大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 7月8日 ボロ家

2014-07-08 17:53:41 | B,日々の恐怖



     日々の恐怖 7月8日 ボロ家



 数年前に実家で、甥っ子や姪っ子達とテレビを観てた。
映っていたのは、昔の田舎の家。

「 そういや、うちも昔はこんなお風呂だったよねぇ。」

と俺は言った。
家族全員が何故かきょとんとした顔になった。

「 ほら、まん丸い五右衛門風呂でさ、スノコみたいなの踏んで入るの、覚えてない?」

不思議そうな顔をした妹が言った。

「 兄ちゃん、どこでそんなお風呂入ったの?」

両親も似た様な表情で俺を眺めている。

「 何を言ってるんだお前は?」
「 いやいやいや、この家昔はすげーボロ家だったじゃん。」

じれったくなった俺は、その辺にあったチラシの裏に、間取りをスラスラ描く。

「 ここが凄い狭い廊下で、その先が土間になってて、土間のすぐ横が風呂場で・・・。」
「 ちょっと待て。」
「 ?」

父親が描きかけの空白部分を指差して言った。

「 ここには何があった?」
「 えーと、井戸があって、ポンプが1日中ウンウン言ってた。」

俺は井戸の印に丸を描いて、そこからパイプを家の外に向かって伸ばした。

「 なんか、近所に住んでた鯉飼ってる人の家に売ってたとか・・・・、あれ・・?」

そこで奇妙な感覚に陥る。
スラスラ描けるほどハッキリ覚えていた記憶が、描くそばからほろほろとあやふやになって行く。

「 それ誰に聞いた?」
「 誰って、爺ちゃん・・・、あっ・・・・!」

祖父は自分が生まれる前に他界していた。

「 確かに昔は五右衛門風呂だったし、井戸の水を近所に送ってた。
だけど、お前が生まれた年に建て替えたんだぞ?」
「 えっ?あれっ・・・??」

すっかり描き上がった古い平屋の見取り図は、もう知らない家になっていた。














童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------