SAILIN' SHOES

デジタル一眼、ライカ等でのスナップ写真や、カメラ、音楽、鉄道・車、子育ての日々雑感です。

現代オーディオ考  ネットワークオーディオ

2010-01-29 | バンド・音楽
大学時代のクラスメイトと1年ぶりに会った。
音楽が好きだった私は10代~20代の頃はオーディオにも熱を入れていたので、
そのクラスメイトにはオーディオに関して熱く語っていた。
どちらかといえば私が先生だったのだ。
その彼は今や相当なオーディオマニアになっており、会って会話する内容は、
ハイエンドオーディオの話しだ。
彼が私の先生である。

彼が熱く語るのは、昨年ぐらいから世に出始めたネットワークオーディオだ。
そもそもLINNというスコットランドのハイエンドオーディオメーカーに心酔する彼だが、
そのLINNがCDプレーヤーの製作をやめてしまったという業界では驚きの事件から
彼の話は始まった。

簡単に言えばこうだ。
CDプレーヤーは瞬時にCDのお皿からデジタル情報をピックアップしてアンプに送り込むのだが、
そのピックアップでCDの情報が全部は取り切れないし、CDがそもそもモーターで回転するもの
なので不安定要素が非常に多く、満足できるものではなかった。
安いCDプレーヤーと高級なCDプレーヤーに音の差があるのは、その不安定な要素を
解決するためのコスト差なのだ。

そこでCDの情報をあらかじめ全てハードディスク(NAS)のような保管場所にじっくりと
転送しておいて、それを取り出して鳴らせば、純粋なデータを聞けるという発想だ。
リッピングソフトを使い、100%の情報をためるまでに何回も何回もCDの中身に
アクセスして完璧なデータを作る。
作業はPCで行なえば良い。
そのデータをNASから直接LAN経由でアンプに送り込むのだ。
考えただけでも良い音がしそうである。
目から鱗だ。

「まあ、話で言っても判りにくいから実際に聴いてみてよ。驚くから。」
ということで、銀座のハイエンドオーディオの視聴室へ2人でうかがった。




私を待っていたのは、ヨーロッパの高級オーディオたちだ。
そもそも国産と違って、見た目にも美しいものだ。
あらかじめ彼が訪問を伝え、セッティングをしてもらっていたので、
目的のネットワークプレーヤーが、写真の最上段の真ん中に置かれていた。
ただの黒い箱である。
製品名はLINN Sekrit DS-Iだ。
アンプ部も内蔵しているので、これ1台であとはスピーカーと
ネット環境を構築すればよい。

しまし、あまりにも小さな弁当箱だ。
これで良い音がするわけが無いという気にもなるような小さな箱だ。

あらかじめNASに保存してある音源をPC上で操作する。
または、iPhoneや、iPod Touchからもリモコンのように操作ができるすぐれものだ。
視聴は、パット・メセニー、ビル・エバンス、レッド・ツェッペリン等で行なった。

素晴らしいスピーカーで視聴したのだから、基本的にはイイ音なはずだ。
ただ、こんな小さな箱のアンプ部で駆動できるのは別の意味で驚いた。
まずはアンプ部は素晴らしいという確認はできた。
あとはCDプレーヤー経由での音との差を確認すればよい。

写真最上段の右側にある高級CDプレーヤーで同じCDを回して比較した。
Bill Evans / Waltz For Debbyで確認した。



結果は、まずはちょっと変な気持になったのだった。
まず、まったく違う音に聴こえたので、ためらうのだ。
ハードディスクからの音のほうが明るく聴こえるからだ。
どうも音の量が違うようだ。
私はドラムをやるので、ポール・モチアンの音に耳が注目してしまうのだが、
ブラシの音の繊細さとシンバルレガートの粒立ちにかなりの差がある。
ブラシがスネアヘッドをこする音だが、まるでブラシの1本1本の音が分離して
聴こえるような錯覚までする。
シンバルレガートの音もチンチンして明るい。
分離が違う感じだ。

次にパット・メセニーを聴いた。
CDとの比較はしなかったが、クリアーで美しい。
ECM系を聴くには最適なのがよく判った。

レッド・ツェッペリンはフィジカル・グラフィティを聴いたが、
これはスピーカーの傾向が違うので迫力がわかるわけではなかったが、
Sekrit DS-Iの音(恐らくアンプ部の特性)は飛び出す感じもあり、
悪くはないだろう。






最後に、CDからではなく、ネット経由でものすごい情報量のマスター音源を入手したものを
聴いた。
交響曲だったが、いや、これにはマイッタ。
CDは帯域をカットしてあるので、主に高域がLPよりも狭いと聞くが、
マスター音源は制限無しのデジタルデータらしく、これはすごかった。
きっと、近い将来、音源はCDで買うのではなく、ネット経由でデジタルマスター音源を
買う時代が来るのだろう。
そうなった場合、ますますCDプレーヤーは不要になり、スピーカーの近くには、
アンプを内蔵した箱があるだけで、操作自体はLANか無線で行なわれるようになる。
この場合の最大のメリットは音のよさだけでなく、居間に鎮座している大型の
オーディオシステムのスペースが不要になるということだ。
我が家の居間には朗報なのかもしれない。
大型のパワーアンプ、プリアンプ、超大型で30キロ近い重量のLPプレーヤー
(ヤマハGT-2000)、これまた大型のCDプレーヤー(SONY 338ESD)が占有している。
これらを重量が70キロのラックに置いているのだ。
たとえばSekrit DS-Iならたった2.65kgの小さな箱なのだから、ラックなど不要
なのだ。

・・・という話しをママにしたら、
「でも物置が無くなるな。」と。
そう、オーディオラックの上は、いろいろなモノを置く格好のスペースになっているのだ。




家に帰ってオーディオを眺めてみる。
パワーアンプには左右の出力を示す大きな針式のメーターが付いている。
プリアンプは蓄電池駆動でBASSやTLEBLEなどの音質調整つまみがたくさん付いている。
見るだけでも美しい。
それに対して、現代の海外のハイエンドオーディオはシンプルな美しさを
追及している。
つまみは極力少なく見せている。
まして、BASSやTLEBLEで音質調整をするなどもってのほかだ。
要らぬ回路を間に入れてしまえば、音質に影響が出る。
ホントウにイイ音は原音そのものをシンプルな回路で聴くべし。ということだろう。
日本人は、メーターやスイッチやツマミはたくさんあるのが好きな人種だ。
光り物も大好きだ。
とにかく派手なメカが好きな東洋人だ。
シンプルな家具、間接照明、静かな住環境が好きなヨーロッパ人とは
かなり趣向が異なっているだろう。


私が悩むのは、そんなことだ。


しかし、イイ音だったな。


SONY α900、AF17-35mm/F2.8-4.0(D)



コメント (18)
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