大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道167

2008-12-29 20:11:25 | E,霧の狐道
 病院の夜は長い。
何時間経ったのだろうか。
俺は、うるさい音に眼が開いた。

「 ぐごごごごごごぉ~、ぐごごごごごごぉ~。
 くしゅ、くしゅ、ハックション、グスグス。
 ズ~、ズ~、ズ~。」

眼が開いた理由は、田中爺のいびきだ。

「 う、うるさい!」

 俺は布団から顔を出し、左隣のベッドに寝ている田中爺をチラッと見た。
田中爺は仰向けで口を開いて寝ていた。

“ 鼻と口から、雑音が漏れている・・・。”

俺は仰向きのまま、布団を耳の辺りまで引っ張り上げた。
布団を被っても、まだ、田中爺のいびきの音は耳に侵入して来る。

「 う、ぐぐぐぐぐ、ぐっ!
 ・・・・・・・・・。」

 突然、田中爺は静かになった。
俺は、様子を窺う金魚のように布団から顔を出した。
顔を出すと、布団を被っていた息苦しさから解放される。
そして、口をパクッと開けて大きく息を吸い込み、吐き出す。

「 プハァ~~~。」

息を吐き出した音が消えると、薄暗い病室は静かになった。
 夜の病室に静けさが広がる。

“ ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ・・・。”

廊下の方から心臓の鼓動のようなモニターが聞こえる。

“ あんな音、してたかな?
 まあ、寝るときはザワザワした感じだったから、紛れていたのかな?
 それにしても妙に静かだな・・・。
 田中爺、いびきが喉に詰まった死んだか?”

隣のベッドの様子を見ると、掛け布団が上下しているので田中爺は生きているようだ。



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