岡崎体育さいたまスーパーアリーナワンマンライブのラスト。アンコール終了後のファンサービス「トロッコで会場一周」(撮影OKでしたが、これは画像借り物)
20190618
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2019十九文屋日記夢音楽(2)岡崎体育さいたまSアリーナくちぱくワンマンライブに行ってきた
ひとりの若者が壮大な夢を描く。「30歳までにさいたまスーパーアリーナでワンマンライブをひらく」
奈良のスーパー万代でアルバイトをしている、海のものとも山のものともつかない、名もなくイケメンでもない、まだ何物でもない男。才能があるのかないのかもわからない。
スーパー万代の店長さんも、同僚パートさんたちも、「わかぞーの大言壮語的壮大な夢」に対して、軽く「うん、がんばってね」と言っていたことでしょう。店長は「芸能界めざすなら、まいうーの石塚英彦クラスは無理目として、ドランクドラゴン塚地武雄の次くらいをめざせばいいのに」とか思っていたかも。まあ、体形ビジュアルからの勝手な想像ですけれど。
でも、6月9日、その若者は、さいたまスーパーアリーナに18000人の観客を集めて、夢をかなえるワンマンライブを実現させたのです。岡崎体育、29歳11ヶ月と23日。7月3日に30歳になります。
お祝いの花がずらりと並ぶ中に、「奈良のスーパーからさいたまのスーパーへ」という文字がありました。スーパー万代からのお祝いらしい。
お祝いの花輪(JinroのCM曲を担当したときのジンロを持っている姿)
関係者、関係各社からの花がずらり
岡崎体育といっても、私の世代の人なら、彼がソロ・ミュージシャンであることを知らないほうが多い。
では、NHK朝ドラ『まんぷく』に出た俳優としては?それでも知らない人も多いと思います。
『まんぷく』の主人公萬平(モデルは日清食品創業者安藤百福)が、進駐軍に誤解を受け逮捕されたとき、雑居房を見張る日系人のMP兵士チャーリー・タナカを演じたのが岡崎体育です。ドラマ初出演とは思えない堂々の演技力を見せました。
チャーリー・タナカは、日系GHQ軍人。日系人が戦時中にアメリカでひどい仕打ちを受けたことは戦後知られるようになりました。日系人の若者は、アメリカ人として認めてもらうために軍に志願したのです。
雑居房の逮捕者たちに「日本人は大嫌いだ」と言い、萬平らにつらく当たる。日系2世の悲哀もにじませ「アメリカ人になりたくても認めてもらえない、父祖の地である日本に同化したくても同化できない」という苦しさをかかえつつ、自分の中の日本人DNAを意識していく。
しかもその太めの体形からコメディリリーフとして画面に写される、という難しい役どころを表現できていて、演出家からは「チャーリー・タナカの繊細な心情を表現してくださった」とベタ誉めになりました。
朝ドラ、脇役出演ながら強烈な存在感を見せ、私が体育を見たのも、このドラマが最初。
その後トーク番組に出て歌を披露したりしていたので、彼が歌手であることも認識していましたが、会場にいるファンの中で、いちばん体育熱薄かった客だったことでしょう。
MCで、体育は「北海道から来た人」「沖縄からきた人」と、手を上げさせていました。全国そして海外からも客は集まっていました。私は「体育、別段好きやないけど、友達に引きずられてきた人」に手をあげました。娘に連れられてきたので。
娘は、2016年の「ミュージックビデオ」という歌で岡崎体育を知り、2016年10月の『ミュージックステーション』で音楽番組初出演以後、好きなアーティストのひとりになったのだそうです。
さいたまスーパーアリーナでのワンマンライブMCで、体育は、スーパーマーケットでアルバイトをしながら、最初のライブを行ったときの思い出を感慨深そうに語っていました。最初のライブのチケットは100枚売れて大喜び。でも、当日は台風で、ライブ開始時には78人、終了時に90人という客数だったそうです。それがついに、公言どおり「さいたまスーパーアリーナで公演」の夢をかなえたのです。
たまアリの満席の18000人は、体育の「夢を追い続けた7年間」を追体験しながら、夢をあきらめなかった若者に盛大な拍手を送っていました。
会場の18000人(私の席はS席24列めだったけど、それでもメインステージは遠かった)
席はS席8500円、A席(6500円)、ITAMA席(4500円)。
合わせると、「SAITAMA」。S席にはフリフリライト(ShakeFlashlight)のおみやげつき。
春庭は、たまアリやその他の会場で、「フィギュアスケートの客はほとんどが女性、クラシックコンサートの客はほとんどが高齢者」という客層の中にいたものだから、こんなにも若者がいて、男女比率も半々くらいの大観客に圧倒されました。たぶん、私は、集まった一般客の中で、最高齢のほう。
岡崎体育は、2012年に同志社大学を卒業後、一度は一般企業へ就職しました。しかし、音楽への夢を諦められず退職。地元のスーパーマーケット「万代 宇治樋ノ尻店」でアルバイトをしながら、自主制作でのCDリリース、ライブやフェスへの出演を続けました。
アマチュアとして活動を続け、2014年にソニーミュージックの関係者の目にとまったことから、2016年にメジャーデビュー。その後は、快進撃。
2016年アルバム「MUSIC VIDEO」の楽曲「ミュージックビデオ」は、2017年『第20回文化庁メディア芸術祭』エンターテインメント部門新人賞を受賞。
2017年、テレビアニメ『ポケットモンスター サン&ムーン』のエンディング主題歌と、アニメ映画主題を担当。2018年10月から『ポケットモンスター サン&ムーン』のオープニング主題歌「キミの冒険」エンディング主題歌の「ジャリボーイ・ジャリガール」の両曲を担当。ポケモン人気のため、会場には小学生くらいの子どもも親といっしょに来ていました。
2019年1月、日野市立七生緑小学校合唱団とコラボレーションした楽曲「心のノート」を配信限定シングルとしてリリース。テレビアニメ「ポケットモンスター サン&ムーン」の新エンディング主題歌となる。(↓おまけ参照)
ポケモン関係者からの花
岡崎体育自身のアナウンスで「スマホケータイの電源はお切りください、、、」その他の注意事項が流れ、いよいよ開幕。
オープニングはスクリーンにうつった太めシルエットからはじまり、シルエットのTシャツに「BASIN TECNO」と、レザー光線が文字を刻みました。Basin tecnoとは、岡崎の音楽を表す「盆地テクノ」の英語訳なんだそうです。第1部はBasin tecnoの文字が入った青いTシャツ姿。
このワンマンライブの特長というのを、最初のつかみMCで披露して笑わせてくれました。
1)「会場中央にある特設の丸いセンターステージに行くまでの花道が、会場設営費用節減のために、平均台くらいの細さです」。
実際には30CM幅くらいあり、歩いていて落っこちることはないですが、センターステージにいくまで、平均台の上をおそるおそる通っていくような演出もありました。
2)「センターステージを飾っているのは、エノキ」。
遠目には白い造花にみえましたが、センターステージのアップがスクリーンに映されると、ほんとうにエノキ茸でした。
3)「会場警備にあたっていた警備員のひとりは、藤木直人」
呼ばれてステージ上にあがった人、本物の藤木直人でした。今期朝ドラでは広瀬すずの育ての父を演じていますが、ほんとうにカッコいいすてきな人。自身の音楽アルバムの宣伝をして引っ込みました。
(画像借り物)
センターステージでは「唯一の相棒」というペンギン「てっちゃん」(手袋みたいに手にはめてうごかす指人形)の口をパクパクさせるだけで、「てっちゃんのメジャーデビュー曲フェイクファー」というのを披露しました。センターステージは、この「てっちゃん」のためのみ使用。
途中2度の休憩が挟まりましたが、スクリーンに映像が流されたので、私も娘もトイレには立たずに映像を見ていました。
1部と2部の間は、岡崎が朝ごはんを食べているところの固定カメラ映像。ガールフレンドとしゃべくりながら、卵焼きなどを食べる。カノジョの夢「ハワイでウクレレ教室をひらき、日本からの観光客から法外なレッスン料をとる」を聞かされる。90分レッスンで14800円というレッスン料の看板として、岡崎体育という名前を貸してほしい、とガールフレンドにいわれ、煮え切らずに「レコード会社に相談してみるけど、、、、それより2部の出だしどうしよう」と相談して話をそらし、ガールフレンドのいうアイデア通りに登場することに決定。ここで6分間の休憩時間おわり。
で、第2部は、舞台の上から宙づりで登場。
バンドもいないし、ダンサーもいない。完全にひとりだけのワンマンライブ。舞台上には机の上のパソコン、歌うときのお立ち台。
岡崎は「バンドなら稼ぎはバンドの人数で割らなきゃならないが、ワンマンライブやから、かせぎはひとりじめ」と、いつものギャグで笑わせていました。
持ち歌の歌詞のひとつは「Friends」。手袋人形のてっちゃん相手に「バンドざまぁみろ、バンドざまぁみろ」と繰り返し、ぺんぎんてっちゃんがプロジェクト「岡崎体育」に参加したいというのも「いやいや、収入とか半分になっちゃう」と拒絶。
この先も岡崎体育はシンガーソングライターとして、ひとりでやっていくだろうと思います。所属の芸能事務所さえなく、ひとりでセルフプロデュースしているのです。
体育の持ち歌のひとつ「Explain」の「さいたまスーパーアリーナでくちパクで歌う」という歌詞。18000人の観客に「おっさんのカラオケを、金払って観に来てるんやで。みんなそうやで」と言っており、実際ほとんどは、口パク。
生声で歌ったのは、30CMの花道を通ってセンターに出てくるときと、キーボード弾き語りをしたときだけ、(と、私の耳には聞こえた。アンコールは生声だったかも)
しかし、観客は「くちパクじゃねえか」なんて、だれも思わない。もともと「歌はくちぱくするのが自分のパフォーマンス」と言っているからです。
くちパクでも、みな体育のパフォーマンスとMCを楽しみ、みなが「おめでとう」「やったね」「夢をかなえたね」と、あたたかい幸福感に包まれたライブでした。
アンコールが終わったあとの電飾トロッコで会場一周するときは「写真OKです。ネット拡散希望」と、体育さんが言っていましたので、写真UPします。
最後に「さいたまスーパーアリーナでワンマンショーした記念撮影をします」と、プロの写真家を呼び、撮影していました。「観客も写りますんで、不倫とかで来ている人は顔隠して」と笑わせていました。自分の容姿を歌の歌詞の中で「ビジュアル終わってるよ、コイツ」と歌っていますが、舞祭組を堂々看板にできる体育偉い!
プロ写真家が撮影した「さいたまスーパーアリーナワンマンショー記念撮影」(画像借り物)
アンコールで「Explain」をうたいました。歌詞の最後は。
♪お前ら覚えておけ。俺が岡崎体育だ
胸のBasinTechnohaは消えることはない
俺はまだ歌ってるんだよって言ったものの、まだ口パクだ
いつかはさいたまスーパーアリーナで口パクやってやるんだ 絶対
その「いつか」が実現したことを、18000人が祝っていました。
娘は、「2016年につらくて落ち込んでいたとき、体育のミュージックビデオっていう曲を聞いて笑って、つらさも半減できた。だから、さいたまアリーナでほんとうにワンマンショーやるって知って、ぜったいに見ようと思った。」と言います。
岡崎体育の本名岡亮聡「OkaAkitoshi」というロゴが入ったTシャツも買い、バッグやタオルなども開場前に買いました。終演後にペンギン人形「てっちゃん」が歌う「フェイクファー」のCDも買いました。直前に具合が悪くなって来られなくなったオトート君へのおみやげです。
私は、息子のチケットを無駄にしないために急遽参加した飛び入り観客。100人近くも出場するオーケストラ演奏会でも5000円以上は出さないのに、ワンマンショーで8500円もするチケット、無駄にしたくないからね。
私のおみやげは、会場でS席客に無料配布された「フリフリライト」
赤青緑黄白と色が変化するライト。観客は皆でライトを振って曲を盛り上げました。コンピューターで制御されており、歌に合わせて会場内は黄色になったり(体育のことば「菜の花みたいやなア」)青くなったら「海みたいや」、しましまになったりカラフルになったりの演出。この光の演出は、会場の一体感を盛り上げていたと思います。S席じゃない客が終演後語っていたのが耳に入りました。「楽しかったのは楽しかったけど、みんなでいっしょにライトふる席じゃなかったから、一体感がなかったのが残念」と言っていました。
最初の登場から観客は総立ち。私も、一部と二部の合間の映像シーンのほかはずっと立ちっぱなし。岡崎が「踊れー!」とあおると、みな一斉にジャンプして唱和ならぬ踊和する。私は膝いたくてジャンプできないから、体だけゆすって踊和。(ジャンプしたあと着地のとき膝にひびく。古希だもんなあ)
風邪を押してさいたまに来た娘は、咳がでないよう、MCのときや休憩のとき、のど飴をなめていました。おみやげのペンギンてっちゃんCDも買って、「疲れたけど楽しかった」と大満足でした。
楽しい思いを重ねれば、きっと夢かなうときが来ると、岡崎体育の夢かなった日に同じ時間を過ごせた幸せをかみしめて帰宅しました。
来月に30歳の岡崎体育。2ヶ月後には古希の観客春庭。
古希すぎたら、「立ちっぱなしコンサートに来ることもまずないだろ」と思いながら会場をあとにしました。
古希のばーさんは、入場時の「体育、別段好きやないけど、友達に引きずられてきた人」から「これからも岡崎体育を応援し見守りたい人」に変わりました。とりあえず、 youtubeにある岡崎体育の曲、ほとんど全部聞きました。
さいたま新都心駅に着いた時から、帰りに駅近くのビルで晩御飯たべたあとまで、ずっと雨。
古希の身に、2時間ずっと立ちっぱなしの若者向けライブは少々こたえましたが、翌月曜日から仕事を続ける元気をもらいました。
BASIN TECNOタオルを広げてみた
2013/12/14 に公開された2013年秋に岡崎体育が京都精華大学、奈良女子大学の学園祭に出演したときのドキュメンタリー作品(監督は岡崎体育の架空の友達、石毛俊輔。つまり、自分自身でのメイキング)。
<つづく>
(おまけ)
さいたまSアリーナワンマンライブでは登場しなかったので、youtubeできいてみました。
「心のノート」https://www.uta-net.com/movie/262599/
作詞・作曲:岡崎体育
合唱:東京都日野市立七生緑小学校合唱団(Nコン小学校の部史上初6年連続金賞受賞)
今朝の雨にぬれた畦道は陽の光浴びて
晴れ渡る青空に過ごした日々の面影
月は朝焼けに溶けて
時計はきょうを告げる
ぼくも もういかなきゃ 探し続けた未来へ
心の中にあるまっさらなノートへ
最初のページには夢を 最後のページには思い出を
君は旅の途中 今を生きる命
温かい声が聞こえる ぼくを呼ぶ声
街の明かりに揺れた若草は 月明かりをまとって
澄み渡る歌声に過ごした日々の面影
別々の道を歩む君の背中を見送る
ぼくももう行かなきゃ思い描いた未来へ
心の中にあるまっさらなノートを開くと
最初のページには夢が 最後のページには思い出が
君はペンを執る 今を書き残して
温かい声が聞こえる ぼくを呼ぶ声
脈打つ胸に たしかなともし火を
波打つ海に かすかな目印を
浮かべて 歩き出す 歩き出す
心の中にあるまっさらなノートひらいて
最初のページには夢を 最後のページには思い出を
君は旅の途中 今を生きる命
温かい声が聞こえる ぼくを呼ぶ声
「歌詞の引用は、文章全体の文字数の3分の1以下」という引用ルールはクリアしているけれど、JASRAC許可はない。
岡崎体育の曲作り、曲を提供する先を徹底リサーチして、歌手に合わせた歌詞を書くのだとか。
この「心のノート」、タイトルが文科省が配布する道徳教科書と同じなのが気色悪いけど、歌詞は上記通りのさわやか青少年系。
道徳教科書「心のノート」を授業で使う際は、前フリとしてこの曲を生徒に聞かせるように、と文科省が全国の学校に通達するんじゃないか、ってくらいの文科省的歌詞に作り上げています。
おそらく、体育のねらいは、この歌が小学校中学校の「あらたな卒業式ソング」として歌い継がれていくことなんじゃないかな、と古希は推察。「もういかなきゃ 探し続けた未来へ」とか「別々の道を歩む君の背中を見送る」とか、卒業っぽいフレーズがでてきます。校内合唱コンクールとかでも歌われそう。
岡崎体育の歌の毒も、心の叫びもさらりと捨てて、なんとまあ、Nコン的にまとまっているかと思うけれど、体育の狙いは、次のNコン合唱コンクール小学校の部か中学校の部の作詞作曲者になることだと思います。当たったら拍手。
そして、2019年末の紅白に初出場。
紅白で口パクを認めてこなかったNHKですが、パヒュームの口パクはOKになったのだから、紅白でも口パクで歌ったらいいんじゃないかな。ゴールデンボンバーのair演奏だってOKの世の中。ちなみにボーカル鬼龍院翔は、18000人の中のひとりとして体育のワンマンライブに感激したそうです。(私の座った席の後ろに招待者席があったので、そこにいたんだろ)
狙い通りに進んできて、7年で夢を実現した岡崎体育。才能豊かなシンガーソングライターだと思います。
おまけのおまけ
さいたまでは聞けなかったけど、私のお気に入りは、仕事柄「留学生」。英語歌詞が関西風日本語に聞こえる、岡崎体育の芸風のひとつ(日本語レシピを英語風に読む、などの芸)を生かして、笑えます。共演は、カナダ人兄弟と日本人二人のバンド(モンキーマジックMONKEY MAJIK)モンキーマジックは「まんぷく」でMP役を演じて体育と出会い共演して知り合いました。この、英語歌詞が空耳アワーのように日本語の意味に聞こえる。笑えます。
https://www.youtube.com/watch?v=lvEVP7NPklU
ただ、心配なことひとつ。この曲の岡崎体育の稼ぎは、5分の1になるんでないの?
もう5分の1でも十分に稼げるようになったってことなんでしょう。
岡崎体育様。5分の1でも十分な稼ぎになって、おめでとう。留学生の曲の最後にてっちゃんに「モンキーマジックに5分の4渡しても、痛くない。バンドざまぁみろ、バンドざまぁみろ」と言わせてみたらよかったのになあ。
<おまけおわり>