通勤電車の中で音楽を聴いている人はすごく多い。
半分以上はiPod等で何かを聴いている。
ラッシュが激しいので、他に何もできないというのもあるだろう。
私の通勤ルートでは新聞は勿論のこと、携帯を見ることもできない。
今朝はECMのKenny Wheeler Quintetを聴いていた。
目を瞑ると、そこはラッシュの233系の車内ではなく、
ノルウェーの原野だった。
Kenny Wheeler Quintetのメンバーは
ギターがJohn Abercrombie、ピアノがJohn Taylor、
ベースがDave Holland、ドラムがPeter Erskine
そしてKenny Wheelerがフリューゲルホーンだ。
私がECM創世記から大好きなJohn Abercrombieをこよなく愛するプロギタリストがいる。
土屋秀樹、通称つっちーさんだ。
いつか「国立かろる」で大学で一緒だった岩本絵麻(ボーカル)の伴奏をやっていた人だ。
その後、メールでECMの話などをしていた。
「いいバンドで演奏しますから、ぜひ」とつっちーさんからお誘いがあり、
東中野のセロニアスへ出掛けた。
土屋秀樹(gt)、林正男(b)、海老澤幸二(dr)のトリオだった。
つっちーさんが誘ってくれた理由は、最初の1音で判った。
私が大好きなECMにも通じる、透明で研ぎ澄まされたクールなサウンドだったからだ。
そのつっちーさんのギターに、林さんも海老澤さんも、最良の組み合わせになる音を
紡ぎだしていたのだ。
正直に言って驚いた。
こんな音を出すジャズトリオが日本にも居たということを。
まったく知らなかった。というか諦めていたのだ。
誘ってもらって嬉しかった。
マンフレッド・アイヒャーに聞いてもらいたいと思うほどだ。
目を閉じて、その音を聞いていると、ここは東中野ではなく、
ノルウェーのオスロではないかと思ってしまったのだ。
このトリオでの楽曲はクールで、時としてアバンギャルドで、知的なサウンドなのだが、
林正男さんのウォームな人柄も感じられ、心地よいのであった。
とにかく良い音を出す方だ。
海老澤幸二さんのドラムは特徴的だ。
手が左利きで足が右利きということで、シンバルの位置が逆で、
左のライドシンバル、ハイハットを左手でレガートし、普通の配置にあるスネアやタムドラムを右手で叩いていく。
頭がこんがらがりそうだったが、それは私がドラムをやるからそう思うだけで、
そのサウンドにはもっと驚いた。
音の出し方が、私が最も理想と思う音だったからだ。
そして、一音一音をすごく大切にしている人である。
感動するドラマーにはお会いするのだが、完璧と思う方はなかなか居ない。
日本のジョー・アバークロンビー。
略してアバクロなのだが、フィッチではないのであしからず。
日本のゲイリー・ピーコック?
日本のジャック・ディジョネット?
それともヨン・クリステンセン?
つっちーさんのオリジナル曲は素敵だ。
小さなお子さんもいるので、キュートな曲もある。
どれも名曲だった。
録音して何回も聞きたいと思った。
端正である。
人も音も。
サウンドはクールなのに、人柄はめちゃくちゃ面白い。
カリフォルニア系。
実際、ウエストコーストで音楽を学んだ方で、
ジェフ・ベックのライブで一躍有名になったベースのタルちゃんと同級生で、
仲間なのだ。
(続く)
SONY α900、タムロンA09