春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

冬のアート散歩2011年12月

2010-02-07 19:07:00 | アート
2011/12/27
ぽかぽか春庭十一慈悲心鳥日記>2011年歳末(11)冬の徘徊

 冬は寒さに負けて徘徊が減っています。12月のお散歩は、12月1日に三鷹のICUキャンパスを歩きました。お目当ての泰山荘は、国の重要文化財。内部公開があった大学祭のおりには、見ることができなかったのですが、せめて外観だけでも見ておこうと、仕事の帰りに寄り道しました。

 泰山荘には、表門、茶室、待合などがあります。ICUが三鷹の土地を買ったときに建物もそのまま譲り受け、そのまま保存してきた歴史的な建造物です。「高風居」と呼ばれる建物には、「一畳敷」と、六畳の茶室三畳の水屋があり、入母屋造、萱葺き、平屋建。
 「一畳敷」は、松浦武四郎(1818-1888北海道探検家・北海道という地名の名付け親)が、各地の神社仏閣や歴史的建造物の古材を使って建てた書斎で、六畳の茶室は「一畳敷」のために徳川頼倫(1872-1925紀州徳川家第15代目。侯爵)が、やはり歴史的建造物の古材を集めて建てたものです。明治初期に多くの地方の神社が国家神道の統合のために廃され、神社や寺の建物が毀された経緯があり、古材が出たものを利用したのではないかと推察されます。
http://bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.do?heritageId=137138

 今年、各地の紅葉が色づきが遅かったなか、12月の泰山荘は、表門から覗くと、門の奥に紅葉が夕日を受けて輝き、とてもきれいでした。親子連れのように見えるグループが見学していました。ICU女子学生が母親たちを連れて、キャンパスを案内しているところだったみたい。中を見ることができなかったのは残念ですが、これはまた来年の文化財公開のときにでも。

 12月4日日曜日、午後、白金台へ。白金の自然教育園を散歩。こちらはさらに紅葉の色づきが遅く、イロハモミジはまだ緑。オオモミジはちょっと色づいていました。園内一周してしてから松岡美術館へ。
http://www.matsuoka-museum.jp/exhibition/

 「日本の和美彩美(わびさび)」と題した展覧会、前期展示をみたのだけれど、後期にまた展示替えがあるというので、招待券もらって見ました。
「物語の絵」は、源氏や伊勢などを題材にした日本画が展示されていました。展示室6の「風景を感じる~秋から冬へ~」は、前回来たときとは展示替えになっていた絵です。

 松岡美術館は、貿易で財をなした松岡清次郎が、1975年に自宅を美術館にしたものです。ホキ美術館も、文具小売業からはじめて医療用不織布製品、滅菌用包装袋(メッキンバッグ)など医療用キット製品の会社を成功させた保木将夫(1931~)がコレクションを公開するために昨年設立した美術館です。

 12月18日日曜日、千葉経由土気へ。駅前でおひるを食べてから1:00~3:00、ホキ美術館見学。こちらも招待券もらったので、出かけたのだけれど、思った以上に遠かった。しかし、館内はけっこう賑わっていました。隣に広がる「昭和の森」に遊びに来ている千葉市民がついでに立ち寄るらしい。千葉市民は無料で見られるのかも。一般の入館料は1500円とるので、わたしゃ招待券がなければ、ここまで来ない。

 絵を見ているのは主として中高年の善男善女。「あれぇ、写真のようだねぇ、よくかけてる」と感心しながら見ています。写真のようにそっくりに写し取るのが上手な絵なのだと、図画工作の時間に教わった世代です。「このパン、美味そうに描けてるよ。焼きたての色だね」なんて声も聞こえます。

 私は、印象派や立体派、野獣派などから絵を見始めたので、写実はあまり好きではありませんでした。この夏に磯江毅の超リアル絵画を見て、「あ、写実もいいかも」とやっと思えたのです。それまでは、「見えるとおりに写しとるなら、カメラで撮影したものでも同じでしょ、という気持ちが抜けなかった。グスタボ・イソエを見て、「ああ、カメラが一瞬を写し取った写真と、画家が1年も2年もかけて写し取る写実は、異なる表現なのだ」ということを感じたのです。

 ホキ美術館にも磯江が4点ありました。ほかに、ホキコレクションのきっかけとなった森本草介の作品が30点のコレクションの中から何点も展示されていました。日展理事長中山忠彦の奥さんをモデルにした肖像画は、以前にまとめて見たことがありましたが、そのほか、私の知らない写実の画家が展示されていました。
http://www.hoki-museum.jp/about/index.html

<つづく>
09:54 コメント(1) ページのトップへ
2011年12月28日


ぽかぽか春庭「ホキ美術館&昭和の森」
2011/12/28
ぽかぽか春庭十一慈悲心鳥日記>2011年歳末(12)ホキ美術館&昭和の森

 リアリズムとは何か、ということを考えてきたので、ホキ美術館でこうしてまとめて写実絵画を見るのも感慨ふかかった。
おじさん、おばさんたちは「写真のようにそっくりに描けてるね」と感心していました。正直な感想と思います。でも写真と同じだったら、写真を撮れば今時、素人がデジタルカメラで写しても、ちゃっちゃと風景なり人物なり撮影でき、手っ取り早い。1枚の絵に1年間ときには2年間もかけて絵筆を走らせるのは、写真とは違う写実をキャンバスに定着させる忍耐強い情熱があるからであり、その画家の時間は、確かに画面から感じとることができます。

 人物も、風景も、静物も、それぞれに見所がありました。ただ、花を描いたものでよいと思ったのは、秋の野草を描いた一枚だけで、あとの花の絵は、牡丹もバラも、私には「よくできた紙の造花」に見えたのです。花の生命力を写し取る技術というのがどれほど難しいのか、よくわかりました。花をリアルに描くと造花に見えてしまう、というのはどういうわけなのか、わかりません。植物園などで「植物画コンクール」などの展示があるとき、ときどき見て来ましたが、こちらの「植物記録のための写生」は大丈夫なのに、「芸術のための写実」だと造花になる、これは不思議。

 リアリズム絵画ばかり見ていて、少々疲れました。ひたすらリアル。
 途中、隣の「千葉市昭和の森」に行き、「閉門まであと1時間しかないけれど、料金は2時間分払ってもらうよ」と言われながら、自転車を借りました。貸し自転車の係のおじさんに「おや一人かい、カレシはどーした」と聞かれました。ほっといてくれ。ここでも「オトモダチいない残念な人」と思われたのでしょう。美術館は一人で見ていても誰もなんとも思われないのに。サイクリングとなると、オバハンひとりで自転車に乗るのは反社会的なこととでも?

 生来のへそ曲がりなので、サイクリングロードからはずれて、どんどん森の中を行くと、道は階段になってしまい、自転車かついでの下りも上りも難儀して汗をかいた。決められたとおりの楽な舗装道を通りたくなくて、藪道に入り込み、人の何倍も苦労を背負い込んで、苦労の末に出た道は、他の人が楽々通った舗装道。しかも何周もの周回おくれ。まったく、どうして私はこうなのか。

 平らな道では、夕暮れ間近の森の中、楽しそうに二人連れ親子連れが散歩している中、ひとり走りまわって、まあ、本日食べたランチの分はカロリー消化して、美術館に戻りました。

 再入館のチケットを見せて、もう一度館内ひとめぐり。
http://www.hoki-museum.jp/gallery/02.html
http://www.hoki-museum.jp/gallery/03.html

 土曜日は6時までやっているということでしたが、来るとき2時間もかかったので、帰宅時間を考えて4時半にロッカーから荷物を出しました。そうしたら、あら、見たような顔が。館内に展示されていた肖像画そのままの保木館長でした。はあ、ほんとにリアリズム。
 以前、展覧会案内のチラシにもこの肖像画が載っていたのを見ました。このときは「一代で財をなした金満家」そのものに見えたので「なるほど、こういう人が、お金が有り余ると絵を買いたくなるってわけか。金が余ったからといって集めた絵、どんだけ絵が好きなのかなあ。バブル期のように利殖目的なんかで絵を買いあさる人だといやだなあ」という気持ちがあって、「千葉に写実絵画美術館オープンした」というニュースは知っていたけれど、これまでは見に来る気になれなかった。

 でも、コレクションはなかなか充実したものだったので、コレクション公開に対するお礼の気持ちを伝えようと、声をかけたら、気軽に話してくれました。写実絵画コレクションをはじめた動機などおたずねしたら、「私には美術はわからないので、見てすぐに何が書いてあるかわかる写実絵画だけを集めたんです」ということをおっしゃった。

 正直なお話に、ちょっと館長を見直しました。リアリズムとは何か、というような蘊蓄を語る人ではなく、館長は「見てすぐわかる絵を集めた」と率直に語る。全国に数ある美術館館長のなかで、いちばん「絵について造詣がない人」かもしれません。でも、絵を愛していることはわかりました。
 ちょっと遠いので、ちょくちょく来ることはないと思いますが、また招待券もらったら、見にきましょう。

 私の歳末。あまり「師走」ということもなく、ぶらぶらと冬をすごしています。まあ、こんな「相も変わらず」が私に日常であり、私の1年です。

<つづく>

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする