日々の恐怖 5月16日 勅使河原君と夢(2)
そうこうするうちに、勅使河原君は吐血してしまいました。
ブハッと血を噴いて、あわてたものの、この状態では救急車は呼べないし、 家族もいないので、タオルで顔を押さえて自分で徒歩五分の病院にいきました。
ちょっと間抜けです。
即入院です。
検査の結果、胃と食道が荒れてるだけで大したことがないとわかりました。
投薬で血は止まったんですが、動きがとれず、病室で、
「 困ったなあ・・・・・・。」
と考えてますと、親戚のおいちゃんがやってきました。
おいちゃんは、勅使河原君を子どものころから可愛がってくれた人です。
土建屋の親分で頼りになります。
おいちゃんは勅使河原君の夢の話を聞くと、
「 それは親が、若い身空でひとりになった勅使河原君を不憫がって、連れていこうとしてるんだろう。」
と言いました。
勅使河原君も、身体が弱ってるので、そうかもしれないなあという気になります。
でも彼女もいるし、結婚もしたいし、こんな早く連れていかれてはたまりません。
そのことを言うと、おいちゃんは、
「 じゃあ、おいちゃんが勅使河原君のために、あの世の父ちゃん母ちゃんに頼んでやろう。」
と言って帰っていきました。
おいちゃんはお寺に勅使河原君の親の位牌をもっていって、盛大に拝んでくれたそうです。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ