日々の恐怖 5月27日 奇妙な体験(6)
“ もう、やめてくれ!”
心の中で叫び続ける。
動画の再生時間は、まもなく終わりに近づいている。
“ すべてが見える前に終われ!”
と念じた次の瞬間、信じられないものが画面に映った。
画面の端から
“ ぬっ!”
と現れた人影が、ビデオのスイッチを押して録画を停止させた。
その画面に映った、録画を停止させた人物は、他ならぬ俺だった。
画面に現れた俺は、無表情のままカメラに手を伸ばし、スイッチを押した。
“ 俺が・・・?”
それを見た俺はもはや恐怖と混乱が頂点に達し、そのまま気を失ってしまった。
気づいたら、PCデスクに突っ伏したまま朝を迎えていたが、モニタ上のフォルダには、動画ファイルと謎のファイルがそのまま残っている。
夢ではなかったのだ。
正直、そのファイルを再生する気には2度となれず、動画を消去した上にカメラもその後処分してしまったのだが、その日は気分が悪く会社も休んでしまった。
あの時、俺が見たものは一体何だったのか?
足元の布団からゆっくりと出てきたあの顔は、何だったんだろう?
録画を停止させたのはまぎれもなく俺だったが、そんな記憶はない。
だとしたら、布団で寝ていたのは一体誰だったというのか?
そして不思議なことに、あれ以来俺は一度も金縛りに遭っていない。
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