事故などで欠落した顔面の骨を代用できる「3Dプリンター」製の人工骨が、平成26年にも実用化されることが、わかった。
東京大学医学部付属病院などが開発した最先端技術で、3Dプリンター製の人工骨が実用化されれば、世界初の快挙。これまで、顔面の骨は患者本人の別の部位から移植する手法がほとんどだった。新技術で患者の負担を大幅に減らすことができ、医療技術の革新にもつながりそうだ。
東大病院の高戸毅教授(外科学)、鄭雄一(ていゆういち)教授(工学)らが再生医療ベンチャー「ネクスト21」(東京)と共同開発。厚生労働省や経済産業省の助成も受け、平成17年ごろから、20歳以上の男女約30人を対象に治験(臨床試験)を進めていた。
このほど、実用化のメドが立ったため、年内に厚労省に製造・販売を申請する方針。承認されれば来年にも発売される。ネクスト21が全国の病院から発注を受け、オーダーメードで作製する。
顔の骨は手足の骨などに比べ形状が複雑。患者本人の別の部位から移植する場合でも、欠落した顔の骨を正確に再現するには手作業で数時間かかる場合もある。新開発の人口骨は、欠落部分の骨のCT画像データを撮影し、その画像を3Dプリンターに取り込めば、数時間で作製できる。煩雑な手作業がなくなり、一度に大量生産できるメリットもある。
東大病院によると、事故の外傷、がん切除や発育不全などで、ほおやあごの骨が欠けて、骨の移植を希望する患者は国内で年間数千人規模に上ると推計される。一般的に、患者の肋骨(ろっこつ)や腰から移植するケースが多いが、移植元の骨が変形したり、神経がまひしたりといった危険性も指摘される。とくに子供の場合、移植可能な骨の量に限界がある。
また、手足の骨や背骨などの一部が欠けると、セラミック製の人工骨を埋め込む手術が増えているが、複雑形状の顔の骨は再現しにくいという。今回の人工骨は、実際の骨の成分と同じ「α型リン酸三カルシウム」を原料にしていることから、手術後2~3年で自然に自分の骨と同化する。
近年、3Dプリンターは医療分野での活用が進み、肝臓などの臓器モデルは手術の訓練に役立てられている。ただ、手足などの人工骨はセラミック製の方が安価で普及も進む。調査会社のシード・プランニングによると、24年の3Dプリンターの国内市場は93億円だったが、28年には155億円に成長する見通しで、安倍晋三政権の成長戦略でも投資支援対象に掲げられた。
高戸教授は、顔よりもさらに複雑な形をした耳などの軟骨についても3Dプリンターでの作製に挑戦中。「今後、日本医療の常識を抜本的に変える事例が増えていく」と意気込む。(板東和正)
東京大学医学部付属病院などが開発した最先端技術で、3Dプリンター製の人工骨が実用化されれば、世界初の快挙。これまで、顔面の骨は患者本人の別の部位から移植する手法がほとんどだった。新技術で患者の負担を大幅に減らすことができ、医療技術の革新にもつながりそうだ。
東大病院の高戸毅教授(外科学)、鄭雄一(ていゆういち)教授(工学)らが再生医療ベンチャー「ネクスト21」(東京)と共同開発。厚生労働省や経済産業省の助成も受け、平成17年ごろから、20歳以上の男女約30人を対象に治験(臨床試験)を進めていた。
このほど、実用化のメドが立ったため、年内に厚労省に製造・販売を申請する方針。承認されれば来年にも発売される。ネクスト21が全国の病院から発注を受け、オーダーメードで作製する。
顔の骨は手足の骨などに比べ形状が複雑。患者本人の別の部位から移植する場合でも、欠落した顔の骨を正確に再現するには手作業で数時間かかる場合もある。新開発の人口骨は、欠落部分の骨のCT画像データを撮影し、その画像を3Dプリンターに取り込めば、数時間で作製できる。煩雑な手作業がなくなり、一度に大量生産できるメリットもある。
東大病院によると、事故の外傷、がん切除や発育不全などで、ほおやあごの骨が欠けて、骨の移植を希望する患者は国内で年間数千人規模に上ると推計される。一般的に、患者の肋骨(ろっこつ)や腰から移植するケースが多いが、移植元の骨が変形したり、神経がまひしたりといった危険性も指摘される。とくに子供の場合、移植可能な骨の量に限界がある。
また、手足の骨や背骨などの一部が欠けると、セラミック製の人工骨を埋め込む手術が増えているが、複雑形状の顔の骨は再現しにくいという。今回の人工骨は、実際の骨の成分と同じ「α型リン酸三カルシウム」を原料にしていることから、手術後2~3年で自然に自分の骨と同化する。
近年、3Dプリンターは医療分野での活用が進み、肝臓などの臓器モデルは手術の訓練に役立てられている。ただ、手足などの人工骨はセラミック製の方が安価で普及も進む。調査会社のシード・プランニングによると、24年の3Dプリンターの国内市場は93億円だったが、28年には155億円に成長する見通しで、安倍晋三政権の成長戦略でも投資支援対象に掲げられた。
高戸教授は、顔よりもさらに複雑な形をした耳などの軟骨についても3Dプリンターでの作製に挑戦中。「今後、日本医療の常識を抜本的に変える事例が増えていく」と意気込む。(板東和正)