日々の恐怖 7月21日 うさぎ
去年の夏、飲み会の帰りに、柴犬くらいの大きさの半透明のうさぎが、私を追い抜いてピョンピョン跳ねていった。
酔ってたからか怖くはなく、
「 あれーもしかして不思議の国のアリス的な?
うふふ、うさぎさん待って~!」
とか、むしろワクワクしながらアホみたいに追いかけていった。
そしたら、私が住んでるアパートの部屋のドアをすり抜けて入って行った。
慌てて鍵を開けて入ろうとしたら、
“ あれっ、鍵開いてる?
閉め忘れたか?”
とりあえず中に入ると、リビングでうさぎがこっち振り返ってる。
私が部屋に入ったのを確認して、今度は押し入れの襖の中に消えていった。
襖を開けるとうさぎはいなかった。
かわりに、見知らぬ男性が汗だくで寝ていたというか気絶していた。
気が動転して隣の部屋の女性に助けを求めて、要領を得ないながらもうさぎのことも含めて何とか説明した。
女性が警察やら救急車やら手配してくれて、警察に事情を聞かれる前に、
「 うさぎのことは言わない方がいいかも・・・。」
と言ってくれた。
警察には、
「 家に帰ったら鍵が開いてて、押し入れに知らない男の人がいた。」
とだけ言った。
後日、警察の人が、
「 あの男の人は私が仕事から帰る時間を以前からチェックしていて、その少し前に鍵を壊して部屋に忍び込み、押し入れに隠れていたが、熱中症になって気を失っていた。
救急車を呼ぶのがもう少し遅かったら命に関わっていたかも・・。」
と教えてくれた。
やっぱり怖いので、実家に戻って暮らすことにした、会社からは遠くなったけど。
あの日、私が帰るのが遅れて、男性が亡くなっていたらもっと厄介なことになっていたと思う。
大きなうさぎはそれを教えてくれたのかわからないけど、それから一度も見ていない。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ