日々の恐怖 5月31日 不思議な話(1)
友人の家を久しぶりに訪ねた際、不思議な話はないかと問うと、
「 俺の携帯、よくなくなるんだ。」
と、彼は言った。
「 それは不思議な話なのか?」
私だって、自分の携帯がどこに行ったのかわからなくなることはしょっちゅうだ。
しかし、彼はそうではないと言う。
「 なくなり方が、なんだかおかしいんだ。
こいつ、多分、俺に隠れて旅をしてるんだよ。」
友人は、ガラケーとスマホを一台ずつ所有しているが、旅をするのはガラケーの方だという。
普段使いしているのはスマホの方で、ガラケーは半ば、リビングの定位置に鎮座する置物と化している。
動かすことはほとんどないのに、なぜか時々なくなってしまう。
あちこち探すが、心当たりがないため見つからない。
どうしたものかと思っていると、二、三日後に思わぬところから着信音がして居所が知れる。
それがいつものパターンだそうだ。
「 だから最近は、なくなっても慌てないんだ。
しばらくしたら、出て来るってわかったからな。」
見つかるのは、台所の戸棚の奥や、階段下の暗がり、洗面所下の収納の中、友人の職場のデスクの中にあったこともあり、意図的に隠したか隠れたかしなければありえない場所ばかりだという。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ