日々の恐怖 4月10日 ドライブ
4、5年前に経験した話をする。
俺は車でドライブするのが好きなんだ。
地図も見ずに適当に走り回って、満足したら携帯電話カーナビを使って自宅に帰る。
気ままにドライブできるってんで、深夜に良く出かけていた。
その晩も適当にドライブして、じゃあ帰るかってなった。
おもむろに携帯電話を取り出して、カーナビソフトを起動。
自宅の位置は登録してあるんで、ボタン一つで自宅までのルート検索が出来る、はずだったんだけど何か様子がおかしい。
どうやらGPS信号が取れていないらしい。
周りを確認したけど、単なる住宅街で遮蔽物なんであるわけがない。
車の外に出て受信状態を確認したけれどもそれでもダメ。
しょうがないんで、携帯電話をセンターパネルに固定して出発。
適当に走っていればGPS信号を取れるところに行くだろうし、道路標識もあるだろう。
まあいっか、と軽い気持ちで走り始めた。
で、走り始めて15分、変だ。
最初は気にしていなかったんだけど、なんかおかしい。
走っているのに周りはずっと住宅街、幹線道路にぶち当たる気配もない。
普通、こういう感じの住宅街なら10分も走れば幹線道路っぽいのがあるはず。
それにさっきから対向車が一台もない。
交差点もあったが、標識のある交差点がない。
“ たまたまだよね、たまたま。
ラジオには首都圏の局が入っているし大丈夫!!”
と必死に自分に言い聞かせるけど、ヤバくないか? と警告が出る。
周りの情報を取りこぼさないようにラジオの音量をしぽって、眼を皿のようにして走ってた。
不安ながらも走り続けていると、前方に歩行者を見つけた。
“ やった~!あの人に道を聞ける! ”
と安堵したのも束の間、俺の中の冷静な部分が言ってくる。
“ こんな時間に歩行者が一人?
この状況下で?
なんかフラグが1ダース位立ってるんじゃないか?
アレな感じのが・・・。 ”
パニクったまま、それでもゆっくりめの速度で歩行者を追い越すことにする。
追い越す瞬間、横目で確認すると傘を持った普通のサラリーマンっぽい。
ほっとして車を止めようとサイドミラーを確認すると、
“ あれ・・・ !? ”
思わず振り返って確認。
“ 追い越した歩行者が、いない!!”
もう一回振り返って確認、やっぱりいない。
ぶわっと、全身から色んな汁がだだ漏れてくる。
“ 落ち着け、落ち着け!!”
と言い聞かせるも、落ち着ける訳がない。
何故か脳裏を駆け抜ける走馬灯。
目をグルグルさせながら走り続けていると、道路標識を発見、それを辿って幹線道路に到着。
多数走っている自動車を見てやっと一安心できた。
後部座席や助手席に見知らぬ人が座っていることもなく、無事に帰宅できた訳だけど、4時間のロングドライブになってました。
後日トランクに見覚えのない紳士用の傘を発見した。
ボロボロの傘だったし、一昨日乗せた友人の忘れ物だと決め付けて、近所のコンビニの傘立てに置いてきた。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ