日々の恐怖 4月26日 院内学級
20年以上前の話をします。
某市の駅前で交通事故に遭い骨折した。
救急車で私立病院に運ばれ入院して手術した。
幸運なことに内臓疾患が過程で見つかり治療することになった。
骨折が直ったあとも長期入院になったので、現住所から某市へ転入し院内学級に通った。
昼間は点滴しながら院内学級で勉強だ。
季節は夏。
小児科にはたくさんの小中学生が入院している。
怪談程度じゃすぐ飽きる。
当然肝試しなんてものを開催することになる。
匍匐前進でナースステーションをパスする俺ら。
見回りの時間と時間の間が活動時間。
目指すは精神科の先にある長い廊下の先、霊安室。
中に仏壇があるのは昼間確認済み。
さすがに一人では怖すぎて行けないので、二人一組で名前を書いたメモ用紙を仏壇に供えるのをミッションにした。
記憶があいまいだが、結構な組が出来上がったと思う。
全ペアが供え終わり、全員で霊安室に確認に向かった。
そして、恐る恐る中に入る。
ここで霊が激怒したのだろう。
誰も乗っていないストレッチャーが、突然、霊安室の奥から手前の壁に猛スピードで転がり激突。
スゴイ音がした。
速攻で逃亡する中学生。
悲鳴を上げる高学年組。
腰が抜ける中学年組。
盛大にちびる小学年組。
俺も小便を撒き散らしながら退散。
警備員が登場し、心底ほっとした。
病院中が騒ぎになった。
無表情で俺らを見つめる精神科病棟の患者も怖かった。
当然ヤキがはいり死ぬほど怒られたが、この体験に比べればなんてことはなかった。
朝までナースステーションで過ごした後、翌日の婦長の話が忘れられない。
怒るでもなく、皆を諭す。
「 本当に危ないところなの。
公式には何もいえないけど、皆怖い思いをしているの。
二度としないで頂戴。」
それ以来、退院までの夜は皆おとなしく過ごすようになった。
枕もとの電気スタンドは消さずに眠るのがルールになった。
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