日々の恐怖 5月14日 勅使河原君と夢(1)
勅使河原君の家族は母親だけでしたので、母親の死後、勅使河原君は広い家に一人ぽっちになってしまいました。
職場からも遠い上、勅使河原君の安月給では家の固定資産税が払えません。
かといって、育った家を売るには忍びなく困っていたところ、貸して欲しいという人が現れて、勅使河原君は家の半分を貸すことにしました。
毎日家の中を片づけていたのですが、我が家なのになんとも家の中が怖いのです。
とくに玄関から自分の部屋のいく間に土間というか広い倉庫があり、その扉の横を通るとき妙にゾクゾクします。
身体も弱っていたんでしょう。
そのうち夢をみるようになりました。
勅使河原君が倉庫の横を通っていると、突然扉がひらいて、真っ青な顔をした死んだ家族や知り合いが中から手をさしのばし、引っ張りこもうとするのです。
みなボロボロの死に装束をつけて、ぞっとするような姿です。
両手をつかまれて、
「 ぎゃ~っ!」
と叫んだところで眼がさめます。
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