大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道171

2009-01-06 19:32:35 | E,霧の狐道
 通路の音は、三回ついて一休憩だ。

“ 様子を見に行きたい気もするけど・・・。”

体は動かせなくも無い。
でも、ベッドから降りて、車椅子に乗って見に行くのは億劫だ。

「 まあ、ベッドで寝たまま様子を見るか・・・。
 それにしても、こんな夜遅くに非常識だろ。
 看護婦さんに怒られるぞォ・・・。」

音は、三回ついて休憩、三回ついて休憩、を繰り返す。

“ てんてんてん、てんてんてん、てんてんてん・・・・・。”

音は少し大きくなった。

「 少し、近付いて来たかな・・・。」

そのとき、山本爺の呟きが突然聞こえた。

「 来る・・・・。」

俺はその声に驚いた。

“ エッ、山本爺、起きていたのか!?”

俺は山本爺は熟睡しているものと思っていた。
 俺は首を少し起こし、山本爺のベッドを見た。
布団がゴソゴソ動いている。
そして、山本爺の呟きは続く。

「 来る、来る、来る、・・・わっ!」

山本爺は、急に布団を頭から被った。
音は相変わらず、三回ついて休憩、三回ついて休憩、を繰り返しながらゆっくり近付いて来る。

“ てんてんてん、てんてんてん、てんてんてん・・・・。”

 徐々に音は病室に接近して来た。
俺は首を少し右に振って通路の方を見る。
病室の扉は閉まっていた。
でも、扉の上半分に付いているスリガラスに、通路の弱い非常灯の明かりが透けて見える。

「 病室の前まで来たら、あそこに影が映る筈だ。」



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