20230808
ぽかぽか春庭アート散歩4>2023アート散歩炎帝(1)テート美術館展 in 国立新美術館
7月31日月曜日。月曜日に美術館へ行くのは、選択肢が限られます。ほとんどの美術館は月曜日休館ですが、六本木の3つの美術館のみ、火曜日休館です。森美術館は、現代美術だったのでパス。サントリー美術館「虫めづる日本の人々 」展、国立新美術館「テート美術館展」の二択です。「虫」はサントリー美術館蔵が多そうなので、そのうちまた見る機会がありそう。テートは、次にイギリスからやってくるのはいつになるかわからない。決まり。テートです。
国立新美術館は乃木坂駅直結だったのに、都営線に乗り、六本木で降りました。六本木と乃木坂はつながっていると思い込んでいたのです。国会議事堂駅と溜池山王駅は別々の地下鉄路線の駅ですが、中でつながっています。麻布十番駅も中で都営地下鉄から南北線へ移動することができるので、路線図では線路が交差している乃木坂と六本木もつながっていると思ってしまった。でも都営線とメトロはつながっておらず、10分ほど日盛りの中を歩きました。街路樹の木陰を選んで歩きましたが、熱中症にならなくてよかった。
「テート美術館展」ぐるっとパス割引100円引きで2100円。シルバー割引はなし。著作権が残っている作品の撮影禁止以外は、撮影自由。
新国立美術館の口上
本展は、英国・テート美術館のコレクションより「光」をテーマに作品を厳選し、18世紀末から現代までの約200年間におよぶアーティストたちの独創的な創作の軌跡に注目する企画です。
「光の画家」と呼ばれるジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーや風景画の名手ジョン・コンスタブルといった英国近代美術史を彩る重要な画家たちの創作、クロード・モネをはじめとする印象派の画家たちによる光の描写の追求、モホイ=ナジ・ラースローの映像作品やバウハウスの写真家たちによる光を使った実験の成果、さらにブリジット・ライリー、ジェームズ・タレル、オラファー・エリアソン等の現代アーティストによってもたらされる視覚体験にまで目を向けます。
本展では、異なる時代、異なる地域で制作された約120点の作品を一堂に集め、各テーマの中で展示作品が相互に呼応するようなこれまでにない会場構成を行います。絵画、写真、素描、キネティック・アート、インスタレーション、さらに映像等の多様な作品を通じ、様々なアーティストたちがどのように光の特性とその輝きに魅了されたのかを検証します。
第1室
ターナー以前の西洋画は、聖書の中の一場面を描く宗教画や歴史画が上等の画題であり、風景画や社会の人々を描く世俗画は、一段と低いものとみなされていました。ルネッサンス以後、静物画や風景画を描く画家も出てきましたが、モナリザの背景に美しい風景を描かれたように、風景は添え物でした。18世紀になり、「崇高」という概念が絵画に入りました。恐怖、畏怖の気持ちから至高の存在をあがめる気持ちをもたらす、アルプスなどの峻険な高山や渓谷、大海などが描かれるようになりました。
ジョセフ・ライト・ダービー「噴火するヴェスヴィオ山とナポリ湾の島々を望む眺め」1776-1780
火山噴火の強烈な光が表されている絵ですが、ひとめ見た時違和感がありました。「え~、これ、ほんとに噴火の写生?なんかウソっぽいんですけど」と感じました。解説を読んでから納得するのは本意ではないのですが、画家ダービーは、噴火を実際に目にして描いたのではなかった、という説明に「なるほど、やっぱりね」と、納得。
「噴火するヴェスヴィオ山とナポリ湾の島々を望む眺」は、全展示作品の中で、最も古い時代に描かれており、展示No.1なのに、観覧者は、ターナーを見てから、No.1のダービーを見るようになっています。自然に沿って描いたターナーらに比べると光の感じ取り方が違っているからかと。「光」をテーマとする展示なので、No.9のターナーから見てほしかったのだと思います。
ウイリアム・ブレイク「アダムを裁く神」1795
ブレイク「善の天使と悪の天使」1795-1805
ジェイコブ・モーア「大洪水」1787
ジョン・マーティン「ポンペイとヘルクラネウムの崩壊」1822
かってジョン・マーティンに帰属「パンデモニウムへ入る堕天使(失楽園第1巻)」1841
展示室1は、順路に従って進むと、ターナーの光の表現から観覧するように設定されています。時代が少し前のブレイクやモーアは、ターナーの光を見てから目に入るように並んでいました。「光」をテーマとするテート美術館展なので、光を表す技法にすぐれ、後世に影響を与えたターナーから見て回りなさい、というキュレーターの並べ方。
ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー「湖に沈む夕日」1840頃
ターナー「大洪水の夕べ」
ターナー「光と色彩 大洪水の翌朝 創世記を書くモーゼ」
ターナー「陽光の中に立つ天使」1846
ターナーが光の表現、陰影、遠近法などに心をくだき、アカデミーの学生にも教育していたことが、第4室の「ターナーの学生講義用の図解」が並んでいてよくわかりました。
ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー「講義のための図解監獄の内部65遠近法」
この図は、ターナーがロイヤルアカデミーの学生に遠近法を教えるために描いた監獄の内部。反射と屈折、異なる光源による光の状態を講義。
展示室2
ターナーと同時代に光の表現をめざしたジョン・コンスタブル。クロード・ロランの影響を受けつつ、風景画家として自立しました。当時宗教画や歴史画に比べて、風景画は一段と低い価値しか持たないとみられていたのに、コンスタブルは、風景画を描き続け、イギリスに風景画の時代をもたらしました。コンスタブルの風景画はメゾチント版画として「風景を見る」ということをイギリスに定着させていく画家のひとりになりました。
ジョン・コンスタブル「ハリッジ灯台」1820頃
ジョン・コンスタブル「ハムステッドヒースのブランチ・ヒルボンド、土手に腰掛ける少年」1825頃
ターナー以後、画家たちは「自然と光」の表現を研究していきます。
ジョン・リネル「風景(風車)1844-1845
ウィリアム・ホルマン・ハント「無垢なる幼児たちの勝利」1883-1884
ジャン・ヤング・ハンター「私の妻の庭」1899
ジョン・エヴァレント・ミレイ「冬に濡れたエニシダ」
印象派の登場で、光の表現はひとつのピークを迎えます。
クロード・モネ「エプト川のポプラ並木」1891
アルマン・ギヨマン「モレ=シュル=ロワン」1902
アルフレッド・シスレー「ビィの古い船着き場へ到る道」1880
シスレー「春の小さな草地」1880
カミーユ・ピサロ「水先案内人がいる桟橋、ル・アーブル、朝、霞がかかった曇天」1903
第3室
ウィルヘルム・ハマスホイ「室内」1899
さて、私にここちよいアート散歩は、ここまで。第4室以降の現代美術は「さてはて」と「わからん」の連続。報告は次回。
<つづく>