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日々の恐怖 11月13日 ろろく石(1)

2021-11-13 16:45:36 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 11月13日 ろろく石(1)




 自分の親父と骨董の話です。
親父は紡績の工場を経営していましたが、何を思ったか50歳のときにすっぱりとやめてしまい、経営権から何から一切を売り払ってしまいました。
これは当時で十億近い金になり、親父は、

「 生活には孫の代まで困らんから、これから好きなことをやらせてもらう。」

と言い出しました。
 しかしそれまで仕事一筋だった父ですから、急に趣味に生きようと思っても、これといってやりたいことも見つからず、途方に暮れた感じでした。
あれこれ手を出しても長続きせず、最後に残ったのが骨董品の蒐集でした。
 最初は小さな物から買い始めました。
ありがちなぐい呑みや煙草の根付けなどです。

「 初めから高額の物を買ったりして、騙されちゃいかんからな。
小遣い程度でやるよ。」

と言って、骨董市で赤いサンゴ玉がいくつか付いた根付けを買ってきました。

「 何となく見ていてぴーんとひらめいたんだよ。
このサンゴ玉は元々はかんざしに付いていたのかもしれないね。」

などと言って、書斎に準備した大きなガラスケースに綿に乗せて置きました。
 これが我が家の異変の始まりです。
まず親父になついていたはずの飼い猫が書斎に入らなくなりました。
親父が抱き上げて連れて行ってもすぐに逃げ出してしまうのです。
 さらに家の中の物がなんだか腐りやすくなりました。
梅雨時でもないのに食パンなどは買ってすぐに黴に覆われてしまったりして、台所は常に饐えた臭いがするようになりました。
 それから家には小さいながら庭もあったのですが、全体的に植木の元気がなくなり、中には立ち枯れるものも出始めました。
また屋根の上の一ヶ所につねに黒い煙いのようなものが溜まり、何人もの通行人に火事ではないかと言われたりもしました。
しかし、はしごをかけて屋根に上ってみてもそこには何もないのです。







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