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楽しさを歩いて発見

  思い出を歩いて発掘

   健康を歩いて増進

遺伝子操作技術に規制望む意見が増える

2019-02-11 | 世相
 文部科学省の科学技術・学術政策研究所が、遺伝子操作技術について、法規制を求める声が高まっているとの意識調査をまとめた。調査は全国の15歳~69歳の男女3,000人を対象にアンケートし、2018年10月に実施した。
 今回調査(2018月10月)  前回調査(2016年5月)
 法的な規制を望む意見は
        男性:29% 前回より6ポイント上昇
        女性:25% 前回より5ポイント上昇
 研究推進を望む意見は
        男性:29% 前回より7ポイント下がる
        女性:24% 前回より10ポイント下がる
 このような結果は、親が望んだ容姿や能力を持つ「デザイナーベビー」などへの不安感などが高まったためと分析している。
 アンケート実施(2018年10月)後に、中国で狙った遺伝子を効率よく書き換えられるゲノム編集技術を使った双子の誕生が確認された。いま実施すれば、規制を望む声はさらに多くなった可能性が高い。
 尚、法規制を守るように指導監督の徹底を求める意見も増えており、
  男性:26% 5ポイント上昇
  女性:23% 2ポイント上昇

哺乳類シリアンハムスターの冬眠に備えた白色脂肪変化を明らかに

2019-02-10 | 生物
 冬眠は長い冬を低体温の状態で乗り切る現象である。外気温に体温が左右されるカエルなどの変温動物は、寒冷環境下では低体温の冬眠状態となる。これに対し哺乳類は体内で熱を作り出すことにより体温を37℃付近に維持する恒温動物であり、私たちヒトをはじめとする多くの哺乳類は冬眠できない。これは、長時間の低体温状態は心停止や組織障害を引き起こすからである。
 しかし、一部の哺乳類は変温動物と同じように低体温状態で冬眠できる。これらの動物の冬眠を可能とする仕組みについては、いまだ多くの点が不明である。冬眠を可能とする仕組みの一例に、脂肪の有効活用がある。冬眠するツキノワグマ・ヒグマやジリスなどは、秋になると体内に脂肪を大量に蓄えたのち巣穴にこもり、冬の間はほぼ絶食状態で貯蔵脂肪を燃焼させて生き延びる。同じく冬眠する小型のシマリスやハムスターは、体内に貯蔵した脂肪を活用しつつもその量には限りがあるため、巣穴に蓄えた大量の餌を食べて冬の間を生き延びる。しかし、脂肪をうまく蓄えさらに有効活用するために、冬眠前や冬眠期間に体がどう変化するのかについて、その詳細は不明であった。
 北海道大学低温科学研究所の山口良文教授、東京大学大学院薬学系研究科大学院生(当時)の茶山由一氏、三浦正幸教授、自然科学研究機構基礎生物学研究所の重信秀治准教授、福山大学薬学部の田村 豊教授らの研究グループは、餌を貯蔵しながら冬眠する哺乳類シリアンハムスターが、冬眠時、エネルギーを蓄える機能をもつ白色脂肪組織において、脂肪を合成する同化系と分解する異化系の両方を著しく増強させることを解明した。(2019/1/29)
 山口教授らの研究グループは、冬眠の仕組みを調べるうえで有用なモデル生物・シリアンハムスターに着目した。冬眠できる体の状態を調べるために、夏条件(温暖長日)で飼育された冬眠しない状態のシリアンハムスターと、冬条件(寒冷短日)に長期間置かれ冬眠する状態になったシリアンハムスターとの比較解析を行った。
 本研究では夏条件で育てた個体を冬条件に移すその際の組織変化の詳細を調べた。冬条件に移した個体では、皮下と腹腔内で白色脂肪組織重量の減少が見られた。これは寒冷ストレス等により代謝が進んだためと考えられる。しかし、冬条件で2ヶ月以上過ごした個体や、その後冬眠をはじめた個体では、体重あたりの白色脂肪組織の割合の増加が認められた。これは、白色脂肪を保存しようとする働きであると考えられる。そこでこの仕組みに迫るべく、次世代シーケンサー解析により、皮下白色脂肪組織で発現する遺伝子情報を網羅的に取得した。
 結果、冬条件に長く置かれた個体では、夏の個体に比べ中性脂肪を分解しエネルギーを取り出す異化反応に関わる酵素群の遺伝子発現量が増大することがわかった。これは冬眠動物が貯蔵脂肪を用いて冬を乗り切ることから、予想された結果だった。冬条件の個体では、異化反応とは逆に中性脂肪や脂質の合成に関わる同化反応系の酵素群や、脂肪酸の不飽和化に関わる酵
素群の遺伝子発現も増大していた。こうした、冬眠期における脂質同化系の亢進は、絶食状態で冬を乗り切るクマやジリスなどの冬眠動物では知られていない現象で、餌貯蔵型の冬眠動物ならではの性質といえる。不飽和化した脂肪酸は低温でも固まりにくくなるため、それ自身や細胞膜脂質の低温での流動性を高め、冬眠に備えた全身脂質組成の変化に必要と考えられる。 これら脂質の異化系・同化系に関わる遺伝子群の同時発現亢進は、長期間の冬条件に置かれてから2ヶ月以降から生じることが時系列解析により判明した。これは、先に観察した、白色脂肪の体重あたりの割合が増加する時期と一致する。つまりこの時点から、体が冬眠に先立ち、脂肪の効率的代謝系を発達させることが明らかとなった。
 こうした脂質の異化系・同化系の同時亢進は、冬眠終了とともに、冬眠前のレベルまで低下した。これは、今回観察された脂質の異化系・同化系の同時亢進が、冬眠という現象と密接に関わることを意味しており、冬眠にとって重要な現象であると考えられる。
 研究グループではさらに、これら脂質代謝の同時亢進がどのようなシグナル経路で制御されうるのかを、シリアンハムスターの白色脂肪組織の初代培養を用いて解析した。
 結果、肥満症や生活習慣病の治療標的でもある、PPARs(ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体)と呼ばれる核内受容体を活性化させるシグナルが、冬眠期のシリアンハムスター生体内で生じることが示唆された。本研究ではこれ以外にも、長期間の冬条件に置かれたシリアンハムスターの白色脂肪組織の中には、ベージュ細胞と呼ばれる、褐色脂肪細胞に類似した細胞が少数であるが出現することも明らかにした。褐色脂肪細胞は体のふるえを伴わずに熱を生み出す能力(非ふるえ熱産生能)を有することから冬眠に非常に重要な器官であるが、白色脂肪細胞内でのベージュ細胞の存在はこれまで冬眠動物では知られていない。
 褐色脂肪細胞やベージュ細胞は、熱産生能だけでなく他組織の代謝調節活性や内分泌組織としての役割も有することがマウスやヒトでの研究で近年明らかになりつつあり、冬眠動物におけるその機能の解明も今後の興味深い課題である。
 本研究で明らかになった、冬眠動物の脂肪の効率的な貯蔵・燃焼の確立に関わる因子を今後明らかにすることで、肥満症や生活習慣病の理解に新しい視座を与え、その治療や予防に有効な手法も見いだせる可能性がある。
 ◆用語の説明
 〇モデル生物
 実験室での飼育や維持が比較的容易で、かつ遺伝学的背景が担保され分子生物学的解析手法などによりメカニズムの因果関係が検証できる生物のこと。多細胞生物ではマウス・ショウジョウバエ・シロイヌナズナ・ツメガエル・メダカなどが代表例。
 〇次世代シーケンサー
 遺伝子をコードするDNA やRNA の塩基配列を高速で大量に解読することができる機械。
 〇亢進
 機能が活発になること。
 〇冬眠終了
 冬条件に置かれたシリアンハムスターの冬眠は、数ヶ月ののち,冬条件に置かれているにも関わらず自発的に終了する。

 昨日・今日ととても寒い。北国では最高気温が0℃以下、マイナス10とか20℃とか、早く寒さが行ってくれ。
 梅田川も一部が氷結している。渡り鳥も少ない・・。


2018年の農林水産物・食品の輸出額、9,000億円超と過去最高を更新

2019-02-09 | 社会・経済
 農林水産省は、2018年の農林水産物・食品の輸出額(速報値)が前年比12.4%増の9,068億円となり、6年連続で過去最高を更新したと発表した(2月8日)。アジアを中心に日本産食品の需要が増えた。世界的な和食ブームや昨年末の環太平洋連携協定(TPP)発効などで農産物輸出は拡大傾向が続くとみられ、2019年の輸出額1兆円という政府目標の達成は現実味を帯びてきた。因みに、2005年は約2,168億円だったから、約4倍近くに増えた。
 輸出額が増えた農林水産物の中には、鶏卵もある。輸出先はほとんど香港。増えた要因として、香港で親子丼やラーメンの煮卵など、半熟が多い日本食での卵の食べ方が広がったことがあると言う。
 鶏卵は世界的に生産されているが、業界団体によると、生や半熟で卵を食べられるようにするには厳しい衛生管理が必要で、こうした管理を行っている国は日本以外にほとんどないと言う。
 ◆農林水産物・食品の輸出額
 大別すると、
 農産物:5,661億円(14.0%)
 水産物:3,031億円(10.3%)
 林産物: 376億円( 6.0%)
 輸出先は、
 トップが香港で2,115億円
 中国が1,338億円
 米国が1,177億円
 〇主な農林水産物・食品の輸出額の動向(速報値)
 品目  輸出額(億円) 増減率(前年比%)
 牛肉   247      29.1
 イチゴ   25      40.7
 日本酒   222     19.0
 リンゴ   139     27.6
 鶏卵    15      49.4
 サバ    266     22.0
 ナガイモ  21     ▲14.1
 植木    119    ▲ 5.3

日本人集団の白血球の血液型を11種類と解明

2019-02-08 | 医学
 ヒトの血液には、赤血球、白血球、血小板といった血球細胞が含まれている。赤血球の血液型(A、B、O、AB型)がヒトゲノム配列上の特定の遺伝子(=ABO遺伝子)のゲノム配列の個人差で決まる。同様に、白血球にも血液型が存在し、HLA遺伝子のゲノム配列の個人差で決定される。白血球の血液型の個人差は免疫アレルギー疾患をはじめ多彩な表現型の発症に強いリスクを有することが知られており、個人のゲノム情報を医療に活用する個別化医療の先駆けとして社会実装が期待されている。また、骨髄移植やiPS細胞を用いた再生医療などの臓器移植を伴う医療行為においては、臓器の提供者(ドナー)と移植を受ける人(レシピエント)との間で白血球の血液型を合致させる必要があることが知られている。白血球の血液型の構成は人種間で大きく異なることから、日本人集団における白血球の血液型の構成の全容解明が強く望まれていた。
 しかし、多数の種類のHLA遺伝子が存在し、各遺伝子が数十種類以上の配列パターンを有するため、白血球の血液型の組み合わせが膨大な数となってしまうことから、その全体像は明らかになっていなかった。さらに、HLA遺伝子配列の構造が複雑で、解読に多額の実験費用と専門的なデータ解析技術が必要となることも、全容解明を遅らせる原因となっていた。
 大阪大学大学院医学系研究科平田潤大学院生、岡田随象教授(遺伝統計学)らの研究グループは、次世代シークエンス技術と機械学習を用いて、日本人集団における白血球の血液型が11パターンで構成されており、その個人差が、病気や量的形質を含む50以上の表現型に関わっていることを明らかにした。
 研究グループは、最先端のゲノム配列解読技術である次世代シークエンス技術を駆使して、日本人集団1,120名を対象に33のHLA遺伝子におけるゲノム配列を決定することに成功した。得られたHLA遺伝子ゲノム配列情報に対して機械学習手法であるtSNEを適用した結果、日本人集団の白血球の血液型を11パターンの組み合わせに分類可能なことが明らかになった。これは、複雑なヒトゲノム情報の解釈を、機械学習手法を用いて実現した先進的な成功例と評価することができる。
 さらに研究グループは、日本人集団17万人のゲノムデータを対象に、白血球の血液型をコンピューター上で高精度に推定することに成功した。推定された血液型パターンに基づき、多彩な表現型との関連を調べるフェノムワイド関連解析を実施した。その結果、50以上の表現型において、白血球の血液型が発症に関与していることが明らかになった。
 本研究成果により、日本人集団における白血球の血液型の全容が解明された。機械学習による白血球の血液型の分類に成功したことは、生命科学研究における機械学習の画期的な応用例と考えられる。さらに、白血球の血液型を用いた個別化医療の実現に貢献するものと期待される。
 ◆用語の説明
 〇次世代シークエンス技術
 生物のゲノムを構成するDNA配列を高速に解読する技術。従来のゲノム解読手法であるサンガー法と比較して桁違いのスループットを誇り、幅広い生命科学研究における重要なツールとなっている。
 〇HLA遺伝子(human leukocyte antigen gene)
 ヒトの血球細胞の一種である白血球の表面に発現する分子で、白血球の血液型を規定する。生体内における自己と非自己の認識や外来性の病原菌に対する免疫反応を司り、多彩な表現型の個人差を規定している。主要な古典的HLA遺伝子(classical HLA gene)においては生物学的な役割の研究や検査方法の開発が進んでいるが、その他の非古典的HLA遺伝子(non-classical HLA gene)については解明が遅れている。
 〇機械学習(machine learning)
 コンピューターに高次元データを学習させることで、データの内部に潜む特徴的なパターンを見つけ出すデータ解析手法の総称。人工知能(artificial intelligence)研究におけるデータ解析手法としても広く活用されている。
 〇バイオバンク・ジャパン
 日本人集団27万人を対象とした生体試料バイオバンクで、東京大学医科学研究所内に設置されている。ゲノムDNAや血清サンプルを臨床情報と共に収集し、研究者へのデータ提供や分譲を行っている。
 〇フェノムワイド関連解析(phenome-wide association study; PheWAS)
 特定の遺伝子変異に着目し、多数の表現型との関連を網羅的に検討する解析手法。
 〇表現型
 生物の外見や特徴として表現された形態的・生理的性質。代表的なヒトの表現型として、病気や身体的特徴(身長・肥満)、血液検査結果、生理検査結果などが含まれる。
 〇個別化医療
 画一的な標準医療でなく、ヒトゲノム情報の違いなど患者さん一人一人の個性を考慮して施す次世代の医療。
 〇tSNE(t-distributed stochastic neighbor embedding)
 機械学習手法の一つ。高次元データの次元を効率的に圧縮することで、低次元のデータ(例:2次元の画像データ)に変換する方法。
 〇ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study; GWAS)
 ヒトゲノム配列上の数百万カ所の遺伝子変異と特定の表現型との関係を網羅的に検討する解析手法。数千人~百万人を対象に大規模に実施され、多数の表現型に対する遺伝子変異が同定されている。

脂肪の摂取に注意、コレステロール値は体形に関係なく高くなる

2019-02-07 | 健康・病気
 滋賀医科大の三浦克之教授(公衆衛生学)らのチームが、「体形に関係なく、コレステロール値は高くなるリスクがあることが約1万7千人のデータ分析で分かった」と、日本疫学会誌電子版に発表した。
 昭和55年(1980年)には肥満の人ほどコレステロール値が高い傾向にあったが、近年はほとんど関連がなくなっていることが判明したという。
 体形別で見たコレステロール値の高い人の割合
        昭和55年 平成22年
  男性
  痩せている人  4.1%  データなし
  適正体重の人 12.8%  29.2%
  肥満の人   26.9%  29.4%
  女性
  痩せている人 13.1%  43.7%
  適正体重の人 28.1%  46.9%
  肥満の人   36.0%  46.0%
 食生活の欧米化で、脂肪分の摂取量が増えたのが一因とみており、「生活習慣病の予防には摂取カロリーを抑える肥満対策だけでなく、食物に含まれる脂肪の量に注意して」としている。
 高コレステロールは動脈硬化の原因となり、心筋梗塞などを引き起こす一因とされる。
 総コレステロール値は、食事でとる飽和脂肪酸の量と密接な関係がある。同調査によると、平成22年は昭和55年と比べ、摂取した総カロリーに占める飽和脂肪酸の割合が男女とも1.5~1.9ポイント増加した。
 ◆体形
 痩せた体形・標準体型・肥満体形を”BMI”で分別する。
 BMIの計算式
 BMI=体重(kg) ÷ 身長(m)÷身長(m)
  身長が150センチ、体重が40kgだった場合は
  BMI=40÷1.5÷1.5=17.77≒18
 分別
 標準を22と設定
  痩せ体形=BMI値18.5未満
  標準体型=BMI値18.5以上~25未満
  肥満体形=BMI値25以上

 今日はとても暖かく、4月中旬並とか。風も弱いので、ひと時春の様だ。
 月に1度は病院に通ってる。持病の薬などをいただく。
 待合室にお花が花瓶に飾ってある。このお花を見るのが好きだ・・見る余裕があるから・・なのだろう。
 お花は、”アルストロメリア”と雪柳、温室でのお花だろうか。
 ”アルストロメリア”には、色々な種類があり、花色の変化だけでなく、原種の系統により耐暑性・草丈・花時期などが異なる。代表的な系統として、ペレグリナ系(矮性、大輪咲き)、オーランティアカ系(常緑、四季咲き)、リグツハイブリッド系(耐寒性、早咲き)、ドクターサルタース系(高生、耐寒性)などがあると言う。
 アルストロメリア
 別名:百合水仙(ゆりずいせん)
    インカの百合(いんかのゆり)
    夢百合草(ゆめゆりそう)
 ユリズイセン(アルストロメリア)科ユリズイセン(アルストロメリア)属
 多年草(塊茎:根が肥大し球根状)
 原産地は南アメリカ、大正か昭和初期に渡来
 丈は30cm~100cm
 開花時期は5月~7月
 花は花びらの斑点やラインが特徴
 花径は4cm~8cm
 花色は豊富で、ピンク・赤・白・黄・紫など


マゼランペンギン調査でメスに事故多い理由解明

2019-02-06 | 生物
 統計数理研究所の山本誉士特任研究員と名古屋大学大学院環境学研究科の依田憲教授を中心とする研究グループが、動物に小型データロガー(記録計)を装着して行動を調べるバイオロギング手法を用いて、南米アルゼンチンに生息するマゼランペンギンのメスが、オスより多くストランディング(衰弱や怪我による漂着)する理由を明らかにした。この研究成果は、平成31年1月8日付(日本時間1時)米国科学雑誌 Current Biologyオンライン版に掲載された。
 マゼランペンギンは冬になると繁殖地から1000km以上も離れたウルグアイやブラジル南部の海域で、毎年、数千羽がストランディングすることが様々なメディアで取り上げられてきた。
 ストランディング個体はオスよりもメスの方が多いことが過去の研究から知られていたが、その理由は謎のままであった。本研究で、マゼランペンギンのメスは、オスよりも繁殖地から遠い、ウルグアイからブラジル南部にかけての海域まで移動して越冬していることが明らかになった。メスが主に越冬している海域は、船舶の往来や油田開発、漁業などの人間活動が盛んな海域と重複しているため、オスに比べてメスの方が飢餓や怪我などによってストランディングする可能性が高いのだろうと考えられる。
 マゼランペンギンはIUCNレッドリストの準絶滅危惧種に記載されており、一部の繁殖地では、近年、個体数の減少が危惧されている。死亡率の雌雄差は繁殖つがい数の減少に繋がり、ひいては個体群や種の存続に大きく影響する。本研究の成果は、当該種の保全対策に大きく貢献するのみならず、近年、社会的ニーズが高まっている生物多様性保全に関する海洋保護区の設定を考える上でも重要な見識をもたらすと期待される。
 研究の背景と内容
 越冬海域の雌雄差の理由として、本種のオスとメスの体の大きさの違いが関係していると考えられる(オスはメスよりも体が大きい)。一般的に、体の大きい個体ほど水中を深く潜ることができる。位置情報に併せてデータロガーに記録された潜水深度データから、実際に越冬期のマゼランペンギンのメスは、オスよりも浅い深度で餌を採っていることが示された。このことから、メスはオスとの餌を巡る競合を避けるため、オスの越冬海域よりもさらに遠くまで北上しているのだと考えられる。その他の可能性として、体の小さなメスは水中でより体温を失いやすいため、低緯度の水温の暖かい海域を好んでいるのかもしれない。
 これまで種の保全に関する議論や活動では、多くの場合、繁殖期の生息域のみが考慮されている。この点において、本研究の結果は、種や生物多様性の保全において、以下の2点の重要性を提唱する。
 ①生物の保全において繁殖期・非繁殖期を含む1年を通した生息域の特定
 ②空間分布動態の種内差を考慮した保全海域の設定
 マゼランペンギンのストランディングは、成鳥よりも巣立ち幼鳥の方が多いこともわかっている(巣立ち幼鳥でもストランディング個体はメスに偏っています)。
 今回の研究により、越冬海域の性差がメスに偏ったストランディングの原因であることが明らかになった。しかし、なぜ、成鳥よりも巣立ち幼鳥の方が多くストランディングするのかについては未だ不明のまま。成鳥と巣立ち幼鳥では、移動パターンや主要な越冬海域が異なるのかもしれない。死亡率の性差と同様に、幼鳥が繁殖個体として新たに加わる数は繁殖個体群の増減に大きく影響する。今後の研究では、当該研究分野において一般的に知見の乏しい巣立ち幼鳥が、繁殖地を離れて数年後に帰還するまでの生態を明らかにすることが喫緊の課題である。
 ◆用語の説明
 バイオロギング
 動物に各種センサーを取り付けて、行動や生態を調査する研究手法(参考:日本バイオロギング研究会http://japan-biologgingsci.org/home/discipline/)。
 マゼランペンギン(Magellanic Penguin Spheniscus magellanicus)
 温帯~寒帯に生息するペンギン。アルゼンチンからチリにかけての沿岸およびフォークランド/マルビナス諸島で繁殖する。マゼランペンギンはカタクチイワシ(Argentine anchovy Engraulis anchoita)を主な餌としており、カタクチイワシの分布の季節変動に呼応して、非繁殖期になると繁殖地から離れて北上する。なお、今回の調査はアルゼンチン南部にある繁殖地Cabo dos Bahias, Chubut, Argentina(44°54?S, 65°32?W)にて実施した。
 ストランディング
 衰弱や怪我などによって海岸に漂着すること。通常、非繁殖期のマゼランペンギンは繁殖期のように陸上で過ごすことは少ない。マゼランペンギンのストランディングの原因として最も多いのは油汚染だが、油汚染が実際にどのように影響してストランディングするのかについては不明である。油汚染の影響は大きく分けて、体表面への付着による影響と体内摂取による影響がある。前者の場合、羽毛の防水能と断熱能が劣化し、低体温症になる。後者の場合、消化管や腎臓の代謝、血液系へ影響する。どちらにせよ、ペンギンは油汚染によって衰弱する。その他にも、漁業の網や漁具による負傷が報告されている。また、多くのストランディング個体(死亡個体)で胃内容物からプラスチック片が発見されている。

2018年の女性就業率が全年齢ベースで5割超え、就業者は2,946万人

2019-02-04 | 社会・経済
 総務省が発表(2月1日)した労働力調査で、2018年の女性の就業率が全年齢ベースで51.3%となり、50年ぶりに5割を超えたことが分かった。人手不足や育児と両立して働きやすい環境づくりが進んだことが背景にある。
 〇2018年平均の就業者数は男女合わせて6,664万人
  比較可能な1953年以降で最多だった
  50年前は農業や自営業など家業で働く女性が多く、就業率も高かった。
 〇女性の就業者は2,946万人で前年に比べて87万人増えた。増加数は男性(45万人)の2倍近い。
  年齢別に女性の就業率を見ると
   25歳~34歳が77.6%で前年に比べて1.9%増
   35歳~44歳は75.8%で同2.5%増
   女性の就業率は出産や育児を理由に30歳代で下がり、40歳代で再び上がる傾向があった。
   年齢層に分けてグラフを描くと「M字」になる現象だ。
   近年は仕事と育児を両立できる働き方が広がった結果、退職する女性は減り「M字カーブ」の解消が一段と進んだ。
 〇2018年は若年層の女性就業率も大きく上がった。15~24歳の伸びは3.9%と年代別で最も高い。
  短時間勤務や未経験者を容認するなど人手不足でアルバイトの就労条件が良くなっていることが背景にある。
  求人情報によると、2018年12月の三大都市圏(首都圏・東海・関西)のアルバイト・パート募集時平均時給も1058円と過去最高。
 〇産業別で女性の就業者が最も増えたのは宿泊・飲食サービス業。2018年平均で260万人と前年に比べて20万人増えた。
  介護現場など医療・福祉で14万人増で続く。
 〇高齢者も含めて女性の就業率が5割に達したことは働き方改革が一定の成果を上げたことを意味する。
  ただし、男性の7割とはまだ差が大きい。北欧諸国では15歳~64歳の女性の就業率が8割に達するが、同年齢層の日本女性の就業率は7割にとどまり、仕事と育児の両立支援などでまだ改革の余地がある。
 〇高齢者の就業率
  65歳以上の就業率は24.3%、75歳以上では9.8%といずれも上がった。
  ただ健康寿命が伸び、働く意欲を持つ高齢者は増えているため、高齢者の労働参加もまだ伸びしろがありそうだ。
  政府は70歳までの就業機会を確保するための法改正を検討している。高齢者の活躍には年齢ではなく、能力や意欲を評価する人事や賃金制度の見直しも欠かせない。

2018年映画興行収入、2年連続微減でも歴代3位の2,225億円

2019-02-03 | 映画
 日本映画製作者連盟の映画興行収入の発表。
 2018年の年間興行収入は、2,225億1100万円(前年比97.3%)。2000年の興収発表以降最高だった2016年から2年連続の微減となったが、歴代3位となった。
 〇2016年の映画興行収入
  2,355億800万円(前年比8.5%増) 比較可能な2000年以降で最高額
  邦画:1,486億800万円(構成比63.1%)
  洋画: 869億円(同36.9%)
 〇2017年の映画興行収入
  2,285億7200万円(前年比2.9%減)
  邦画:1,2454億8300万円(構成比54.9%)
  洋画:1,030億8900万円(同45.1%)
 〇2018年の映画興行収入
  2,225億1100万円(前年比97.3%)
  邦画が占める割合は54.8%
  入場人員:1億6921万人(同97%)
  公開本数:1192本(邦画613本、洋画579本) 過去最多を更新
  平均入場料金:1,315円(前年比100.4%)
 ◆2018年邦画興行収入20億円以上
 「劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」93億円
 「名探偵コナン ゼロの執行人」91億8000万円
 「映画ドラえもん のび太の宝島」53億7000万円
 「万引き家族」45億5000万円
 「銀魂2 掟は破るためにこそある」37億円
 「DESTINY 鎌倉ものがたり」32億1000万円
 「カメラを止めるな!」31億2000万円
 「劇場版ポケットモンスター みんなの物語」30億9000万円
 「検察側の罪人」29億6000万円
 「未来のミライ」28億8000万円
 「8年越しの花嫁 奇跡の実話」28億2000万円
 「映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活」20億4000万円
 ◆2018年洋画興行収入20億円以上
 「ボヘミアン・ラプソディ」104億6000万円
 「ジュラシック・ワールド/炎の王国」80億7000万円
 「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」75億1000万円
 「グレイテスト・ショーマン」52億2000万円
 「リメンバー・ミー」50億円
 「インクレディブル・ファミリー」49億円
 「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」47億2000万円
 「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」37億4000万円
 「ボス・ベイビー」34億4000万円
 「レディ・プレイヤー1」25億5000万円
 「プーと大人になった僕」24億3000万円
 「ヴェノム」22億5000万円
 「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」21億4000万円

インフルエンザ早期診断法を開発、重症化・流行拡大抑止に期待

2019-02-02 | 健康・病気
 東京大などのチームが、インフルエンザウイルスを高感度で検出できる診断法を開発した(英科学誌電子版で1月31日発表)。
 インフルエンザの従来の検査法は、ウィルスが一定量以上必要であり、発熱などの症状が出てから半日以上たっていないと確認できない。検査には、綿棒を鼻や喉の奥まで入れて粘液を採取するため、乳幼児には身体的負担が大きいことが課題だった。
 チームは、ウイルス表面にあるタンパク質(ノイラミニダーゼ)と反応して光を発する試薬を用意。60万個の微小な穴がある容器に患者の検体と試薬を入れ、光を発する穴の数で感染の有無や濃度を調べる方法を開発した。従来の1万倍の感度で感染初期からウイルスの検出が可能という。患者のうがいで使った水で検査した場合でも千倍の感度という。
 発症前でも体から出るウィルスを検出できる可能性があり、タミフルなどの治療薬を服用すれば、発症しないまま治すこともできそうだ、と言う。

 散歩道沿いのマンション玄関横の”セイヨウヒラギナンテン”。冬に花が咲く、開花期間は冬(11月~翌1月)、珍しい花だ。
 花は噴水の様に枝先から長く総状花序を散形に出し、横~下向きの花穂に沢山の小さな黄色い花が咲く。枝の付け根から順次上へと咲く。実も花と同じく、横~下向きの枝に付いている。
 ”セイヨウヒイラギナンテン(西洋柊南天)”は”ヒイラギナンテン(柊南天)”と”オイワケヒイラギナンテン(追分柊南天:マホニア・ロマリフォリア)”の種間交雑種と言われる園芸種と言う。花の咲き方は”オイワケヒイラギナンテン”に似ている(冬に咲く、黄色の花、上向き花穂)。柊南天(ひいらぎなんてん)の花は3月~4月に咲き、西洋柊南天(せいようひいらぎなんてん)の花は11月~翌1月に咲くので冬咲きの柊南天と言われる。
 セイヨウヒイラギナンテン(西洋柊南天)
 学名:Mahonia x media Charity
 別名:マホニア・メディア・チャリティー(学名から)
 メギ科ヒイラギナンテン属
 常緑広葉低木
 開花時期は11月~翌1月
 花穂は噴水の様に上向き、花は芳香があり径数mm、花色は黄色
 果実は楕円形で青色~青紫色


健康を脅かすリスク、1位:高血圧・2位:喫煙・3位:空腹時高血糖

2019-02-01 | 健康・病気
 日本を含む国際共同チームは、健康リスク(健康を脅かすリスク)の研究結果を発表した(発表は英医学誌ランセット)。
 チームが解析したのは、喫煙や飲酒など生活習慣のリスク、空腹時高血糖や高血圧など代謝に関わるリスク。195の国と地域のデータを基に、それぞれのリスクが2017年の1年間にもたらした死者数など健康への影響の大きさを推計した。
 最も影響が大きかったのは、高血圧で死者数は1040万人に上った。次いで喫煙で死者数は710万人。3位は、空腹時高血糖で死者数653万人だった。
 因みに、世界保健機関(WHO)は、国民の所得の多い先進国と所得の低い途上国との医療格差が大きいとし、米国や欧州、日本など先進国では、死亡につながる危険因子として、喫煙・高血圧や過体重・肥満を上位に挙げている。途上国では低体重児・高血圧や安全でないセックス(エイズなどの感染)が上位になっている。
 ◆世界規模の健康リスク
 2007年
 1位:高血圧
 2位:妊娠期間が短いことによる低出生体重
 3位:喫煙
 4位:子どもの発育不良
 5位:妊娠期間の割に出生体重が小さいこと
 2017年
 1位:高血圧
 2位:喫煙
 3位:空腹時高血糖
 4位:高い体格指数(BMI)
 5位:妊娠期間が短いことによる低出生体重
 ◆日本の高血圧性疾患による死亡数(平成27年(2015年)の1年間)
     厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」による
 高血圧性疾患による死亡数は6, 726人
    性別:男性2,605人、女性4,121人
    内訳:高血圧性心疾患および心腎疾患が3,213人、その他の高血圧性疾患が3,513人
 平成27年(2015年)の日本の死亡数は129万人
    死亡数の死因順位
    (1)がん(37万131人)
    (2)心疾患(19万5933人)
    (3)肺炎(12万846人)
    (4)脳血管疾患(11万1875人)
    (5)老衰(8万4755人)