日々の恐怖 5月6日 紅茶(1)
同僚Yが体験した話です。
数年前、大きな台風が来た夜のこと。
同僚Yは出張からの帰途、浸水する道路を必死で走行していた。
時間は零時近く。
夕方過ぎから警報も出ていたので、その頃は車両もほとんどなく、数十メートルおきに置かれた外灯の明りだけが頼り。
視界は最悪。
道路はどんどん水かさが増してくる。
Yはそれでも叩きつける雨の中、ワイパーをフル回転させながら必死に車を走らせていたんだけど、ついに前に進めなくなった。
窓を開けて下を覗き込んでみると、タイヤがほぼ水に浸かっていて、ドアの隙間からはじわじわ雨水が染み出し始めていた。
“ もうこりゃ駄目だ。”
と悟ったYは、自分の入ってる自動車保険に、集中豪雨の際のトラブルみたいな条項があったことを思い出して、応援を呼んでみることにした。
実際こういうのを呼ぶのは初めてだったから、ちょっと緊張しつつケータイを鳴らすと、深夜にも関わらず向こうはすぐ出た。
丁寧な対応で、事情を話すと、レスキュー班をすぐ派遣してくれるとのこと。
Yは自分の現在地の詳細を伝え、
「 お願いします。」
と言って電話を切った。
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