日々の恐怖 3月30日 村岡君(2)
いつの間にかクラスメートのほとんどが集まってきました。
何人かは竹林側の廊下に出て、より近くで見えない女性のその姿を見ているようです。
しかし私や半分くらいのクラスメートには何も見えません。
そこへ担任と隣組の先生がやってきました。
「 お前ら何してるんや、作業せいよ。」
担任の山本先生が言います。
年下の隣組の先生は腕組みをしています。
村岡君がつぶやきました。
「 あそこの竹のとこに変な女がいるんです。」
指差す方向を見た担任は、
「 雨降ってるだけやないか。
竹の子でもおるんか?」
と笑います。
「 や、山本先生、あれが見えんとですか!?」
隣組の先生が腕組みをとき、後ずさりながら言いました。
「 透けとう女です!」
中途半端な笑い顔のまま山本先生は、それでももう一度その方向を見ます。
「 いや、見えんが・・・、みな見えとるの・・・??」
「 はい、見えるとです。」
雨がやや強くなり、ほとんど夜の暗さになった教室に、さっきまで騒いでいた生徒たちも静かになり、その方向を皆見つめています。
女生徒の怖くてすすり泣く声だけが聞こえます。
見えない生徒たちも、その不気味な雰囲気に何も言うことができません。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ