大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 7月6日 手紙

2014-07-06 19:37:05 | B,日々の恐怖



     日々の恐怖 7月6日 手紙



 ある日の夕暮れ近く、勤めからの帰りがけに、一人の若い婦人が、クネーゼベックシュトラッセのひどく爆破された住宅街で電車を待っていた。
その時、一人の盲目の男が彼女に突き当たった。
 彼は背が高く、やつれた中年の男で、黒い眼鏡に古びたセーター、かかとにまでとどくだぶだぶのズボンを着込み、ステッキで道を探っていた。
もう一方の手に、彼は手紙を持っていた。
彼は腕に、黒い球三つで作られたピラミッドの模様のある、黄色い腕章をつけていたが、それは外を歩く時、すべてのドイツ人の盲人や聾人が身につけるものであった。
 その盲人は、夫人に突き当たったことをわびた。
彼女は別になんでもないと彼にいい、さらに何かのお役にたつことがあったらと彼に聞いた。
そこで彼は手紙を彼女に渡し、その封筒の宛名に連れて行ってくれますかと尋ねた。
 手紙は、大変遠いクネーゼベックシュトラッセに住んでいる誰かにあてられたものであり、 それにはよほど歩かねばならないと婦人は彼に言った。

「 やれやれ、今日はもうこんなに歩きましたのに。
この手紙を、私の代わりに届けて頂けませんでしょうか?」

と彼は言った。
 彼女は喜んでそれを引き受け、家に帰る途中にそこを通るから少しも面倒ではないと答えた。
盲人は彼女に厚く礼をいい、2人は別れ、盲人は彼女が来た方の方角に杖をついていった。
 2、30ヤード歩いたところで、彼女は盲人がちゃんと歩いて行ったかどうか振り返ってみた。
彼はステッキを小脇に抱えて、急ぎ足にすたすたと歩いていたのである。
彼がペテンであることには間違いなかった。
 手紙をもって行く代わりに、彼女はそれを警察に差出し、どうして手に入ったかを説明した。
警察が封筒の宛名のアパートに行ってみると、2人の男と1人の女が、たくさんの肉をしまっていた。
その肉は医者が検査したところ人間であった。
封筒の中の手紙には、ただ一言、次のように書いてあった。

「 今日は、この人でおしまいです。」


     雑誌『ニュー・ヨーカー』 ジョエル・サイア(1946年) 












      東京からのお便り





 昔、地下鉄の駅前で、白い杖を持ったおじいさんに、

「 階段を下りたいから、肩を貸してください。」

と頼まれたことがある。
目が不自由な人用のブロックはあったけど、階段の利用者が多いから、誰かに掴まって下りた方が安全だよなと、おじいさんに肩を貸すことにした。
 私が快諾すると、おじいさんはさっさと私の腕に腕を絡ませてきた。
その時点でちょっと驚いたけど、そのまま階段におじいさんを誘導した。
 すると、下りてる間、おじいさんは手を不自然にさわさわ動かしてくる。
手の甲を私の胸に当てるような感じ。
かなり気持ち悪かったけど、我慢して階段を下りきった。
 後に同じ駅でそのおじいさんを見かけた時、おじいさんは特に杖を使う様子もなく、一人ですたすたと階段を下りて行った。

“ やっぱり見えてんじゃん!”

今思い出しても、むかつく出来事です。












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