明神くだる、その亡びんとする時、明神降る。虞夏商周みなしかりと。是れ支那歴代の鑑なり。(「春秋左氏伝」に「荘公の三十二年(紀元前662)、秋七月―神、莘(シン)に降るあり。これ、何の故ぞや。内史過、答えて曰く、国のまさに興らんとすれば、明神これに降り、その徳を監(み)るなり。まさに亡びんとすれば、神またこれに降り、その悪を観るなり。神を得て以て興るあり、また以て亡ぶあり。虞・夏・商・周、みなこれあり。」とある。
我が神道はさらに大なりとす。狭霧のはじめ、浄橋のいにしへ、実に万邦の興起を徴す。その中、この國東海に居して天孫戻り止る。高千穂の宝鉾今に現存す。皇祚天壌と共に尽くることなき、文武諸官神裔相襲ふ。彼支那諸蛮の比すべきならず。此に依って謂ふ、神道元より正知見の儀なり。わが國全く不邪見の式なり。ともにともに道を言ふべし。物外の理なく、理外の物なし。理をそなへて物位に居す。一々塵中に法界を見る。物に託して其の理全たければ、諸仏の内証智は今日凡愚の起行に遠からず。それ唯考か。考は萬行の本也。経に云く、父母師僧三宝に孝順せよ。孝順は至道の法なりと。(梵網經に「孝順父母師僧三寶孝順至道之法」)又云く、もし人父母に考なれば帝釈天王常に汝が家に在す。大梵天王常に汝が家に在す。つねに汝が家に在す、と。此の人天命に順じて天福を享す。福を享して其のこころ邪曲ならず。是を直心とす。経に云く、直心これ菩薩の道場(維摩詰所説經 「我問道場者何所是答曰直心是道場」)。十善これ菩薩の道場也と。(維摩詰所説經「・・四無量心是菩薩淨土。菩薩成佛時成就慈悲喜捨
衆生來生其國。四攝法是菩薩淨土。菩薩成佛時解脱所攝衆生來生其國。方便是菩薩
淨土。菩薩成佛時於一切法方便無礙衆生來生其國。三十七道品是菩薩淨土。菩薩成
佛時念處正勤神足根力覺道衆生來生其國。迴向心是菩薩淨土。菩薩成佛時得一切
具足功徳國土。説除八難是菩薩淨土。菩薩成佛時國土無有三惡八難。自守戒行
不譏彼闕是菩薩淨土。菩薩成佛時國土無有犯禁之名。十善是菩薩淨土。菩薩成佛時
命不中夭。・・」)


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