2013/01/23
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>十三里日記 1月(5)東京の大相撲
午後6時前にテレビを見ることがほとんどないし、今は特にひいきの関取もいないのでニュースのスポーツコーナーで大相撲の話題を取り上げていても、ああ両国の国技館で本場所やっているんだな、くらいの認識しか持っていませんでした。
大相撲を国技館に見にいったのも、もう数年前のことになります。仕事帰りに江戸東京博物館に寄ろうとして、となりの国技館を見たら大相撲をみたくなって、このときは「ひとり枡席」という枡席はじっこの三角コーナーみたいな席がとれたのでした。
22日火曜日も、やっぱり「ぐるっとパス」を利用して江戸東京博物館を見ようかと両国でおりました。そしたら、取り組みを終えた十両力士が付き人を従えて両国駅から部屋に帰るところに行きあいました。遠くからでも鬢付け油のよい香りがします。今、十両にどんな力士がいるのかもわからないので、おすうもうさんを見ても名前も顔もわからないのですが、急にすもうが見たくなりました。
大鵬死去のニュースで、子どもの頃、相撲に熱狂して見ていたことをなつかしく思い出したということもあったかも。私のヒーローは 大鵬ではなく、その一時代前の初代若乃花でしたけれど。
東京に住んでいることの利点のひとつは、急に思い立って絵が見たいとかコンサートに行きたいとなって、さっとそれができるところでしょう。大相撲も、ひところの大人気で次の場所の予約もいっぱいで席が取れないという時代から見ると、ふらりと思い立って国技館に寄っても、平日なら席は十分にとれます。
22日、窓口で「ひとり枡席あいてますか」と聞いたら、「ただいまの時間、1階枡席のバラ売りをやっておりますので、おひとり様でも枡席のご案内ができます」という。枡席は4人がけで、4人分いっしょに買わないとダメと思っていたので、「当日券枡席バラ売り」をやるというのは、よほど席が余っている状態なのかと思いました。
正面枡席の1階うしろから三番目というところでしたが、四人がけの枡席にひとりで座るという贅沢ができました。もう横綱土俵入りも終わって、中入り後の取り組みが始まっている時間でしたから、このあと入場する客はほとんどおらず、空いている枡席にひとりでもすわってくれたほうがいい、ということでしょう。
2階椅子席など、向こう正面はがらがらでした。
枡席に毎日来ているらしいおっさんが、「平日の入りとしては、今日が一番いい」と言っていました。
今、特にひいきの力士はいないし、顔を見てもしこ名がわからない人もいました。
正月場所の恒例なのだろうと思いますが、きれいにお化粧をした日本髪の芸者衆が連れ立って観戦していました。外国人観光客なら、本物の芸者を見ることができただけでも大喜びだろうと思います。
ひいきの力士にかける声が「ミヤビヤマ~」とか「キセノサト~」とか聞こえますが、結びの一番になっても「はくほ~」というかけ声よりも「ゴーエードー」という声のほうが多く、「はるまふじ~」よりも「バルト~」のほうが多かった。横綱に人気がないってのは、大相撲としてどうかと思うけれど、横綱はふたりともモンゴル人。
大鵬のように圧倒的な強さを持つ日本人力士って、もう無理なのかも。(大鵬のお父さんはウクライナ人だけれどね)大相撲協会としては日本人横綱を誕生させたいのだろうけれど。
昔のようにがちっと当たって四つに組、力の応酬という大相撲は一番だけだった。あとは、ぶつかってすぐに押し出しとかはたき込み。横綱戦もあっけない相撲で横綱が勝ちました。力をみなぎらせた大きな体がぶつかり合う、迫力を感じる相撲が少なかった。
特にハラハラもドキドキもせずに、淡々と取り組みを見ていました。4時すぎに枡席に入って6時の打ち出し太鼓が鳴るのを聞きながら帰りました。
う~ん、数年に一回、外国人観光客のように「誰が誰やらよくわからないけれど、これが日本の伝統的スポーツ文化なのか」という観点で見るなら、それはそれでよいのだけれど、2時間の時間をすごして枡席9,200~11,300円。ひいき力士に声からして呼びかけ、応援するというのでなければ、そんなに毎回みたいという気も起こらない。
同じ2時間を楽しむなら、私は映画のシルバー券1000円のほうがいい。そうね、みんなもそう思うから、当日券の枡席が買えたのだけれど。
だれかが一生懸命精進してスポーツの世界で一流になる。自分のヒーローをいっしょうけんめい応援する。そういう文化を好ましいと思うのですが、現在の大相撲に、「巨人大鵬卵焼き」ほどのヒーローがいないのだとしたら、寂しいことです。
がんばれ大相撲。ま、当分本場所を見ることもないだろうけれどね。
大相撲は、スポーツ観戦人口を増やしていくという努力をこれまで怠ってきました。全国の小中学校に元力士を派遣して、ちびっこ力士を養成するくらいのことをボランティアでやってくればよかったのに。武道が必修となって、柔道や剣道を取り入れる学校はあっても、相撲を体育授業に取り入れる所ってほとんどないんじゃないかしら。
私が子どもの頃のすもう人気は、野球と並んで圧倒的でした。ちょっとした広場に子ども達が集まれば、棒で丸い土俵を書き、たちまち相撲ごっこが始まり、だれでも寄り切りやら押し出しの醍醐味を味わって育ったのです。その子ども達が栃若時代柏鵬時代に相撲に熱狂した。若貴時代の相撲人気復活で、大相撲協会はまたまた何も努力しなくても客が入る時代を味わってしまい、その後の「観客をつなぎ止める努力」をしてきませんでした。
今の子ども達、相撲は「伝統文化」として眺めるだけ。さて、20年後30年後の相撲人気はどうなっていくのでしょうか。私が心配することもないのだけれど。そこそこチケット収入があるうちは協会は何もしようとしないでしょうけど、若い観客をほとんど見かけなかったので、ちょっと気になった。
友人「青い鳥」さん自作詩のカレンダー2013年1月から引用させていただきます。
「はっけよい のこった」
土俵の上の人生
のこった のこった
はっけよい のこった
闘う相手は
自分自身
のこった のこった
はっけよい のこった
弱気な自分に
大技かけて
押して 押して 押しまくれ
<おわり>