日々の恐怖 4月27日 お~い
俺の親父は土建屋を経営している。
とは言っても、決して大きい会社では無く従業員は5名ほどだ。
社長という肩書きではあるものの、現場最前線で働いている。
住んでる所がけっこうな田舎なので、仕事する現場が山中だったりすることも多い。
俺が高校生の時に、夏休みを利用して何回かバイトをさせてもらったけれど、その時も山の中を流れる川の用水工事みたいな仕事だった。
今までも何回か洒落にならんような出来事はあった。
山の中で仕事していたら、遠~くの方の木々の間に人がチラチラ見えた。
多分、林業の人だろうと思って放置した。
ところが、何日経ってもいるもんだから、おかしいなと思って見に行ったら首吊り死体だったとか。
それで、数日前のことだ。
いつもより帰りが遅かったんで何かあったのか聞いたら、従業員がテェーンソーで足を切ってしまったから、病院に行っていたとのことだった。
切り落としたって訳じゃないが、20針くらい縫うことになったって言っていた。
俺が、
「 それは大変やったなぁ。」
と言ったら、親父が、
「 今の現場は、やばい場所かもしれんなぁ・・・。」
とか言い出した。
詳しく聞いてみた所、今やってる現場もまた山中にあるんだが、変なことが立て続けに起こってるらしい。
まず、木を切る事を専門にしてる業者を呼んで木を切ってもらっていたら、あるエリアに入るとなぜかテェーンソーが止まってしまう。
他の場所はなんの問題も無く切れるそうなんだが、なぜかそのエリアに入るとテェーンソー停止。
しかもエンジンが掛からない。
それで、切った木を重機で集めてたら、ガバッと木を掴んだ時に、圧縮された拍子で枝が跳ねたようだ。
その枝が重機の運転手めがけて飛んできて、重機運転席の窓ガラスが1枚割れた。
まったく同じ事で、木を積むダンプの運転席の窓ガラスも破損した。
それで、
「 これは何かあるんじゃないのか?」
って従業員と喋ってたら、山の中から、
「 お~い。」
って呼ばれた。
親父が言うには、ちょっと高音でかすれた声だったと。
その時、現場には自分とこの会社の人間しかいなかったらしく、しかも全員ちゃんと聞こえたそうだ。
仕事を終わらせないといけないので、その声はそのまま放置して、また仕事を再開した。
ところが、その声が何回も何回も聞こえてくる。
「 お~い。」
「 お~い。」
男とも女とも言えない声だったらしいが、
“ これは、さすがにまずいかも・・・・。”
と思っていた矢先に、テェーンソー足を切る事件が起きたそうだ。
もちろん、その日の仕事は終わりにして病院に行った。
それで帰りが遅くなったと言う話だ。
次の日に神主呼んで御祓いをやってもらったらしいが、一応、その後は何も起こっていないらしい。
何かが埋まっていたのか、それとも切ってはいけない木だったのか、真相は分からないままだった。
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