大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 7月16日 絵

2014-07-16 18:07:40 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 7月16日 絵




 俺がまだ小学生、多分、3年か4年の頃だった。
校外学習だったかなんだかで、バスに乗って美術館に行った。
美術館について一通り順路を回った後、指定された時間まで各々自由に見て回って良いと言われたので、仲の良い友人数人(確か自分含めて4人ぐらい)で回ることにした。
 最初の内は楽しかったんだけど、俺は正直途中で飽きてきて、「早く帰りてー」なんて言ってた。
他のヤツらも大体同じみたいで、お互い帰りたい帰りたい言い合ってた。
だけど友人の一人、Aと書くことにするが、そいつだけは真面目に絵を見てた。
何だかんだ言っても美術館から出ることは出来ないし、みんなしてAの見たい所をついて回る形になってた。
 俺達がだべりながらなんとなく絵を見てたら、Aが立ち止まって動かなくなった。
それまでは立ち止まってもまたすぐに歩き出して、他の絵の所に行ってたのに。
確か、なんとかの烏ってタイトルだったと思う。
烏って部分だけ覚えてたのは、その時は烏って字が読めなかったって言うのと(友人の一人が読み方を知っていて教えてくれた)、その絵に烏が描かれていなかったから。
 そりゃ絵のタイトルに入ってるものが、必ずしも絵にそのまま描かれている訳ではないと思う。
だけど、その絵は明らかにおかしかった。
風景画みたいに湖とその周りの景色が描かれている端っこに、奇妙なものが描かれている。
一本の木から紐のようなもので吊されている、黒いもの。
何なのかははっきりしないけど、なんとなく人の形をしてるようにも見えた。
少なくとも烏には見えなかった。
 俺は、なんか気持ち悪い絵だなぁぐらいにしか思ってなかったし、他のヤツらはちゃんと見てすらいなかった。
Aはずっと動かない。
声をかけてみても生返事。
ちゃんと絵を見てないとはいえ、いつまでも同じ場所に止まってるのは余計に退屈だ。
そう思って、Aに声をかけた後、他の友人達と別の場所を見ることにした。
 しばらく見た後、座れる所があったので座って時間を潰すことになった。
その場ではしょうもない話しかしなかったと思う。
 そろそろ時間だという頃に集合場所に向かってると、Aの姿を見つけた。
なんと、Aはまだあの絵を見ていた。別れてから10分くらいは経ってたはずだ。
Aにそろそろ集合場所だと告げると、またも生返事だったものの絵から離れて、一緒に集合場所まで向かった。
 その日はそれで終わった。
帰りのバスの中でAはいつも通りだったし、俺は大して気にしてなかった。
校外学習が終わった次の日。作文用紙を渡され、昨日の感想を書けと言われた。
俺は『とても楽しかった』だのありきたりなことを書いて、適当に仕上げた。
一緒に美術館を見た友人はみんな書き終えたが、Aだけは時間内に書き上がらず、家でやってくるように言われた。
 次の日、昨日書き終わらなかった人たちが作文を出した。Aは出さなかった。
また次の日、この日は締め切りとされていたが、Aと不真面目な生徒何人かは出さなかった。
 この時点で俺は違和感を感じていた。
Aは普段から真面目で宿題を忘れたこともなかった。
普段の態度もおかしかった。なんだかボーっとして、いつものAとは程遠かった。
そんな状態が一週間くらい続いた。
 そんな時、Aが俺に相談してきた。
なんでも、あの日見た烏の絵が頭から離れないのだという。
俺は正直そんな絵のことは忘れてたし、Aがあまりに深刻そうにしてたので、どうしたらいいのか分からなかった。
結局、その時どうしたかはあまり覚えてない。
月並みな言葉を掛けただけだと思う。
 それからまた数日経つうちに、Aはどんどんおかしくなっていった。
授業中一人でブツブツしゃべったりしていた。保健室に行くことも多くなった。
俺も友人達も、Aとはあまり遊ばなくなった。
 そして、ある日それは起こった。
授業の途中、Aは急に倒れた。椅子から転げ落ちて、体をガクガク震わせていた。
教室がざわつく中、俺とAの目が合った。
すると、Aが叫びだした。
ほとんど聞き取れなかった。
その後、Aは先生に運ばれて保健室に行った。
授業は自習になった。
 しばらくすると、救急車が学校に来た。
窓から、Aらしき人が担架で救急車に乗せられるのが見えた。
それきりAは学校に来なかった。
病院に入院したとも聞いたが、詳細は分からない。
学年がかわる頃、先生がAの転校を告げてからは、何も耳にしていない。












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