日々の恐怖 7月9日 コンビニ
都心部も少し外れたところはコンビニが少ないので、行きつけのコンビニが自然と決まってくる。
当時、高校生だった俺は一箇所をよく利用してて、ほとんどの店員と知り合いになっていた。
その日はたまたまレポート用紙が足りなくなって、夜に買い足しに行った。
その時のレジも馴染みのバイトの姉ちゃんで、年は25って言ってたかな。
「 こんな遅くに珍しいね。」
「 あー、レポート用紙なくなって。」
とか、まぁレジで当たり障りのない会話をしたりしてた。
すると清算してる最中に、姉ちゃんがいきなり頭痛に襲われたようで、
「 大丈夫ですか?」
と聞くと、数秒もないうちに、
「 ええ、なんとか。」
痛みはすぐに治まったようだったから、さほど気にせずに帰路についた。
それで、家に帰ると、何も言わずに出てたもんだから親に問いただされて、
「 あぁごめん。レポート用紙を買いに・・・。」
って袋を掲げようとしたら、どういうわけか俺は何も持ってない。
確かに買ったはずなのにって財布を確認しても、レシートや小銭が減った形跡がまるで残ってなかった。
それでも一応、帰り道に落としたor店に置き忘れた可能性を考えて、道を注意しながらコンビニまで逆戻りする羽目になったんだが、結局落としたのは見つからず、コンビニまで戻ってしまった。
“ 店に忘れるなんて有り得ないしなぁ・・・。”
とか色々悩みながら店に入ると、夜の時間帯にはめったに見ない店長が、スーツ着て来ている。
話を伺うと、その姉ちゃん、バイト入る前に自室で倒れていたらしくて、これから人員補充して、容態確認しに行くとのことだった。
結局、姉ちゃんの倒れていた原因は脳溢血で、手当ての甲斐なく亡くなってしまったんだが、その時の何でもないやりとりをした記憶と、買い物が綺麗さっぱりなかったことになった経験が、今でも忘れられない。
恨みや未練で人に憑くような性格ではなかったから、怖くはなかったけど、ちゃんと成仏できたのかなと、しばらく心配だった。
その後、変な噂は一切立たなかったし、身の回りで怪現象が起こったわけでもなかったから、今では大丈夫と思う。
実を言うと、気になっていたので、お葬式が一段落した頃合を見計らって、線香を上げに伺った時に、このことを家族さんに話しました。
小さな菓子折りを香典として持っていきましたが、学生がそこまで気を遣うなと怒られてしまいました。
そして、
「 こんな話は初めてだけど、あの子ならおかしくない。」
と、神妙な顔をされてました。
思い返すと切なくなってきました。
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