2014/04/15
ぽかぽか春庭@アート散歩>桜めぐりと花のアート(5)金唐紙の花in 紙の博物館
4月5日、旧醸造試験場を見学したあとの紙の博物館見学は、1週間日延べしました。飛鳥山はものすごい人出だったので。
4月12日には、金唐紙の復元技術者上田尚(うえだたかし1934- )のギャラリートークがあるというので、上田さんのお話も聞きたかったし。
金唐革紙について、何度か紹介してきました。ヨーロッパで壁の内装に用いられた金唐革(きんからかわ)の技法を、江戸時代に和紙を使って再現した工芸品。革ではなく、錫などの金属箔を貼った手すき和紙に,文様を彫った版木棒を重ね凹凸をつけ,彩色してあります。江戸時代には好事家の煙草入れなどに用いられて珍重されたそうです。
幕末から明治になると、金唐紙は欧米に輸出され、宮殿の壁紙として用いられました。「皮に見えるけれど紙で作った最高級壁紙」として人気が高かったのですが、制作に手間がかかることから値段も高く、機械製品との競争に敗れて衰退しました。戦後は後継者も途絶え、幻の紙となっていました。
上田尚さんは、1983年から30年に渡って金唐紙の復元研究を続け、歴史的建造物の壁面修復などに携わりました。金唐革紙の復元品は、上田氏によって金唐紙と命名されました。
私は、旧岩崎邸の壁紙を見て、はじめて金唐紙を知りました。世界に誇るべき日本の工芸品だと感じました。
金唐紙の壁紙
今回の紙の博物館の展示は、上田尚さんの傘寿記念ということです。上田さんは金唐紙研究所を設立し、後進を育成しながら、1987年、日本郵船小樽支店の壁面修復して以後、呉市の入船山記念館、神戸の移情閣などの壁紙制作にあたりました。
写真だと凹凸がわかりにくいので、美しさが半減してしまいます。
4月12日には、14時と15時の2回、上田さんのギャラリートークがありました。私は14時の回のトークをきいたあと、会場内のビデオコーナーで「金唐紙制作の工程」のビデオを見ているうちに15時の回が始まったので、同じお話でも聞く価値あると思ってもう一度きくことにしました。1回目は一般見学者が多かったので金唐紙を説明する一般的なお話が多かったのですが、2回目は1回目も聞いた客のほか関係者が多かったということで、またちがうお話を聞くことができました。
作品制作にかかわる裏話や苦労話、これからの作品への意欲など、80歳の上田さんが熱意を込めてお話になるのをうかがいました。
作品のもとになる版木ロールは、紙の博物館に所蔵されているものを使うほか、新たに彫刻を行うこともあるのだそうです。しかし、新たな版木は、ロール一本制作するのに500万円かかるそうで、博物館所蔵の117本のロールの中から選ぶほうが多いとのこと。
同じ版木を使っても、彩色によって全然違う作品に見えます。
会場に展示されている金唐紙はどれも、華麗、荘厳。特に、傘寿を前に昨年制作された「田園風景」という作品。とても見事でした。
会場にはお弟子さんの池田和広(1972-)さんがおられて、パンフレットを見学者に配ったりお手伝いをされていましたが、2回目のトークでは上田さんに話をふられて、後継者としての抱負を述べていました。
博物館のミュージアムグッズ売り場で売られている金唐紙のしおりや小物入れなどを購入すると、上田尚さんがサインをしてくれるというアナウンスがあり、見学者たちは、買い求めた作品にサインをしてもらっていました。横3センチ、縦12センチという大きさのしおりが1枚1500円だったかな。ほしいなあとしばし悩みましたが、1枚100円の金唐紙絵葉書を買いました。絵葉書ではサインはしてもらえないけれど。
この大きさのしおりが1500円なら、壁一面に貼ったら数千万円になるというのもうなずけます。
制作過程がわかる展示もありました。錫箔にワニスを塗って金色をだしていることが多く、本物の金箔を使うこともあるけれど、制作費が莫大になるし、錫箔のほうがかえって金色が深いというお話でした。銀箔もあるそうです。
我が家の壁を金唐紙にすることは一生無理ですが、せめてしおりくらいはためらわずに買えるようになりたいわぁ。
4月12日土曜日の飛鳥山公園。ソメイヨシノは散ってしまい、葉桜になる前の、赤い萼が残っている状態です。しかし、ソメイヨシノより遅く開花する八重桜、里桜、鬱金桜などが盛りで、5日ほどではないですが、花見客の宴会シートも広げられていました。
鬱金桜。うっすら緑色を帯びた桜です。
飛鳥山公園の八重桜
4月第3週目からは、週5日、5つの大学の6つのクラスで、留学生への日本語教育、日本人学生への日本語学、日本語教育学など5種類の授業を担当する日々が続きます。
美しいものを見て目の保養をした日々に別れを告げ、脳と体力を消耗する日々へ。大丈夫、たっぷり心に栄養補給ができたから、、、、。あ、心だけでなく、体への栄養補給がたっぷりすぎたようで、どうにも動きがにぶいです、、、、。
<おわり>