長男の帰省

民主党が政権をとり、高速道路はただと言ったマニフェストを実行すれば店にとって大打撃になる。
新道島の川向こうに立派なバイパスが出来てしまうからだ。
これは困ったと思ったが時勢には逆らえない。
わざわざ尋ねてくれるような魅力を出さなければ。
そんな問題を抱えて海に蛤採りに行った。
もう採れないだろうと思ったが、見つけたときの嬉しさには他に変えがたい感動があるからだ。
一番の理由は凄く美味いからだ。
そして高価。
相棒のしげちゃんも一緒。
いつもこんなことをしててもいいのかねーと言いながら行ってたのが、一変してこれが最後かもととしげちゃんが言った。
夏が終わり、就職をすることにしたらしい。
真っ赤な夕日が海に沈み、大きな月と一番星が東に輝きだしても蛤を探していた。
帰りは月光が照らす近道を急いだ。
出かける少し前に、長男が帰ると言ってきたからだ。
蛤は採りたいし、長男が来るので出迎えないといけないと思ったりしたが、海に浸かるともう浮世の事はすべて忘れてしまう。
今度大阪に勤務する為の帰省だった。
勤めている会社が大阪に出店する為のオップニングスタッフ。
神戸はパンの本場だから良い経験が出来るねといったら、もう視察で行って食べまくってきたと話した。
そんなとこにパンを売る店を出すのは失敗しないのだろうかと聞くと、うちは菓子屋だからと言い、心配した様子も無い。
大阪の人は手ごわいぞと送る言葉にして飲み明かした。


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