子どもの頃からつげ義春は大好きで、いろいろな形で何回も読んでいる。
いろいろな出版のバリエーションがあるからだ。
今日読了したのは、近年はまとまった作品集のちくま文庫版。
星5つの最高傑作だと思う。
何回も読みたくなる傑作。
つげ義春にはいくつかのパターンがある。
戦後の風景の中での貧乏暮らしの話、温泉旅行などの鄙びた旅行日記、幻想的な小説風漫画、ユーモアのある昭和の風景・・・
この本は戦後から昭和20年代~昭和30年代を舞台にした、自叙伝的な貧乏暮らしの短編集。
すべてが自叙伝ではなく、創作も入っているようだが、基本的には経験をもとに書かれたものが多い。
戦後の焼跡からの復興期に、貧富の差が生まれて、うまく時流に乗らず、親も居るような居ないような少年期に
メッキ工場で働いたり、貸本や向けの漫画を描いたり、やみ米を売る手伝いをしたり。
木造のぼろアパートで食べるのも苦労しながら、でも何とかどっこい生きている風景が続く。
暗くて重くて沈み込む話が多いようなイメージだが、実は主人公はちゃんと青春してるようなところもあって、
非常に面白い。
絵の細かい部分にも目が離せない。
昭和40年代の初頭の頃、まだどぶ川や汚い池や、共同トイレのアパートや、駅には傷痍軍人がたくさん居たり、
未舗装の水たまりを跨ぐ板が置いてあったり、鼻水をたらしたランニングシャツの子どもが居たりする時代を
生きていたのもあって、懐かしい風景にグッとくるのである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます