
0909 2021二十一世紀日記夏(5)昭和の暮らしを続けるいじわるばあさん
20210928
ぽかぽか春庭ニッアにっぽん語教師日誌>日本語教師養成講座夏・漢字教育基礎(2)日中漢字熟語意味違いその2
日本語教師志望者に、中国人学習者への漢字教育で注意すべき点としてあげてきた、「日本語と中国語の同文字熟語で意味が異なる語」のつづきです。
~~~~~~~~~~~~~
4-1覚悟
日本語(かくご)――困難や不利な結果が出るかもしれないと予測して、心を決めること。「どんなに難しくてもあきらめないで、感性させる覚悟です」
中国語――(理論や政策に)めざめる、自覚する。「有覚悟」「覚悟高」の人とは、「中国共産党の理論、路線、政策に対する意識や理解が高い人の意味。
4-2教養
日本語(きょうよう)――学問・文化に関する広い知識を身につけることで得られる心の広さ。
中国語――人のよくない習慣やくせを強制的な手段によってなくす、という意味の動詞。
また、「しつけ」という意味の名詞。「労働教養院」=強制労働収容所
4-3作風
日本語(さくふう)――作品に表れる作者特有の個性。「彼の作風は少年時代の生活環境が深く関係している」
中国語――人の思想、生活態度をいう。中国語で「作風がよい」というと、その人の異性関係が潔癖で、逆に「作風がよくない」というと、まず異性関係がだらしないというイメージが浮かぶ。
4-4勉強
日本語(べんきょう)――(1)学問や技術に励み努めること。(2)無理して商品の値引きなどをする
中国語――無理をして何かをする、自分の意に反してしぶしぶ何かをすること。
4-5出世
日本語(しゅっせ)――昇進、栄達すること。「彼は取締役に出世した」
中国語――語源は仏教用語「世」は俗世間のことで、「出世」は、「世に出る」つまり、(1)生まれること、(2)「世を出る」つまり、出家する。(日常語ではない)
4-6作為
日本語(さくい)――よく見せようとして、わざわざ仕組んだり、手を入れたりする
こと。「データを作為的に変更した」
中国語――業績、貢献。
日本では基本的に「無作為」をよしとし、中国では「有作為」をよしとする。
4-7収集
日本語(しゅうしゅう)1--「集める」「火曜日には粗大ゴミを収集する」
中国語1--では収集
の対象は価値あるもの、有用なものに限られるが、日本語では「ごみ」にも「収集」が使われる。
4-8暗算
日本語(あんざん)――「筆算」の反対語。紙・鉛筆や計算機などを使わないで頭でする計算。中国語では「口算」「心算」
中国語――だまし討ち、ひそかにたくらんで人を殺す、または陥れる。日本語では「暗殺」。
4-9遠慮
日本語(えんりょ)――他人に気を使って言動を控えめにすること。「ここではタバコ
はご遠慮ください」「遠慮なく頂きます」中国語では「ご遠慮無くどうぞ」は「不客気」
中国語――将来のことを深く考えること。
4-10温存
日本語(おんぞん)――何かを使わないで大事に保存しておくこと。「試合に備えて体力を温存する」日本語は「副詞+動詞」、「暖かく(大切に)保存する」、
中国語――人、ことに異性に対して大変優しい。中国語は「主語+述語」、「温かみが存在する」から、思いやりがある、やさしい、という意味になる。
4-11合算
日本語(がっさん)――数字を合計する。
中国語――(1)合計する (2)「考えてみる」「相談してみる」
4-12我慢
日本語(がまん)――辛抱強く耐える、こらえる。「疲れたけれど、我慢して走った」
中国語――「主語+述語」、「私は遅い」。 張麟声『日中ことばの漢ちがい』(くろしお出版2004年)から引用したものを編集したリストつづき。
4-13工夫
日本語(くふう)――いろいろと考えてよい方法を得ようとすること。「なにかうまい工夫はないか」
中国語――何かをするのに要する時間、暇。「没有那样的工夫 そんな暇はない)」
4-14無心
日本語(むしん)――(1)雑念や邪心がないこと。「彼は無心に仏像を彫っている」「少女が無心に笑っている」(2)金や物をあつかましくねだること「友だちに金を無心した」
中国語――「無心」の「心」は意図性。わざとしたことではない、なにかをする気が起こらない。「この事故は無心で起きたことだ」
4-15留守
日本語(るす)――(1)家を空けること、不在。「旅行するのでしばらく留守にします」(2)(他のことに気をとられて)すべきことをしないで放っておくこと「ほかのことを考えていたので、頭がお留守になっていた」(3)中国語と同じ使い方「留守番」
中国語――留まって守ること。軍隊や各種の団体の本体が移動して現地を離れた時、少数の人が残ってその留守を守ること。
4-16結束
日本語(けっそく)――人間を結ぶ、人々を束ねる。同じ志の者が力を合わせて団結すること。「賃上げのため結束して交渉する」
中国語――終わる、終結する。人間の手に持っている武器、道具。道具や武器を「結び束ねてしまう」ことは、仕事や戦が終わる、終結する時のこと
4-17裁判(審判)
日本語(さいばん)――法に基づいて訴訟を裁くこと。中国語では「審判」
中国語――スポーツ競技で勝ち負けや反則の有無を判断すること。日本語では「審判」
4-18翻案
日本語(ほんあん)――既成の作品の大筋を生かしながら、作り変えてゆく作業。「この映画は、シェークスピアのハムレットの翻案です」
中国語――ある人に関するそれまでの判決や歴史的な評価を覆して、新しい決定をくだすこと。「修正主義者として失脚した鄧小平は3度の翻案を経験した」
以上、日本語と中国語の意味のちがいを並べてみました。これ以外にもたくさんあるとは思うのですが、基本的な語彙は拾ったと思います。
<つづく>
20210926
ぽかぽか春庭ニッポニアにっぽん語教師日誌>日本語教師養成講座漢字教育基礎(1)日中の漢字熟語の意味違い
タスク3-7 次の語彙の意味について、日本語と中国語の意味の違いを言ってください。
1-1愛人 1-2丈夫 1-3大丈夫 1-4外人 1-5先輩
2-1下水 2-2階段 2-3趣味 2-4手紙 2-5情報 2-6案件 2-7縁故 2-8今朝 2-9顔色
3-1清楚 3-2可憐 3-3元気 3-4怪我 3-5緊w張 3-6得意 3-7快楽 3-8上品・下品 3-9馬鹿 3-10恰好 3-11結構
4-1覚悟 4-2教養 4-3作風 4-4勉強 4-5出世 4-6作為 4-7収集 4-8暗算 4-9遠慮 4-10温存 4-11合算 4-12我慢 4-13工夫 4-14無心 4-15留守 4-16結束 4-17裁判(審判)4-18翻案
3-7 解答
1-1愛人(あいじん)
日本語--妻以外に恋愛関係を持っている女性で、とくに経済的に援助をしている女性をさす。
中国語--配偶者。妻または夫。
1-2丈夫(じょうぶ)
日本語――身体や物がしっかりしていること、頑丈で壊れにくい。「丈夫な身体、丈夫な椅子」 古代日本語では「丈夫(読み方は、ますらお)」=強い男
中国語――男の配偶者、妻に対していう夫のこと。昔の中国語では、堂々とした強い成人男子のこと
1-3大丈夫(だいじょうぶ)
日本語――問題ない、心配することはない、という意味。
中国語――立派な一人前の男、古代の漢語の「丈夫」と同じ意味=夫
1-4外人(がいじん)
日本語――外国人。
中国語――家族や親戚以外の「他人」。或いは、自分の属する組織や範囲以外の人。「私は外人とはつきあわない」と言った場合、「自分の所属しているグループの外の人とは交際しない」という意味になります。
1-5先輩(せんぱい)
日本語――同じ学校や職場に先に入った人、或いは先に卒業・退職した人。
中国語――自分より前の、つまり親の世代のこと。中国語の「後輩」は自分より後の子供の世代。「先輩は、文化大革命で苦労をした」と言うとき、日本語なら具体的なひとりの人を指すのですが、中国語では「親の世代の人は、文革で苦労した」の意味になります。
2-1下水
日本語(げすい)――家庭などから出る汚水。上水の対義語
中国語――日本語と同じ意味のほかに、豚など家畜の内臓(もつ)(水に下げて煮る)、船が進水する、悪の道にはいる(普通の暮らしを営む陸から通常は暮らさない水へ下っていく)、布を水につける、など。
2-2階段
日本語(かいだん)――人が上がり下がりするための段になった通路。中国語では「台階、楼梯」
中国語――日本語の「段階」の意味。物事が進む過程のひとくぎり。時間的な概念で、例えば、封建社会から資本主義社会に移行したことを社会が新しい「階段」に入った、という。
2-3趣味
日本語(しゅみ)――読書、音楽鑑賞など、余暇の楽しみ。中国語では「愛好」に相当。
「私の趣味は薔薇の栽培です」
中国語――人生観(古代中国語、古典語のみ)2-4手紙
日本語(てがみ)――書状、レター。手で書く文字「手」手で習う文字→手習い
中国語――トイレットペーパー。「トイレに行くこと=解手(手を解く)」手は用便の隠語。
2-5情報
日本語(じょうほう)――インフォーメーション、中国語の「信息」。
中国語--「軍事情報」のように、国家の機密や安全にかかわる事柄。
2-6案件
日本語(あんけん)――処理されるべき事柄。「外交案件」「予算案件」外交・予算に関して検討や処理すべき事案。日本語の「案」は、「アイデア」または「考える」という意味。考案、思案、妙案。日本語独自の漢字語「腹案、思案」。日本から中国へ伝わった漢字語「草案、提案」
中国語――事件。中国語の「刑事案件、民事案件」は、日本語では「刑事事件、民事事件」。「案」は昔は机の意味。古代中国の役人たちが「案」の前に座って処理するさまざまな問題が「案件」。古代中国の役人たちが処理していた問題の多くは訴訟事件だから、「案件」は実質的に「事件」だった。
2-7縁故
日本語(えんこ)――血縁、縁戚などの縁続き、人と人とのかかわり・つて。「東京には一人も縁故がない」「縁故をたよって就職した」
中国語――理由、原因
2-8今朝
日本語(けさ)――今日の朝「今朝は早起きしたので眠い」日本語の朝は日の出前後から数時間。
中国語――今日、または今現在。中国語にはmorningのほかに「一日」の意味もある。
2-9顔色
日本語(かおいろ)――顔の色。「今日は顔色がよくないね。どうかしたの」
中国語――顔だけでなく、いろいろなものの色。
3-1清楚
日本語(せいそ)――女性や花の清らかな美しさをいう。
中国語――「はっきりとしている」という形容詞と「分かる」という動詞。
3-2可憐
日本語(かれん)――いじらしい、かわいい。「可憐な花、可憐な少女」
中国語――かわいそうな。可憐的老人(孤独でかわいそうな年寄り)
3-3元気
日本語(げんき)――健康で勢いがよいこと。挨拶用語として「げんきですか?」
中国語――人だけでなく、社会、組織などの生命力、活力、精気の意味。
3-4怪我
日本語(けが)――(1)負傷 (2)失敗、思いがけないこと「深入りすると怪我をするよ」「怪我の功名」
中国語――単語としての意味はない。「我(私を)責める」「私のせいだ」という主語述語をもつ文。「怪」は「とがめる、責める、人のせいにする」という動詞。
3-5緊張
日本語(きんちょう)――失敗が心配で心や身体が引き締まること、両者の関係がうまくいかず、今にも争いが起こりそうな状態。
中国語--日本語と同じ用法のほか、物に関する用法がある。「最近鋼材緊張(さいきん、鋼材が不足している)」
3-6得意
日本語(とくい)――(1)ある種の成功を収めて満足している人の気持ち。「大学に合格して得意になっている」(2)「得意なスポーツ、得意な料理」のように上手にできる事柄、「得意先」(ひいきにしてくれる客)
中国語--(2)の用法は中国語にはない。(1)のみが使われる。
3-7快楽
日本語(かいらく)――ここちよい、楽しい(日本語では肉体的感覚が強い)「男の快楽」というと、異性関係を含む身体的快楽の意味合いが強くなる。
中国語1--主に精神的なものについての心地よさ。「快楽的単身漢」という中国映画のタイトルの意味は「家族親戚など係累がなく自由気ままに暮らす独身男」という意味
3-8上品・下品
日本語(じょうひん・げひん)――日本語では人の言動を評価することば。上品な婦人、下品な言葉など。語源の仏教用語では極楽浄土に往生する人が9段階に分けられ、上の3段階を「上品」、下の3段階を「下品」ということに由来する。
中国語――人ではなく、物についていう。
3-9馬鹿
日本語(ばか)――(1)知能の働きがにぶいこと(人)。「無知」の意の梵語mohaから来たらしく、「馬鹿」は当て字。(2)ナ形容詞「ばかな」は「愚かな」「有り得ないほど意外な」の意。「そんなバカな!」
中国語――「馬」のような「鹿」、鹿の一種。
3-10恰好
日本語(かっこう)――体裁(ものの形、姿、様子)がちょうどよい。「恰好がいい男性」「この服は恰好はよくないけれど、暖かいよ」さらに、「恰好の値段」(値段がちょうど手ごろであること)、「50恰好の女性」(だいたい50歳くらいの女性)
中国語――ちょうどそのとき、おりよく。「恰」は「ちょうど」、「好」は「よい」の意だから、「ちょうどよい」ことが中国語では「ちょうどよいとき」
3-11結構
日本語(けっこう)――(1)満足のゆく状態であること(すばらしい)。「結構なお住まいですね」(2)まずまず満足の状態(かなり)。「この店の料理、結構いけるね」(3)現在の状態で満足しており、それ以上を必要としない様子(丁重に断る言葉)。「もう結構です」は、いろいろなニュアンスがあり、前後関係などから判断する必要があり、日本語学習者は要注意。「この文章、けっこう良い出来だね。(思った以上によく書けている場合につかう)」
中国語――構造、構成。「この文章、結構良い」というと、中国語では、「この文は(表現はそれほどではないが)構造が良い」となる。
つづきは次回
<つづく>