日々の恐怖 4月12日 男女の顔
これは、俺の友人が実際に体験したことである。
作り話にしてはなんとなくオチもゆるいし、実際家族の人もうなされてるのを目撃してたようだ。
友人の親父さんが軽度に内臓を患って手術しなきゃいけなくなった。
で、友人は家族と一緒に手術に付き合って手術室の前で手術が終わるのを待っていた。
そこで、友人は猛烈に眠くなり、堪らなくなって椅子に寝転がって寝てしまった。
で、そこからなんだけど、
『 ふと気づくと自分が手術室の前にいる。
周りには母親と弟。
一瞬夢だとわからないくらい同じ光景。
タバコがすいたくなってくる。
当然、病院内は禁煙。
「 ちょっとタバコ吸ってくるわ。」
といってエレベーターに乗る。
そこの手術室は他の棟からちょっと隔離されてて、主な移動手段はエレベーターだった。
実際の病院の配置も一緒である。
エレベーターに乗ると、なんだか不穏な空気が漂う。
1階のボタンを押すと、ゆっくりとエレベーターが動き出した。
なんか無駄にゆっくり動いて、いらいらしてるとエレベーターのドアが透けて見え出した。
もうこのあたりで友人は、自分が夢を見ていることを自覚していたようだ。
“ ああ、夢なんだ・・。”
と思いながらドア越しに外を見てると、なんか白いもやもやした人たちがうごめいているのが見える。
“ これ、やばくね?”
と思いながら、ふと視線を感じて上を見ると男と女の一組の顔が壁から覗いていてじっとこっちを見ている。
“ うおっ!?”
ってなってそこで途切れる。
気づくとまた手術室の前に立ってる。
今度は弟がジュースを買いに行くといってエレベーターに乗ろうとする。
「 そこのエレベーター、幽霊出るから気をつけろよ。」
といって弟を見送るが、自分もなんとなくジュースが飲みたくなって、またエレベーターに乗ろうとする。
エレベーターに乗ると、なんだか不穏な空気が漂う。
1階のボタンを押すと、ゆっくりとエレベーターが動き出した。
なんか無駄にゆっくり動いて、いらいらしてるとエレベーターのドアが透けて見え出した。
“ ああ、また夢をみている・・。”
と思いながらドア越しに外を見てると、なんか白いもやもやした人たちがうごめいているのが見える。
“ これ、やばくね?”
と思いながら、ふと視線を感じて上を見ると男と女の一組の顔が壁から覗いていてじっとこっちを見ている。
“ うおっ!?”
ってなってそこで途切れる。
気づくとまた手術室の前に立ってる。
そして、また何かの理由があって、自分はまたエレベーターに乗ろうとする。
それで、エレベーターで降りて行く途中、またさっきの男と女の顔が壁から覗いている。
“ うおっ!?”
ってなってまた途切れる。』
延々それの繰り返しで、何回も何回もず~と同じところをグルグルグルグル回っていたようだ。
友人は夏の病院で適温にもかかわらず、汗びっしょりになってうなされていた。
見かねた母親が起こして、ようやく友人は目が覚めた。
友人とその母親はこの話を笑いながらしてたけど、聞いた俺はなんとなく背筋がぞくっとした。
怪談なんか一度もしたことない、そういう話とは無縁そうな友人が、そんな体験をしたってのが、なんとなく。
まあ、豪快な親父さんと豪快な親子関係といえども、やっぱり親父の手術でそれなりに不安だったんだろうし、肉体的にも真昼間から猛烈に眠くなるくらい疲れていたんだから、おかしな夢くらい見ても不思議じゃないかなと思う。
それでも、夢がループして抜け出せないってのと、病院の手術室の前ってのが何か結び付いてしまって、割とさらっと言われたけど、後でその風景を想像してみると、
“ 怖くね・・・?これ・・・ ・?”
ってなったって話です。
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